ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物と折り紙

2006-09-05 20:07:00 | 着物・古布

ちょっと重くて飛べないとんぼ、折り紙の奴ダコになってとんでみましたー。

先日「包み」のところで「折り紙」のお話を致しました。
折り紙と言うのは、日本独自の文化のようにいわれていますが、
ヨーロッパなどにもちゃんとあります。
また、今のように具象的なもの「ツル」とか「やっこさん」などが、
遊びとして折り始められるようになったのは江戸時代になってから。
元々「紙」という素材が使われるようになってからは、
当然それを「折って」使うということはあったわけですが、
そういうものはたとえば「お供えするもの」とか「添付するもの」など、
儀礼にかかわる折方が多かったわけです。
たとえば「鑑定書」のついているものを「折り紙つき」と言うのは、
用紙を折りたたんで、特定の書式でかかれたものを証明書として使ったためです。

日本の折り紙の特徴は、本当に「折る」だけ・・。
わずかに切り込みをいれるとか、一部切り取ることはありますが、
ほとんどの場合は、一枚の紙を折りたたみひろげ、
ひっくり返したり組み合わせたり・・・で、ものの形を作り出しています。
そういう意味では「近代折り紙」は、日本独自の文化と言えると思います。
まぁ折り紙の歴史についてはそんなところで、本題へ・・。
この折り紙、着物に通じるところがたくさんありますね。
つまり「できるだけ切らない」「折りたたむ」ということ。
そう考えてみると、たとえば着物を何かに作り直す、とか
着物から何かを作る・・という場合、折り紙のように考えればいいわけです。

着物というものを広げてよく見ると、とても大きいものです。
衿なんて、おはしょりしないとずいぶん下まであるんですね。
また衿をはずして布を伸ばすと、着物はVネックなのに、
衿のない着物は「スクエアネック」です。
「ここをこう折りたたんだら、ここをこう広げたら・・」と考えていくと、
さまざまなものができるんですね。
着物が「繰り回し」に向いている・・と言うのはそういうところがあるからです。

さっき「衿を取るとスクエアネック」と言いましたが、
それは「おくみ」がついているからです。
この「おくみ」と言うのは、元々「貫頭衣」を上からかぶるのではなく、
前を切って羽織るようにしたところ、前が重ならない、それでおくみをつけて
「打ち合わせられる」ようにしたわけです。
ではまず、着物を分解してみましょう。
まず「着物ってどんな形なのか」をよく知ることです。
羽織などは衿が半幅に切っていなければ、反幅で2メートル以上使えます。
図に描いていない「着物の衿」は、掛衿とあわせると半幅で2メートル半以上。





つまり、おくみを取ると着物は、前の重なりのない「突合せ」になります。
更に袖を取ると、ただのロングベスト・・ですね。
そのままおくみをとって、ちょっと手を加えてロングベストにしてみたら・・







こんな感じでしょうか。
着物の「切り込み」はたった一箇所「衿肩あき」です。
実はこれがあるばっかりに、2メートル半以上ある長方形を、
そのまま使えない・・のです。たとえばこの前の「かるさん」も、
この切り込みがなければ身頃分の前裾からずっと2枚分とれて、
残り布も大きく残すことができますが、切り込みのために、
そこから切り離して使わなければなりません。
ちょっともったいないですが、これは仕方ありませんね。
逆に、この切り込みを使えば、新たに切らなくても、
首周りなどの「余裕」として使えるわけです。

もうひとつ、着物・羽織・袴・・など、すでにもう作り方が決まっていて
かえられないもの・・というものがあります。
でもそれは要するに「礼装」とか「しきたりや礼儀を守るべきところ、場合」
そういったところで着るものです。普段着やプライベートなよそいきなら、
多少正式からはずれたって、私はちっともかまわないと思います。
いい例が昔からそうやって作られた「普段用和装コート」ですね。
本来、留袖や訪問着に着るのは「道行」、色無地や江戸小紋などは羽織も・・、
ですが、普段用なら形は自由です。ちょっと洋風の素材でも形でも・・。
つまり着物では、そういうところで「自由」が楽しめるというわけです。
反物は35センチ前後ありますから、そのまま肩に乗せると、
ちょっとフレンチスリーブの感じです。
ところで、前出の和装コートですが、ここでちょっと「洋裁」のことを・・。
私は洋裁が苦手で「カンタンソーイング」しかしない・・とお話しました。
実は「カンタンソーイング」というのは「和裁」に近づくことなんです。
つまり「直線裁ち」が多いんですね。それはどういうことかというと
「体に沿わなくなる」ということなんですね。
以前書きましたが「洋裁と言うのは、人間の体の曲線に合わせるように、
布の形を曲線で裁って縫い合わせる」です。和裁は全て直線で裁って縫うので、
着物の方をどこかたぐり寄せたり、たたんだりして体に合わせます。
直線裁ちのカンタンソーイングというのは、その両方のいいところを
あわせているわけで、衿ぐりとか股上とか、そういうところは曲線で、
袖付けや胴はまっすぐで・・とやっているわけですね。
和装コートの場合は、逆にちょっとだけ「洋裁」のポイントを使うといいんです。
一番使えるのは「肩のライン」です。
古い着物の本に出ている「コート」の型紙です。





つまり、着物を着ればすぐにわかることですが、
肩と袖が背縫いに対して直角ですね。これは、人間の肩のライン、
「少しさがっている」という形に合わないのです。
よっぽどのいかり肩ならべつですが?!
コートは上に着るもので、前もとじるものです。
羽織のように前が開かないので、動きづらいです。
できれば体の動きに添って少し動いてほしい・・、で、肩は斜めの方がいいわけ。
ここで大切なのは、肩が斜めになると、手を上に上げた場合、
「着物より更に、下がくっついてあがってくる」ということ。
これの解消には、脇の下のところに「もんぺ」式にマチを入れればいいのです。

それと、もうひとついいところ、反物はだいたい35センチくらいの幅ですね。
2枚並べると70センチ、まぁここから縫い代は取られますが・・。
これをナナメにとると、ちょっと長く取れるんですね。
三角形の一番長い辺・・ってことです。
裄が必要なヒトには、いいんですよ。

生地の厚さにもよりますが、またいずれ繰り回すつもりなら、
切ってしまわずたたんでおけばいいのです。
着物類に「肩の縫い合わせ」はありませんが、そのルールから開放されましょう。
コートは肩に縫い目があったっていいじゃないですか。

もうこれ以上リフォームしない・・という場合は、衿肩あきのところは
洋服のように「襟ぐり」としてカットしたほうが着易いし、
着物のカタチのままなら、繰越と同じように、
衿肩あきを少しうしろにずらしたほうが着易くなります。
何をどう作るかによって変えてください。

和服から和服、和服から洋服、どう繰り回しても、
長方形の集まりである着物はとてもリフォームしやすい素材です。
まずは幅7センチくらいの紙(反幅を35センチとして1/5サイズの見本)を
着物の布に見立てて、あれこれ折ったり広げたり挟み込んだりしてみると、
いろいろアイデアも浮かんできますよ。







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3 コメント

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Unknown (陽花)
2006-09-06 00:15:34
イラストのベストいいですね。

そういう発想ができるとんぼ様は

すんごい!と思います。

洋裁は苦手だけれど、いいなあと

思ってみていました。
返信する
そうそう! (萬屋千兵衛)
2006-09-06 06:26:44
私も、このイラストを見て、すぐ陣羽織を思いました。

以前にも、陣羽織をコート代わりに作ってみたいな!と思った事もあり、もっとも頭の中で考えただけで、、本当に陣羽織を作ったら、家族から又お変人呼ばわりされかねないので止めましたが(笑)

昔、戦国時代の武将の陣羽織などを本や博物館などで見ましても立派ですし、派手ですよね?

権力の象徴だったのか、ファッションリーダーのつもりなのか判りませんが、秀吉の全盛期には大茶会での金羽織など、度肝を抜くようなものも着てたようですものね?

話題が違った方向でゴメンね(笑)

陣羽織は、とんぼちゃんのイラストにあるように、詰め衿(立ち衿)ですよね?

返信する
Unknown (とんぼ)
2006-09-06 17:09:28
陽花 様

ここまでいかなかったんですが、

作ってみたことがあります。ただの上着・・。

冬場、部屋の中で来てました。

自分のつくったものが、実際に使えるって

なんかたいしたことないものでもうれしいものです。

カンタン洋裁なら、和裁できりゃOKですよぉ。



千兵衛様

陣羽織ムリでも茶羽織のそでなし、いかがですか、

っとシジムサくなりますけどねぇ。

陣羽織は「詰襟」が主流です。

場所柄「クビ」の保護でもあったんでしょうね。

じゃ次の御題は「陣羽織」で・・。

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