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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

羽織を着る・・ぱーと2

2006-11-04 18:53:08 | 着物・古布

写真は、今日いただいたもの!
大鷲(おおとり)神社の、今日は「酉の市」だったんですね。
今年は三の酉まであります。
熊手のストラップ、鈴もついてていい音します。
真ん中の「お福さん」なんか、私に似てるよーな・・おこがましー!
来年はこの熊手でガッポガッポとかきよせてぇ・・・何を?
いや福ですよ「ふく!」がんばらなくちゃ!
Sさまぁ~ありがとでしたぁ。


さて、昨日の「男物の羽織をそのまま着たら」の続き、
お話途中に書いた「もうひとつのX」のお話になります。

カンタンにいえば「着たときの状態」です。
元々、和服というものは作り方も着方も大筋きまっているわけですが、
個人に合わせての工夫・・と言うのは当然あるわけです。
たとえば一番単純なのは「サイズ」ですね。
そのほかにも、その人の着方のくせ、体型などによって変えたりなんてことも
「個人の工夫」としてあります。たとえば太めでオナカの出ているかたは、
襦袢にも「おくみ」のように少し布を足すと、とてもラクになります。
私は肌襦袢やうそつき襦袢の脇のスリットをかなり深めにしています。
でっぱったおなかのため・・はっはっは・・苦しいんだもん。
それと、私の肌襦袢は「花嫁さん用」です。
後ろの「くり」がとても大きいので、急いで着ても後ろの衿を抜いたところから、
肌襦袢の上がはみ出てる・・なんてことが、まーずありません。
着方の方では、先日も書きましたが私は「短クビ」で、どうにもカッコが悪いので
どうしても衿を多めに抜き、両肩を少し外にさげる着方をよくします。
これで羽織を着たばあい、当然羽織も後ろに引っ張られるわけで、
前の上がリがひとより多くなる・・と理屈ではそうですね。
羽織の繰越は着物よりほんの少し大きくはなっていますが、
そんなもんじゃたりない?・・ってわけじゃないんですが、
単純に考えればそういうことですよね。
だから私は長羽織が好きなんです。裾が下の方にあるので
前裾の上がりがあんまり「目立たない」んです。

で、いよいよ本題、男物の羽織をそのまま着たらどうなるか、
男物は女物のような繰越がありません。
もともと衿を抜いて着るものではありませんから。
それを衿を抜いて着ると、前はさらに上がり、
肩線はずっと後ろに下がり、袖はねじれます。
実はそういう問題をふくんでいるんですねぇ。
ですから、そのまま着るときは、着物の着方で工夫をして、たとえば
色柄も地味目でシャキッとハリのある着物で、衿も私としては控えめに抜く、
一番合うのは、やっぱかるぱんに・・・ですねぇ。そんな着方を心がけます。

ひとつの工夫として、袖に丸みをつけて元禄袖みたいにする、
というのがあります。内側からちゃちゃちゃと縫うだけですが。
袖口も少しつめたほうがいいですね。幅が広いようならマチをとればいいんです。
これで「羽織衿」のコート?ロング茶羽織?へっへっへ。
男物の羽織は振りがないので、たとえば「着物と襦袢の袖丈の長さ」が
あってなくても「外からは見えな~い」これまたへっへっへ。
ズボラ&いーかげんのとんぼには、とてもいいアラ隠しなんです。
それと、袖付けが全部閉じてるって、冬場あったかいです。
まだモンダイはあります。繰越もほとんどないものを
わずかとはいえ衿をぬきますから、胸の両側にたるみが持ち上がります。
両脇で収めておけばいいんですが、動くとこのでっぱりが目立ちます。
だから「かなり着こんで、やわやわになった大島」なんかがいいんですね。
まぁこんな風に、そのまま着るといろいろモンダイがあることは事実です。

ではここで、男物と女物、それぞれの「着物姿」についてお話してみましょう。
着物の肩線は洋服のような縫い目はありませんが、
「折りたたんだ線」はありますね。あれ、ちゃんと洋服のように
両肩の真上に乗りますか?衿を抜くとのっからないですね。
そのために腕を曲げたとき、その腕の真上に洋服のようにちゃんと
「折り線」はのらず、少しずれます。
つまり袖はどうしたってねじれるんですね。
これが実は着物独特の「美しい形」を作るわけです。
ただの四角い布なのに、表情というものがでるわけです。
もちろん、服に比べて袖にたくさんの布が使われているからでもあります。
てっとり早く、写真を見ましょう。





わかりますか?肩線が後ろにいっている分、そでの線は外にずれてます。
それで袖口が少し横に広がる、袂が流れる感じで表情がでるんですね。
そーかしら・・・では男性の写真を・・・。






肩に折り線がのっかって、そのまままっすぐですね。
その分シャープな印象です。袖口が横につぶれた感じも少ないです。
もちろん、素材などにもよりますが・・・。
別に、こんな表情をつけるために着物がこうなったわけではなく、
長い長い着物の歴史の中で、暮らしぶりや髪型などいろいろな要素の変化が
交じり合って、こういう形になりました。でも、その中でいつも同じだったのは
着物の原型と「いかに美しく、いかにステキに見せるか」・・という工夫でした。
女は「美」の追求に関しては、妥協しませんからねー。
男はかっこよく、女は美しく・・を目標にしてきたわけです。
その結果が、襟を抜いた女性のうなじの美しさや、
その着方による着物のしわのより具合さえ
「美しく、時に粋に色っぽく、またあるときは清純に、凛として」と、
「同じ形のもの」を着ながら、工夫されてきたわけです。
実は、着物における「袂」のさがり具合とか、袖口のひろがり具合とか、
背中の帯に入る辺りのギャザーのより具合とか、
やわらかものの下半身の布が、動きによってそのドレープ性で
足腰にまとわりつくような動きとか・・・そのひとつひとつが、
表情としてたいへん美しいもの・・・なのです。
下の写真、袖口が横に広がった具合、四角い袖がそのまま見えるより
きれいな形だと思いませんか?





浮世絵や日本画の女性を見ても、袖や裾はまっすぐではなく、
ギャザーがよったりまとわりついたり重なったり、流れがあって、
とても美しいですね。着物という長方形の布の集まりが、
凹凸のある体にまとわれることによって、たるんだりひっぱられたりして
陰影がつき、表情が生まれるわけです。

着物というものが、全部同じ形なのに、
着る人によってさまざまな表情を見せるのは、もちろん色柄・素材もですが、
その着方や体の動きにもよるわけです。
着物の立ち居振る舞い・・ということがよく言われます。
やたらウデをあげてひじまで見えるようなことはしない、とか、
女性は外股でバッサバッサと歩かない、とか、そういうことは基本なんですが、
そういうことをすると、袖のドレープのかかり具合とか、
着物の裾のまとわりつき具合とかが美しくなくなる、ということもあるわけです。
男性の場合、逆に「桃太郎侍」のように大股でダッダッと歩くと、
前裾がぱっとひろがって跳ねあがり、すぐにまたすっと収まる・・
絹物を着ると、この跳ねと戻りがスルンスルンと滑らかで、
これがまたいいんですね。時代劇を見ていると、着慣れた俳優さんは
実にかっこよく歩きます。歩き方が上手なのもありますが、
そのときの着物の「布の動き」がきれいなんです。
つまり、着物をきたらこうする・・ではなく、着物を着てこうすると
着物がこう動く・・というのも美しいことのひとつなんですね。
首から上と手、それを残して、あと全部を包み込む「着物」は、
それを着る人と一体になって、初めて「着物姿の美しさ」を
表現するものなのだ・・と私は思っています。




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7 コメント

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「着物は、肩で着る」♪ (ぶり)
2006-11-04 22:26:30
今日の記事、肩線の出具合、そうそうと思いました。
ケーブルTVに時代劇チャネルというのがあります。
昔の俳優さん達、男女ともに着こなし、動きがすっきりしていて、ついでに、髪型などのの時代考証も、しっかりしてる。
見ていて、参考になりますね♪
返信する
Unknown (陽花)
2006-11-04 23:03:36
写真で見ると本当に一目瞭然よくわかりますね。
同じ着物でも着る人のくせや、着こなし方で
随分印象って変わりますものね。
こういうところに目がいく、とんぼ様って流石はと
思います。

返信する
Unknown (とんぼ)
2006-11-05 17:56:23
ぶりねぇ様
時代考証のしっかりしたものを見ていると、
勉強になります。最近の俳優さんは、着慣れてなくて
見ててもちと不安・・・ですね。

陽花様
ほめていただいて、うれしいです。
着物って、ほんとに奥が深いと思います。
返信する
そうとも言えるが、しかし、 (ぶり)
2006-11-05 20:22:47
大概の人は、椅子とテーブル、ベッド、ドアノブが
ついている部屋で育っているので、着物を着慣れる
以前に、生活形態が違い過ぎますね。
最近の俳優さん達、住み込みで、1から習うなんて
こともなくなったし。。。
だからこそ、昔の映画を見て、私も勉強しているので
最近の俳優さんを云々しているつもりはないのですよ。(^^)
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Unknown (とんぼ)
2006-11-05 21:02:55
ぶりねぇ様
すみません、言い方が大雑把過ぎましたね。
時代劇だけってことじゃなくて、いろんな番組で
着物をきている人、つまりタレントさんとか、
場合によってはアナウンサーとかも含みますね、
そういう意味です。
きちんと着付けてもらってて出てきても…
っていうことです。自分゛だけわかってて
紛らわしい言い方をしてすみません。

返信する
長年のナゾが (ゆか)
2006-11-05 22:14:23
何で男の人の着姿(特に夏・・・麻素材が多いからでしょう)って、奴さんっぽいのかなあ、って思っていたのですが、納得!しました。

古着ばっかり着ていると、たまにお誂えを着たとき、
着付けがうまくなったような錯覚を起こします。動いた時にも妙な線が出ませんし。
寸法って大事だわ、と思う瞬間です。

古着だと裄重視なので、衣紋が抜けなくて困る着物って結構あります。無理に抜いても動いているうちに詰まってきちゃうんです。
平面の布を纏うって面白いな、と思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-11-05 22:30:15
ゆか様
なるほど「やっこさん」ですねぇ。
男の人の場合は、体を大きく見せるというか、
横に張った感じがいいということなのでしょうね。

裄重視で衣紋が抜けないときは、
私のあの「半衿を大きく出す着かた」をすると、
ちょっと裄が稼げるんですよ、
ほら芸者さんなんかは、大きく半衿を出して、
肩から落ちそうに着物着てるでしょう。
あれってつまり、衿つけのラインが、
外に行くわけだから、裄もずれる、
衿も抜けるってわけです。
もちろん、ああいう着かたは特殊ですが、
原理からいえばそういうことですよね。
ちなみに大正昭和初期なんかの着物は、
今より半衿を大きくだしてきていますから
古い着物の裄が短めの理由はそれもあると思います。
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