ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

あの着物をリフォーム…中

2010-02-16 18:39:55 | 着物・古布
この前アップしました、元の着物の写真です。


          

    
記事では「迷ったけど共八掛ではないから付け下げ」と書いたのですが、
柄は無くとも、同じ染料で無地を染めているとのことで「訪問着」だそうです。
解いてみればすぐわかったのですが、解かずに持っていきましたのでわかりませんでした。

で、この訪問着を「羽織にしたいと」…呉服屋さんに持ち込みました。
とりあえず柄合わせの相談で、この状態で持ってこられたのがこちら。
袖が無くてすみません。


            



さすがプロの和裁師さんで、切ってしまってからでは直せないから、と
解いた状態でこんな感じに、と仮縫いしてくれました。

ずるずるの写真で「何じゃこりゃ」ですが、前の部分は、こんな感じです。
真ん中の縫い目は背縫いですね。衿にうまく柄が出てくれています。


   



なんでこんなことを考えたかと言いますと…
実は、手元にある古い「繰り回し」の本にこういうページがありまして、これを見て以来、
「両褄柄」の留袖を見るたびに、これ、やってみたいなぁ…と思っていたのです。
印刷も古いのでわかりづらいですが、振袖の柄をうまく残して羽織にしてあります。


   


ただ、これには問題がいろいろありまして、
本にあるのは元々「花嫁振袖」の繰り回し(リフォーム)です。
今の手持ちの花嫁振袖は、切りたくないよぉ…のものばかり。
だからといって、それなら両褄の留袖は…というと、何枚もあるにはあるのですが、
こちらは元々裾の柄だけを目当てで買いましたので、身頃の黒い部分などに
ダメージが多いのです。それに黒い羽織だとちょっときついといいますか、
礼装にするつもりがないのに…になってしまいます。

もうひとつの問題は、背中の紋消しです。実際にはこれはずらすことで解決したのですが、
本の中では「一つ紋つき」として繰り回しているため、
一度消して描き換える…とあるわけで、それは今の時代、ちとたいへん。

そして最大の問題は、いずれにしても、アタマではいくら組み立てられても、
私は実際に自分で縫えない、ということです。
たとえば洋服にとか、バッグにとか、まぁちょいとひっかける上着にとか…、
そのへんならいつもの「なんじゃらほい洋裁」で、なんとかしてしまうのですが…。
こりゃ相談しなきゃだめだわ、と、思ったのですが、
さらに問題は「こんなややこしいことができる人がいるだろか」だったわけです。

実際、今の和裁師さんのなかで私より若い方は、新しい反物を裁って何かを縫う、
という経験しかない人が多いので、作り直しができない人もいるのだそうです。
裄直しとか、丈直しのようなものはともかく、着物から羽織、とか
そういうものになると、一応「こうする」という基準はあっても、
いざ始めてみたら、傷みがあってここは使えない…
さてその分どこから持ってきて、どうつないでやりくりするか、それができないのだとか。
幸いその点は、いつもの呉服屋さんお抱えの和裁師さんで
年配の方が大丈夫、と言ってくださいましてやれやれということになりました。

話は前後いたしますが…
この繰り回しをぜひ「両褄」でやってみたいと思いつつ、何年もたちました。
そして、先日あの訪問着を見ていて、そーだこれで相談してみよう…と思ったわけです。
そうなったときの問題が一つ、袖がヤケに短い…42センチしかありません。
こればっかりはどうしようもありませんでした。
触ると折込が4センチくらいありましたので、ギリギリまで伸ばして、と。
それでもこの羽織に合う袖丈の着物はないのです。
どれか一つ、袖丈を直して着ることになりますねぇ…。
でも、それくらいはやらなくちゃね、です。

着物と、ふる~~い本と、一式持って、呉服屋さんに行ったのが
あの成人式直後の「小紋振袖」の記事の日でした。
着物を解くと説明のときわからなくなってしまうので(私がです)、
解かずに持って行き、その場で端っこ解いて、付け下でないこともわかったわけです。
布力はあると思う…でもヤケはこの色だと素人ではわからない…というと、
若旦那さんが、その場で調べてくれました。
大丈夫、布力もまだある、和裁師さんも、これでわかる人がいる…よっしゃ!
というわけで、お願いしたのです。

紋をなくすのにも、上をずらすことになりましたが、
私は切って肩でついでくれてもいい、といいました。
でも着物には「肩でつぐ」というのはありません。そこだけはどうしても和裁士さんが、
胸で継がせてほしいといったそうで、お任せしました。
この本の「黒振袖」も、ちょうど羽織の「乳(ち)」よりも少し上でついでます。
黒だからめだたないのですが、呉服屋さんの言うには、色が薄くてもそのあたりの方が
着たとき目立たないから…と。プロの言うことに従いました。
また、こういう繰り回しをすると、裾の返しがありません。
そこでこれは本と同じように、同じ色で染めてある無地の八掛を
ここにつけて返しとすることになりました。

   
    



あんないい着物を…と思う方もいらっしゃるかもしれません。
色柄はまだまだ着られますし、ダメージもちょっと数箇所シミがあるだけ…。
でも、袖丈のヤケに短い、背中一つ紋の訪問着…手元においても、
おそらく私は着る機会がまず無いと思います。
羽織にして紋がなくなれば、これだったらおしゃれに小紋の上でも着られます。
それで「着る」ことを前提に、思い切ったわけです。

普段の小紋とか、紬などだと、たとえば何かに作り変えるのも、
わりと気楽にできますが、留袖とか振袖とか訪問着…となると、
はさみを入れるのはなんだかはばかられますよね。
どこも傷みやシミがなかったらなおのことです。
もちろん、もし誰かに着てもらえるなら、そのまま譲って着てもらうのが一番ですが、
それもなくて、ずっとたんすの中に眠らせておくのだとしたら…。
こんな思い切りも、時にはいいのではないかと思ったのです。
ハデになってしまいっぱなしの留袖が、チラリとアタマを掠めています。ははは。

さて、仕上がりはどんな風になるのでしょうか、楽しみに待っているところです。

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8 コメント

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Unknown (陽花)
2010-02-16 19:06:56
思い切って羽織にされるんですね。
手間も費用も掛かりますが、そうして
仕立てかえて着てもらえたら訪問着も
タンスの中にいるよりず~っと幸せですね。

仕立て上がってくるのが楽しみですね。
返信する
仕立て直し (とうこ)
2010-02-16 21:08:18
とんぼさんと呼ばせていただいて、
よろしいでしょうか?
こんばんわ。
私も頂き物の着物でしたが、
身丈が短くて、着物では着ないだろうと、
羽織に仕立て直しました。
普段着の羽織になりました。
袖幅もいっぱいいっぱいにしいて、
羽織丈もできるだけ長くして、
普段羽織に変身しました。
これが、和裁を習ってよかったと思った瞬間です。
それと、母が残してくれた昭和32年発行。
主婦の友社の和裁本に羽織に仕立て直すやり方が載っていました。ラッキー!

とんぼさんのは、物が良いので、
きっと素敵な羽織になるのでしょうね。
返信する
楽しみですね (猫柳)
2010-02-16 21:39:22
こんにちは。
すてきな訪問着、羽織にされるのですね。
秋の頃に、茶系の着物などと合わせたらとても素敵でしょうね。
私は袷→単衣とか、着物から着物、の作り変えしかまだしたことがありません。(ハギレから腰ヒモやバッグを作ったことはありましたが)
私も何か、古い着物から他のものへの作り変えをしてみたくなりました。
返信する
これは素敵な! (りら)
2010-02-17 11:42:22
時々、アロハシャツになっている留袖を見かけて、あれはあれで痛みが多ければ良い活用方法だとは思いますが、羽織!素敵ですねぇ。
雑誌に載っている花嫁振袖の色の素晴らしいこと~!!って・・・もう私にはパーティーでくらいしか着られませんけれども。

こうやって生き返らせるお手本を具体的に見せていただけるのは、本当に有り難いです。

お手持ちの花嫁振袖、もう公開済かもしれませんが、また少しずつ拝見させてくださいませ~。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-02-17 21:07:35
陽花様
思い切って、試してみました。
こんなやっかいなことなので、
仕立て代も割り増しになるかどうか
聞いてみたんですが、変わりないといってくれました。
できあがったらアップします。
返信する
こんばんは (とんぼ)
2010-02-17 21:10:19
とうこ様
どうぞ「とんぼ」とお呼びください。

ご自分で和裁ができるなんて、
ほんとにうらやましいです。
着物はいろいろ作りかえられますから、
何回も楽しめますね。

これは古着で買ったものですので、
お安かったんです。
だから思いきっても、あるんですが…。
変わった地模様だし、呉服屋さんも、
「今はこんなのないわねぇ」と言ってました。
たのしみです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-02-17 21:12:38
猫柳様
茶系だと落ち着いた組み合わせになりますね。
こういうものの繰り回しは、
パズルのようで、ごちゃごちゃになりますが、
決まるとすっきり?楽しいですね。
若いころの着物は、もう派手なので、
ナントカせねば…がいろいろあります。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-02-17 21:14:22
りら様
洋服に買えるのも「いいなぁ!」というのと
「ヤメテホシカッタ」というのとありますねぇ。

花嫁振袖、パーティー用にレンタルいたしますでぇ。
なんなら「朱色の総絞り振袖」も!ふふふ。
返信する

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