ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ちりめんを伸ばせるかな?

2009-03-31 18:22:20 | 着物・古布
昨日伸子張りしたちりめんです。渋いけどかわいいです。
別生地あわせて帯にしたらこんなかな?


  


あわせたのはこんな銘仙です。


   


こっちもかわいいですね。

      


さて、昨日は伸子張りのお話でした。
ちょうど「だるまや」さんで「湯のし」の記事が出ていましたので、
ご紹介させていただきましたが、プロの使う機械はやっぱりすごいですねー。

呉服屋さんで反物を買って仕立てると、必ず「湯のし」という言葉が出ます。
ちりめんのように、水を通すと縮んでしまうので湯のしする、
というだけではなくて、どんな反物でも仕立てる前のいわば下準備です。
家庭でも縫い物の前に地直しをしたりしますね。
あれの丁寧なものです。何もモンダイのない反物であってもやります。
また長く巻き取られていた反物には思わぬところに線がついていたり、
シワがよっていたりもしますし、置いてあった場所によっては
端がよれてしまったりいろいろです。そういうものの直しにもなるわけです。
幅も揃うし、縦方向にもひっぱりますからきちんと整いますし、
光沢や風合いもよくなります。

さて、ちりめん系、つまり「強撚糸」を使った生地は、
湿気水気でどうしても縮みます。昨日の追記に書きました過去記事の
「簡易湯のし」、あれはどうやらどこの家にもあったというものではなさそう。
伸子張りが全自動洗濯機なら、簡易湯のしは乾燥機つきドラム式?くらい?
つまり「ちょっと高級な家庭の道具」だったみたいです。
昔の家庭雑誌を見ると、伸子張りのあとのあの布端の波々のあとを消すには、
きれいに巻き取って霧吹きでしめらせておく、などと書かれています。
和裁は洋服と違って縫い代が大きいですから、すこしくらい波打っていても、
縫えないことはないし、中に入ってしまえば見えませんから、
よほどひどい波々でなければ、そのままでも縫ったんじゃないでしょうか。

さて、それでは伸子張りがないとちりめん系は家で洗えないかというと、
やってやれないことはありません。
生乾きかもう少し湿り気のある状態で、ゆっくりとアイロンをかけて、
幅だしをすることはできます。ただ、着物分だと10m以上ありますし、
同じ状態、同じ幅に整えてアイロンをかけるのは、けっこうタイヘンです。
同じちりめんでも錦紗系などは、元々がちりめんといってもほぼ平らですから、
比較的やりやすいのですが、シボが大きかったりすると、それがつぶれます。
昔は火鉢にやかんをかけて湯を沸かし、クチからでる蒸気に少しずつあてて、
平均に伸ばす…なんてのも、やっていたようです。図がでていました。
これは引っ張りますのでひとりではできません。
いずれにしても面倒なことですね。

昨日の伸子張りしたものですが、実はこれ、以前に洗ってアイロンかけたもの。
友人たちの誰かがやってくれたものですが、伸ばそうとすると
やたらと伸びてぶよぶよになるので、とりあえず少し伸ばした程度。
それを今回水洗いだけして伸子張りしたわけです。
わかりづらい写真ですみません。二枚重ねてあります。
矢印がアイロンものの幅、下が伸子張りしたものです、こんなに幅が違います。


   


アイロンの方は伸びていませんので、当然厚みもあり、手触りもかたいです。
そして、写真ではわかりにくいのですが、錦紗などは伸子張りしただけで
ツヤがでるんですよ。フシギですね。

さて、このアイロンの方、ちょっと下げてみますと…
伸ばしすぎた部分が膨らんでます。おまけに曲がってる…。



     

     
つまり、それだけ平均に伸ばすのが難しいということです。

また、伸子張りはいい、といっても、たとえば「絞りの布」などだと、
元々が絞りというのは縮んだところが柄になっているわけで、
これは引っ張るとのびやすいんですね。
ですから、伸子であまり強く引っ張ると、きれいにのびるのですが、
肝心のシボの凸凹感が減ったり、なくなったりしちゃうこともあるわけです。
裏に伸び止の布がとめつけてあるような状態ならいいのですが、
そのままだとみごとに平らになって、まるで「染疋田」…ありゃりゃ。

昔の婦人雑誌で、戦前位のものには「何でも自宅でやりましょう」式で、
前述のようにやかんの湯気で伸ばすとか、簡易湯のしを使うとか、
そういう工夫や知恵が書いてあるのですが、戦後の本になると、
「ちりめんものはプロにまかせましょう」が多くなります。
時代の移り変わりというものなのでしょう。

まぁなんともまとまりのない話になりましたが、
着物の古い新しいに限らず、まず「高価なもの」「いい状態でおきたいもの」は
全てプロに任せるのが一番です。お金を払うだけのことはしてくれるのですから。
そして、大切だけれど、自分でやってみようかな、というヒトは、
まず縮まない素材からやってみてください。
安い紬などは洗濯機で洗っても…とは思いますが、洋服だって、
お気に入りは手洗いするでしょう。優しく手洗いしてください。
紬ならアイロンでも大丈夫です。

伸子張りは、新しい道具を買うとお金がかかりますが(一式で6000円くらい)
やること自体はむずかしいことではありません。
なんたってちょっと前の女性たちはみんな家でこれをしていたんですから。
そこまではちょっと、と言う方はまず「解き」を自分でしましょう。
それだけでも3000円くらいは出さずにすみます。

着物は着れば着るだけ、触れば触るだけ、関われば関わるだけ、
自分にちかづいてくるもんなんです。
まず「楽しむ」感覚で…。















コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 伸子張りをしてみましょ | トップ | 花の化石って珍しいそうで。 »
最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
近づいてくる (茶ノ葉)
2009-03-31 21:30:45
>自分にちかづいてくる
というのは、まさにと感じます。
縁あって古着で手元に来たものでも、最初は古ぼけて繕い跡や穴なんかもあって、良いところ取りで小さく切るか・・・と思っていても、解いて洗ってアイロンをかけると、不思議と「ああ、もう一度仕立てて着ようかなあ」と思えてきます。外着は無理でも、寝巻きとか浴衣とかどうかしらって。
そうやって手を掛ければ掛けるだけ、可愛く思えてきますよね。
着物や和布の持つ力は、本当に不思議です。
返信する
やってみよ~! (うまこ)
2009-03-31 23:00:25
はい、やじうまうまこ。
何でもやってみたくてやってみたくて・・・
たくさん失敗しました。
もちろん、縮緬も他のものも洗って
引っ張って、アイロンかけて
波々ぐねぐねにしましたとも。
それに懲りて、伸子針も自作して・・・
でも、とんぼさんのお陰様で
その苦労からちょっと解放されました。
感謝感謝です。

自分でやってみると、プロのすごさが実感できますね。
(野菜作りでも実感してます・・・・)
返信する
Unknown (陽花)
2009-03-31 23:40:04
以前、汗じみで汚れた掛け衿を外して手洗い
して、アイロンを掛けましたが、色落ちに
びっくり、縮むのにもびっくりでした。
何でも道具と経験は必要なんですね~
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-04-01 02:59:20
茶ノ葉様
感覚的なもの、というのが多分にあるんですがやっぱりちかいところにあるものって
違うと思うんですよね。
輪布に見せられるのは、日本人のDNAとしか
説明できない気がします。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-04-01 03:00:40
うまこ様
私もほんとに数多くの失敗をしています。
母にアホかいなといわれたりしながら。
それでも、なんか嬉しいんですよね。
わかるとほんとにプロのすごさを感じます。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-04-01 03:02:29
陽花様
はじめてちぢんだちりめんを見たときは
えぇぇぇーって驚きました。
ほんとに道具と経験、ですねぇ。
母の実家には、もっといろいろ道具が
あったのですが、建替えのとき、
みんな捨てられてしまいました。
火のしなんかあったろうなぁとおもうと
残念です。
返信する
湯のし (おつう)
2009-04-01 12:35:05
いつも大変参考になります!
お聞きしたい事があったのですがよろしいでしょうか。

いまうちに幅だししていない絞りの浴衣反物がありまして。
湯のしだけお願いするような懇意なお店が無いもので・・・自宅でできないものかと思案中なんです。
反物幅に固定して、蒸気を当てればいい。というだけなら自作出来ないかな~~と思うのですけど。
その蒸気がどれくらいの温度で勢いなものか、判らないんですが・・・。

それともゆるく伸子で張っても同じことでしょうか?細めの伸子で。

昔の家庭ではどうされていたのでしょうか。
木綿ものなので、自宅で出来るのかな?と思ったんです・・・。
とんぼさんのご意見頂けませんか?
ややこしくてすみません~~
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-04-01 14:29:09
おつう様
ん~難しいですね。
正直なところ、絞りの浴衣の伸子張りについては、
聞いても「やめたほうがいい」としか
いわれないんですよ。
昔の人はやっていたと思うんですが…。
基本的にはおススメできません。
ひとつには浴衣の場合の最初の湯のしには、
幅だしのほか、色止めもあると思います。
完全にはとまりませんが、ある程度洗い流す
感じでしょうか。
確かおつう様のは鳴海だったと思うんですが。
それと、蒸気は要するにやかんの口から
シュンシュンでるのでいいわけですが、
あてて伸ばしても、手を離すと
戻ってしまいますから
熱が飛ぶまで持っててそれから次へと…。
10mもあるのですから、たいへんです。
ざっと水洗いした状態で伸子張りするのでしたら
色落ち色移りに十分きをつけてください。
ぐしゃっと置いとくだけで、わずかの時間に
移る場合もありますから。
それと、伸子で張るなら細めの方がいいですが、
絞りだと、結局たくさん伸子を張ることになりますから、
長い伸子だと結局伸びます。
長さの短い伸子のほうかいいと思います。
もうひとつ、ものすごくめんどくさい方法ですが、
安い裏地(キュプとか)胴裏の古いものなどで、
出したい幅で反物を裏打ちする方法です。
これは以前絞りのハギレのところで
写真を出したのですが、伸び止めに裏地を
縫いとめるわけです。両端と、中も少し。
これだと、胴裏なんかは、
それ以上広がりませんから
その幅に仕上がります。
いずれにしてもたいへんな手間と
時間がかかりますね。
長いままだと余計です。
ネットでも「持ち込み」で湯のしだけ
してくれるところもありますから、
お探しになって、
プロに任せたほうがいいかと思います。
もしおもいあたるところがなかったら、
私がお世話になっているところに、
きいてみますよ。遠慮なさらず言ってください。
返信する
教えてください (もも)
2009-04-01 20:42:39
お久しぶりです。
ちょっと冬眠していました。思考回路も行動回路もOFFのまま、目の前のことをこなすだけで精いっぱいでした。
さて、お客様からの質問です。
縮緬を洗う洗剤は、中性洗剤で良いですか?
しぼが詰まってしまって、団子になるといわれていましたが、
やはり、伸子張りを使うことですね?
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-04-02 09:42:26
もも様
おひさですー。お忙しそうですね。
お体気をつけてくださいよ!

ところで洗剤についてですが、
絹はやはり中性洗剤が合うと思いますが、
中性かどうかよりも、今はドライとか、
オシャレ用とかアレコレ書いてあります。
そこをよく読んでほしいですね。
元々、和服に関しては洋服のように、
ガラガラ洗ってなにもかもきれいさっぱり、
というのを目的にしないほうがいいんです。
それはプロに任せる…(着物の場合ですが)。
ハギレならシャンプー2,3滴でもいいと思う
というのが私の見解です。
お洗濯については、今年の2月7日の記事
読んで見てください。着物のことですが、
基本変わりませんので…。
色の濃い縮緬などは、洗剤多いだけで
どんどん色落ちしますよ。
乾かすのは、本日の記事どおりです。
大きいものは伸子がいいですが、
ハギレでそんなに大きくないものは、
スチームアイロンの使い方しだいです。
高温が使えなくてもスチームを離してかけて、
熱が飛ぶまでひっぱっていること。
シボをつぶさないようにするには、
タオルを上に乗せてかければいいんです。
小さいはぎれでいろいろ試してみると
いいと思います。

返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事