ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

木綿着物の続き

2008-07-15 03:47:42 | 着物・古布
まずは昨日、すみませんでした。こちらの後記事のほう、
何もないのにきてくださった方がたくさんいらして…恐縮です。ごめんなさい。
こんどこそ、ほんとの続きです。

写真は白に赤い細かい絣のゆかたです。
織りのように見えますが、実は「染め」です。
嫁入りに持ってきたときは、もう少し厚みもあってシャキッとしてましたし、
パッと見ただけでは柄が細かいので「染め」とわかりません。
糊をきかせば、じゅばん着て着られました。
30年たって、何度も水を通り、みごとに薄くヨレンヨレンになりました。
着るとこんな感じ、


        


糊をつけてもすぐヨタります。こうなると、ゆかたとしてしか着られません。
そういうこともあるのです。

ゆかたからランクアップできるか…今日は色柄です。
これはほんとに難しいのですが、先日小紋風のものなら…と書きました。
実際にはゆかただって柄に上下はありませんから、
小紋っちゃー小紋なんですが、私は、もしこれが着物だったら、
という「感覚」のことで書いたのです。
これはもう、見て感じるよりありませんので、ちょっと手持ちを並べてみました。
全部反幅ギリギリで写しています。

まず一枚目
これは「綿紬」で、節糸があります。グレー地にひょうたん。

   


二枚目
紺地に小桜、平織りです。これははぎれをいただいたもの。
   


三枚目
グレーと明るい目の紺の片身替わり、波のような重なる葉のような柄。
これも平織りです。
   


四枚目
これは友人の娘さんに、二部式の浴衣を縫った残りをいただいたもの。
かわり織りだったので、ちょっと縫いにくかったです。
明るい黄色の濃淡にかわいい朝顔、花芯には銀がちょんちょんとあります。
紅梅風に細かい格子があります。
   


そして五枚目は再登場です。
濃紺地にクリームのカマ柄のまとい。厚手の平織りです。
   


みなさん、どれなら着物としてじゅばんを着て着られると思いますか。
色柄で決めるなら「ひょうたん、小桜」です。
三番目は柄としてはびみょーですね。
モダンな着物になりそうな気配はありますが、こういう大柄は、
仕立てると感じがガラリとかわりますから。
あとはいわゆる「ゆかたゆかた」した柄、なのですよね。
つまりゆかたを「じゅばんを着て着物として」着るには
「ゆかたの匂いはできるだけしないほうがいい」のです。
もし、まといの浴衣にじゅばんを着ても…どうみてもゆかたですねぇ。
つまり「ゆかたから抜け出せない」ってことです。

小桜は、実は着物としては着られません。写真ではわかりませんが、
薄くてペラペラ、目が粗めなのです。つまり根っからの「ゆかた用」なのです。
逆にですねぇ、朝顔、どう見てもゆかた柄ですが、
実は「紅梅もどき」なので、これ、うんと若い娘さん限定で「絹紅梅風」に、
着られると思います。このゆかた地、とてもしっかりしています。
残念ながらプリントですが、デザインや色使いなどから見て、
安くないなーと思って聞いてみましたら、たしか4万くらいだったかと。
つまり、たとえプリントでも糸や織りがいいんですね。

綿紅梅や綿絽などは、ゆかたの世界では「高級」に入ります。
だから「おでかけ着」への昇格も可能性が高いわけです。
「竺仙」のゆかたは、着物好きのアコガレですが、
やはり「ゆかた」でいてほしいものと「じゅばん着て着られるもの」と、
分かれます。奥州小紋シリーズなどは「綿紬」です。
こういうのは後は柄ですね。
昨日も書きましたが、「ゆかたは木綿着物と同じに着られるか」、
それはアナタの「眼と手」にかかっている、ということになります。

以前からなんどとなく書いておりますが、
着物は一時期着られなくなりました。着物についての知識やコツやワザが、
伝えられないまま途切れてしまいました。
だから、今の若い方は「知らない」がための、マチガイやふしぎなことを
いろいろなさるわけです。ただ、それはファッションだから、
という理由付けで、いともカンタンにひろまってしまう…。
「元」を知ってから冒険してほしいのです。

春先でしたか、外国で日本の漢字が書かれたTシャツが大人気、
というニュースをやってまして、店先にぶらさがったさまざまなTシャツを
映し出していました。「勇気」とか「神風」とか、いろいろありましたが、
マッチョな男性が「いいだろー!」と、見せた背中の文字は「台所」、でした。
彼らには漢字は「デザイン」なんですね。丸っこいとか四角っぽいとか…。
思わず笑いこけて、もし「尻軽」とか「便所」とか「馬鹿」とか、
そんな字がデザイン的にカッコよくみえちゃったらどうなるんだろ、と
余計な心配をしました。でも、これって漢字をしってるから思うことですよね。
私たちがエジプトの象形文字を見て「これかっこいい」っていったら
「死神」だったり、お墓の説明文だったり、っていう場合もあるわけです。
知らなきゃ間違えたって、それがカッコよく見えたって、
それは仕方ないことです。でも、日本のものは日本人なんだから、
きちんと知ってもらいたいと思います。
外国人が絶賛する浮世絵には「レースビラビラ半衿」はありません。
外国人にレースビラビラを「ソレハナンデスカ」と聞かれたときに、
それの違いを、そしてなぜ自分がその違いを楽しんでいるかを、
きちんと説明できたら、いいんですけどね。
私の言ってることは、そういうことなんです。

コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゆかた・木綿の着物 | トップ | 木綿着物のまたまた続き »
最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
浴衣はだいすき! (えみこ)
2008-07-15 05:02:43
おはようございます。自分はさいしょの着物は浴衣です。
失礼があっては大変と、ものすごく調べたのが
じゅばんでした。
亡くなった祖母がのこしてくれた浴衣に
半襟つきの手製の二部式襦袢がたとう紙に
入れられていて、色も抹茶で
はたして、これは浴衣か着物か
いまだになやんでいます。
ですから、とても参考になります。
さ!今年はどの柄でどう着こなしましょうか。
返信する
来年こそ綿着物に挑戦 (otyukun)
2008-07-15 11:46:50
連日の浴衣のお話、とても勉強になります。
着物姿で出かける機会が無いのですが、来年こそ綿の着物を作ろうかと考えています。
男物はお端折も要らないので,短くて済みそうです。
工房で染める事も思案に入れていますが、浴衣にならない柄でカッコイイ柄を考えねばなりません。
瓢箪は面白そうですが。
それより綿素材の生地が手に入るかどうかの方が難しい。
晒や風呂敷の生地なら手に入るのですが。
お話を聞いていると生地の選択が問題。
悩んでいるうちに延期になるのかも。
返信する
浴衣 (うんちく)
2008-07-15 14:07:51
浴衣をお天道様が真上にある時に着ることに心
理的抵抗感があります。これは、ご先祖様から
特に教えられた記憶も無く、本で読んだことも
ないと思います。何となくの感覚です。
とんぼさんが言われることは、これら「感覚」
として残っているものをある程度理論付けしよ
うとされていることだと思います。これはとて
も大切で、誰かがしなければいけないことでし
ょう。
大ベテランでも、浴衣と木綿の着物の違いにつ
いて述べよと言われてたちどころに、論理明快
に言える人はいないでしょう。プロでもそんじ
ょそこらのプロでは無理だと思いますね。
このへんのことを当節大流行のハウツー本みた
いないならずに、品格を持って説明することは
なかなか難しいでしょうが、とんぼさん!頑張
って!
忘れずに「綿ちりめん」のお話もして下さい。
返信する
Unknown (武者子)
2008-07-15 15:14:26
うんちく様のおっしゃっるように「感覚」を理論付けるって、実はすごくパワーのいる作業だと思います。
失礼ながら、さすがです。

私の「感覚」を恥を承知でお話してしまうと、やっぱりお天道様が真上にある時間帯に浴衣を着るのには抵抗があります、が、ある程度の午後ならば、暗い色目の浴衣を選んで着てしまう事もあります。
反対に白系の浴衣は明るいうちは避け、すっかり日が落ちた後に着たいと思います。

「コレってどう見ても浴衣よね」と思えるような生地、柄のものは(これも私の乏しい感覚で)着物で着ようとは思いませんが、高級浴衣を着物代わりにできるなら、やっぱり質のあまり高くない木綿や綿麻を浴衣代わりにしてもいいのでは? と思ってしまう私は、やっぱりまだよく解っていないのでしょうか。

要するに「浴衣に襦袢を着て単衣風に着てもおかしくない浴衣を選ぶセンスと着慣れた雰囲気」と「単衣を襦袢なしで浴衣風に着てもおかしくない単衣を選ぶセンスと着慣れた雰囲気」を兼ね備えていればいいのかしら???
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-07-16 12:10:03
えみこ様
きっとどちらにも着られるもの、
だったのでしょうね。
着物が譲られて残されて伝わってゆく、
ほんとに素敵だと思います。
大事に着てくださいね、


otyukun様
木綿着物のめんどうなところは
「伸び」と「しわ」です。
どこも傷んでないのに、ひざやお尻だけが
ボコッとでっぱって、そこから傷む…。
ぜひいい木綿をお選びください。
こちら木綿屋さん、私は片貝が結構好きです。
色柄のご参考に…。
「こだまさん」といいます。

http://someorikodamas.com/


うんちく様
きっと日本人の感覚というものだと思います。
いわれなくても、体が知ってる、
感覚が知ってる…ですかねぇ。
いやほんとに「ただのうるさいおばさん」で
古いんだよっていわれるだろうなぁと
思いながら書いてます。まちがってないと
思ってますから。
応援していただけるところ強いです。


武者子様
数こなして着ていらっしゃるかたが、
何をおっしゃいますやら。
わかって、そこから変えて楽しむ、
それを実践なさってるじゃありませんか。

私も昼間ゆかたを着るのは「家の中」です。
近くのコンビにまでが限度。
その感覚が、今の人は育てられてないのです。
ほんとにかわいそうな年代なんですよ。
私と私の親の年代の「放置プレイ?」の
責任ですわ…。


返信する
世界の潮流??? (maymayman)
2008-07-17 15:00:26
インナーがアウターに成るのは歴史が証明してる???
技術の発展と機能性の向上が、体に楽な方向に向かうのでしょうか・・・???
次に、群れを特定することから解放されて、他と違う事に意味を見る事は、ほぼ本能でしょうから、可能な限り多品種に分化していくことは、恐らく必然なのかも知れませんね・・・

「湯帷子」が「ミニゆかた」に成っていった事が、証明の一部です。500年程かかったけどね!
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-07-17 15:19:12
maymayman様
服飾文化における「表皮脱皮の法則」ですね。
平安の昔から、そうやって着物文化は
変化してきたわけです。
今はスピード時代ですが、もーちっと
時間かけてかえていかないと、ボロボロと
こぼれることか多くなるんじゃないかと。
でも、それもまた「法則」になるのかも
しれませんね。
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事