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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

やっとみつけた帯です。

2006-02-10 20:37:46 | 着物・古布

今ではなかなかみることのない「腹合わせ」と呼ばれる帯。
古着などではけっこうでることもあるのですが、
状態がよくてちゃんとしめられるという程度のものは、なかなかありません。
これは、状態がよくてまだ締められて、しかも色柄も好みの範疇・・という
難しい条件をクリアした(ダレの条件?)帯です。できればもう少し扇面が
小さいとよかったのですが、そこまではゼータクというもの・・これで上々。

腹合わせ帯というのは、違う色柄・素材の帯を芯を入れて、
毛抜き合わせに縫った帯のこと。当然裏表とも締められます。
「あわせ帯」「両面帯」などとも呼ばれていました。
「昼夜帯」という呼ばれ方をすることもありますが、
「昼夜」の場合は表が柄で、裏が濃い色の無地のもの。
大概は「黒繻子」が多いです。黒が使われている場合は「鯨帯」とも言われます。

実はこの「腹合わせ」「昼夜」「鯨」という呼び方も近年は、
なんだかごっちゃになっている感じです。
よく耳にするのは「昼夜」という呼び方なのですが、
単に色柄と素材が違うものもそう呼ばれているようです。
しかし「昼夜」というのは言葉通り「昼と夜」つまり「明暗」ということで
表と裏ではっきり色目が逆転しているような場合です。
つまり「表はちりめんの白地に赤の花柄、裏は羽二重の白に黄色の縞柄」
の場合は、昼夜というよりはやはり「腹合わせ」だと思います。

腹合わせ・・という言い方より「昼夜帯」の方が耳障りがいいといいますか、
元々「裏と表が違う」という意味だけをとって、そうよぶのかはわかりませんが、
私個人としては「昼夜」はやはり裏は黒繻子であってほしいですね。
もちろん実際には黒に限りませんが・・。
以前どこで読んだのか・・どうしても思い出せないのですが(脳のシワがまた
一本減った!)「黒繻子でも模様が入ってなければ昼夜とは違う」
というようなことが書いてありました。個人的には疑問です。
理由としては、まずひとつに、この「腹合わせ」「昼夜」「鯨」などの帯が、
重宝がられてネコも杓子もの人気だったのは、江戸時代の中期ごろから
「名古屋帯」という画期的な帯が発明され、それに席捲されるまでです。
黒繻子の帯で柄がないと・・というのはたぶん「ただの黒だと
喪服の帯としてしか使えないから」という感覚ではないかと思うのです。
つまり帯としてはあまり利用価値がない、だから黒地でも柄があり
表で一本、裏で一本と使えるようでなければ「昼夜とはいえない」という
考え方ではないのかなーと。しかし、先日「喪服」のところでお話ししましたが
明治天皇崩御のときまで、日本の喪服は「白」でした。
つまり「真っ黒」で柄のない帯も「無地の帯」としてちゃんと通用した、
ということです。たとえば時代劇に出で来る「腰元」さん、たいがいは
大きな紫か紺と白の矢絣柄の着物に黒繻子の帯を締めてます。
まぁそんなことから、裏がただの真っ黒でも普通に締められたと思うのです。
もうひとつは、元々「腹合わせ」「昼夜」というのは、モノを大切にする、
いわばリフォームから始まったことではないかとそう思うのです。
江戸時代の人は、そういうことをするのは当たり前のことでしたから。
帯というのは汚れるところが大体決まっています。
表は汚れてしまったけれど、裏はまだきれい・・それなら別の帯の裏と合わせて
一本にしよう・・と考えてもちっとも不思議はないと思います。
だから、最初から「腹合わせ」という帯ができたのではなく、
そうやっているうちに「違うものを取り合わせるよさ」が、
新しい帯の作り方として実用的になっていった・・ということではないのかなと。
これは、あくまで、私の考えですので・・。
実際大正期・昭和初期の「昼夜」には裏の黒繻子に「喪服」の帯を使っている・・
というのもあります。つまり「リサイクル」ですね。
そんなわけで、私の中では「昼夜」というのは「表は色柄つき」
裏は表より濃い色の無地、である・・あってほしい・・
誰か「そうだ」といって・・オネガイ・・という状況です。

私の持っている昼夜は、これで5本目、但し今までのはすべて「材料用」なので
表の柄が良くて仕入れています。裏はもうボロボロ・・、というのも、
実は「繻子」というのは傷みやすいのです。つまり織り方によるわけですが、
ツヤを出すために、表にわたる糸が長く出ている・・
ちょっとわかりにくいですね。えーと、「織り方」については、
織り方の三原則というのがありまして、これはまた別にお話ししようと
思っています。で、今日はカンタンに「刺繍」で考えましょう。
例えば3センチ角の正方形を色糸で刺繍して埋めようとします。
3センチの正方形の中を1ミリとか2ミリという細かい針目でちょっとずつ
刺繍して全部埋めた場合と、正方形の辺のところから向こうの辺まで、
一気に3センチ、糸を出してそれの繰り返しで埋めた場合を考えてください。
さて、この正方形の上を手でぎゅーっとこすったら、糸が伸びたり
よれたりして、刺繍した面が荒れてしまうのはどちらですか?
糸を長く出したほうですよね。織り方も同じで、繻子というのは
ツヤを出すために、表側にでる糸が長くなっているのです。
そのため「摩擦」に弱いのですね。糸がむき出しになっている分、
糸自体の弱りも早いです。そのため、繻子織りというのは、
反対側の帯地がまだまだ使える状態であっても、布力がなくて
カンタンにさけてしまう・・なんてことが多いのです。
5本目にして、やっと締められる帯をみつけたわけですが、
ちっとハデですわ・・。まぁ地味メの紬に締めましょう。
こんな時裏が黒だと、ハデでも裏の黒がちょっと見えることで抑えになります。
全通ですから、本式の帯締めを使わない「角だし」でもやってみますか。

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2 コメント

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リバーシブルの帯、 (ぶりねぇ)
2006-02-11 09:50:09
便利です。 タンスの肥やしになっていた洋服地で、帯を作る際、裏表使える袋帯にしました。



たぶん、ご存知と思いますが、腹合わせ帯とか、昼夜帯、明治末・大正・昭和はじめの着物など、原宿の「壱の蔵」さんが、豊富に扱っています。http://ichinokura.info/index.html
返信する
いいですよねぇ・・ (とんぼ)
2006-02-11 11:14:29
ぶりねぇ様



「壱の藏」さま、「灯り屋」さま、「呂芸」さまなどは、古着・古布を扱う身としては「聖地」みたいなもの??で、毎日入り浸りしてみたい!でもなかなかいかれる状況にないのです。HPで販売してくださるお店もあるのですけれどねぇ。それでとんぼは年に2回ほど、子供をショートステイであずかってもらって「古着探しの旅」に出るのです!一反風呂敷持って??
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