ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

被り物 続き

2006-02-13 18:14:54 | 着物・古布
写真は言わずもがなの「花嫁さん」、昭和27年の本の中の写真です。
黒い振袖、掻取りはナシ、当時はこういう衣装が多かったのでしょうね。
見ていただきたいのは「角かくし」、女は角があるものだから「隠して」
お嫁入りするんだ・・なんていわれたことを思い出しました。
「角がある」って何よぉそれ・・牙だってあるわよ・・って違うでしょ。
とりあえず「角かくし」については、後ほど書きます。
先ずは昨日の「頭巾」の続を少々・・。

「御高祖頭巾」については、昨日書きましたので、その他の頭巾について。
「宗十郎頭巾」は、鞍馬天狗のあの「イカ」みたいな形になる頭巾ですが、
これは「沢村宗十郎」が、芝居の中で被ったもの。
これが評判になって、一般の人も被ったわけです。
何回か書いておりますが、いつの時代も「ファッション・リーダー」は
「芸者・役者・花魁」、もしくはそういう職業に類する仕事の人達・・です。
特に江戸時代は戦もなく平穏であったため、遊興に眼を向け、
ファッションや暮らしを楽しむという余裕を持つことができましたので、
いろいろなものがはやったり廃れたりしたわけです。
宗十郎頭巾というのも、そういうもののひとつと言うわけですね。
役者の流行らせた帽子、昨日少し書きましたが「沢之丞帽子」は
「萩野沢之丞」「あやめ帽子」は「芳沢あやめ」「瀬川帽子」は「瀬川菊之丞」
と、いろいろ流行っております。
但し、この場合の帽子というものは、頭巾などのようにすっぽり被るものではなく
あのオデコにのっけた「四角い布」のことです。
これも以前髪型のところで書いたと思うのですが、
歌舞伎が始まり、最初は「阿国」のように「女性」が始め、
女性が禁止されて男性と美少年で続けていたら、今度は少年が禁止され
大人の男つまり「月代」を剃り落とした者ばかりという「野郎歌舞伎」になった、
そこでその「見苦しい月代」をせめて隠そうと乗せたのが紫ちりめんで、
これがかっこいいということになり、女形はみな工夫してこれをつけたわけです。
ちなみに「沢之丞帽子」というのは、左右の下隅におもりを入れて、
布の垂れ具合、おさまり具合をよくしたもののようです。

そのほか頭巾には、本当にいろいろなものがありますが、
言われてあ~あ、アレね、とわかりやすいのは「丸頭巾」、
別名「大黒頭巾」、あの大黒様が被っている、コックさんの帽子を上から
ぺたーっとつぶしたような形、今でも「還暦」などのお祝いに被りますね。
それから「角頭巾」、黄門様のかぶっているアレです。
すごい名前のがあります「帽子頭巾」、どっちだいっ・・と言いたくなりますが
これ「もうすずきん」と読みます。これが昨日ちょこっと書いた
「尼さん」の被り方です。もともと「秀吉のご正室ねね殿」が剃髪したあと
被ったものだそうです。

さて、やっと「角かくし」のお話しです。
下の写真は「浮世絵」ですが、別に「集団結婚式」ではありません。
りっぱなお籠から降りんとなさっておられるのは、どこぞの姫さまでしょう。
周りの女性は「お供」の腰元やら老女やら・・。全員被っとりますね。
帽子を留めるのに使われているのは「帽子針」といわれました。
おもしろいですね、外国の帽子も留めるのは「ハット・ピン」ですよね。



今の時代「あの白い角かくし」は花嫁さんのもの、と限定されています。
というより「花嫁さんはこれをつける」という感覚ですが、
実は江戸時代、外出する女性は「塵除け埃よけ」に、みなこれを被っていました。
つまりこれ、いまでいうところの「帽子」だったんですね。
今の結婚式でも「角かくし」ではなく「綿帽子」と呼ばれる
ほんとにスッポリ被るものを使う場合もあります。
ここらへんもちとややこしいのですが、
まず「綿帽子」というもののおおもとは「本当の綿の帽子」です。
これ、真綿のところでも書いたのですが(11月30日付け)
いわゆる「ちりよけ」の帽子。真綿というのは「木綿」のように
短繊維が集まったものではなく、元は蚕の繭ですから繊維が長いです。
それで、ケバケバしないわけです。真綿をズズーッと伸ばして広げ、
髪の前からずっと被ったわけですね。
これがやがて布で作られるようになり、外出時に使うようになったわけですが、
ここで「角かくし型」と「すっぽり袋型」に分かれたようです。
もともとなぜ「ちりよけ」が必要かといいますと、
今のように道路など「舗装」はされていませんから「土ぼこり」というものが
あって当たり前だったこと、髪を結うのに「鬢付け油」を使いましたから、
それでなくとも髪に埃がつきやすかったこと・・です。
それと寒いところでは「防寒」ということももちろんあったと思います。
で、「角かくし」型が多かったようなのですが、これが「揚帽子」とよばれ
後年の「角かくし」になりました。そして「すっぽり型」が
「綿帽子」という名前で、今もお嫁さんが使っているわけですが、
これは「嫁ぐまで顔を見せない」という意味があったようです。
晴れの日ですから、特別きれいに結った髪を、嫁ぎ先につくまで
少しでもきれいに保つということも、含まれたかもしれませんね。
実はこの「綿帽子」の方も、明治初期くらいまで普段使われているのですが
花嫁さんのように、全部すっぽりで顔が見えない・・という被り方ではなく
よく時代劇で長屋のおかみさんが、手ぬぐいを被ったカッコウしますね。
あんな感じです。思いっきり「顔」丸見え・・。角かくしのうしろにそのまま
袋をつけたような・・実際あんまりカッコのいいもんじゃありません。
埃をよけつつ、美しく結った髪を見せたい・・という女心で、
スッポリ型よりも「角かくし型」がはやったのかもしれませんね。

さてこれからお嫁に行かれるお年頃のかた、どちらになさいますか?
ちなみに私は「角かくし」だったのですが、
角も牙も、日々磨きをかけております???






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7 コメント

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作業終了後に・・ (とんぼ)
2006-02-15 17:29:52
さすらい様



命令には従順に・・家庭平和の基本です?!

お仕事終わられましたら、またゆっくりお越しくださいませ。
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Unknown (さすらい)
2006-02-15 14:47:01
姉様たちの粋なお話し 楽しく拝聴いたしました。



我家に居ります昔の娘様は 最近背が伸びたようでございますが どうもそれは角のようでございます。



洗濯物を 「取り込め」との命令が発令されましたので この辺で失礼致します。







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吾が背子が (Suzuka)
2006-02-15 07:35:27
きざむきゃべつのさながらに

   拍子木のごとおおらかとなり



ぶりねぇさま、はじめまして。



なるほど、いつも難しいご本をお読みと思っておりましたが、かげで支えてくださる御方がいらしたのですね。
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もんのすごく (とんぼ)
2006-02-15 01:46:31
ぶりねぇ様



すばらしい人だったんですねぇ。難題は全てクリアしていただいてる?いーなー。私はソージ苦手、料理はまぁそこそこ、洗濯は「たたむ」のが好き・・なんなんだーっ。



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すばらしい! (ぶりねぇ)
2006-02-14 23:04:29
Suzuka様。 そして、はじめまして~♪



結婚したくなかったので、掃除、洗濯、炊事、家事全般できる人とならOKと、かぐや姫の向こうを張って、難題を主張したつもりでしたが、現れちゃいました、夫が。 なので、角隠しも、綿帽子も被りませんでした。(^^;

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おぉっ! (とんぼ)
2006-02-14 13:10:41
suzuka様



いやー「わたぼーし・アジ」お聞きしたかったですなぁ!わたしゃネコは3日だけかぶってあげました。今でもたまーに「目的」あるときのみ、出してきてホコリをパッパッとハラって使っとります?だまされてくれるんだわ、これがまた・・あり?あっちの方が・・ウワテか・・?
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ほほほ・・・ (Suzuka)
2006-02-14 12:47:59
わたぼーしかぶってアジ演説やったのってあんまりいないでしょうね。(だんじょどーけん、かじぶんたん)

花婿側のテーブルからは、ひそひそと同情のささやきが・・・

親にはせめて式の間はねこかぶるものとあきれられました。
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