ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着方の次は色目??

2011-09-08 21:46:04 | 着物・古布

 

トップは使いまわし写真…タイトルは「最近の若い方には人気のない着物と着方」…ですかね。

 

コメントで「最近のジミ傾向」というお話がでまして、私、それも気になってるんだよねぇと。

今のことだけでなく、そもそも着物の流行ってさ…というようなことからお話すると、

えー、これまた長くなりそうです。少しずつ行きましょう。

 

今「流行」というものは、ほんとにあっというまに広がります。

それは当然「情報の速さ」というものがあるわけで、

今は今日東京で発表されたものは、同時に日本どころか、世界中にあっというまに届きます。

ネットでなくとも、たとえばテレビ・ラジオ、そして出版物もありますから、本当に流れるごとく広がります。

情報が早い…ということはどういうことかというと、実は「ゆっくり考えているまもなく飲み込まれることがある」です。

 

ちょっと江戸時代までタイムスリップしてみましょう。

江戸は徳川家康が天下をとって幕府を開いてから、初めて大きな都市になったところです。

それまでは田んぼに畑、野ッ原に雑木林…とんでもなくイナカだったわけです。

古くから「都」のある京都、貿易で海外と関わりのあった大阪は、それまでに培われたものが積み重なっていました。

江戸は、町ができてから新しい文化を積み重ねていったわけです。

そして、流通で言うならば、いつも「西」が先でした。

元々武家の社会になっても「帝」は、日本で一番上の人。

これは変わりませんでしたから、日本の中心は「京都」、今の東京駅と同じで「そこから上り」はありません。

将軍でさえ、京都に行くことは「上洛」、都へ上る(のぼ)るといいました。

つまりいろんなものが、西から大阪京都を経て江戸にやってきたわけです。

でも、ひとつ何かが流行りだしても、それが江戸まで来るには時間がかかるわけですね。

江戸後期、旅が盛んになったり、名物が読み本になったりしましたが、今の速さとはくらべものになりません。

こうして全てがゆっくりと伝わり広がりするということは、そこで「練り」が入るわけです。

京都ではいいかしれんが江戸向きじゃない…とかですね。

だから江戸は江戸特有の文化が生まれました。

また、元々武家が作った社会ですから武家文化が中心で「質実剛健」とか「質素倹約」とか…。

華美や豪奢は、庶民に許されませんでした。だから逆に「裏勝り」なんて文化が育ったのです。

 

「伊達比べ」というお話をご存知でしょうか。

江戸の豪商「石川六兵衛」の妻お勝が、やたらと贅沢を禁止する将軍綱吉に伊達比べ(衣装比べ)を挑んだ、

というお話です。上野寛永寺に参詣する綱吉の前で、金の簾、金屏風の前に豪奢な衣装で現れ、お茶を立てた…

そのあまりの贅沢振りに綱吉は怒り、夫婦は家財没収され、身は追放になったというお話です。

実はそのまえに伏線がありまして、この六兵衛の奥さんお勝さん、京都の難波屋という豪商の奥さんが

オシャレで有名だと言うので、伊達比べを仕掛ける…そのときの難波屋夫人は、朱の繻子地に洛中図を

金糸で縫い取りした豪奢な着物で現れ、お勝さんは「黒羽二重に白で南天の枝ぶりを染め抜いたもの」、

ぱっと見れば、赤に金の細かい縫い取りの柄の方が豪華で美しい…ところが、よくよく見ると、

お勝さんの着物に描かれた南天の、赤い実の部分は全て珊瑚の粒を縫い付けたものだった…。

これでお勝さんは、勝負に勝ったと言われています。

私、この話は西と東の衣装に関する感覚の違い、好みの違いを実にうまく言い表していると思うのです。

遠く離れていればこその「はやりもの」の違い。どこで生まれたものであろうと、それを取り入れて、

自分たちの土壌にあわせる…確かに江戸文化は都の文化に比べれば、まだ新しい、

積み重ねのうすいものではあったもしれませんが、やたらどこかの何かだけを尊んで、むやみに流されない…。

確かに江戸にも都モノが流行ったことだってありますが、それは「いいもの」だから、

そしてどんなものであれ、結局は「淘汰されて、残っていくもの」が歴史となっていく…のだと思うのです。

 

今のハヤリは、ほんとに味わう余裕もなく、どんどん変わっていきます。

それが自分に似合うとか、それは別にまねしなくてもいいことだとか、

そんなことを考える余裕もなく「こうだ」というものがあふれ、それをなぞることで安心し、いいものだと思いこむ。

そういう危険性をはらんでいます。自身の眼や力を養う時間がありません。

確かに、洋装については、いいのかもしれません。洋装には洋装の長い歴史の積み重ねがあり、

その一番上の積み重ね、が今はやっているものだからです。しばらく立てば落ち着き、自分でチョイスできる…。

でも、何度も言うように、着物はその積み重ねを見ていない人が多い時代です。

積み重ねられてきたものを見てくれば、洋装と同じような感覚では着物はよさを引き出せないものだとか、

着物の魅力は、洋装とは違うところにあるとか、そういうことがわかるのですが…。

 

私は別に洋装をけなしているわけではないのです。

洋装には洋装の魅力があります。でも、基本的に全く違うもので、全く違う歴史のものを、

融和させるには、それなりのテクニックがいります。

たとえば、コーヒーの粉を、お抹茶のようにシャカシャカとあわ立てて飲んだって、おいしくはありません。

でもおいしく入れたコーヒーを、九谷焼だとか、唐津焼だとか、日本古来の美しい焼き物のカップで飲めば、

眼も舌も、おいしいコーヒーを味わうことはできます。

ちょっと昔を振り返って、どうすると着物のよさが引き出せるか、それを理解して着るものや組み合わせ、

着方を選べば、「洋」の取り入れ方も、上手にできると思うのです。

昔の人は、うまく「洋」を取り入れて、ちゃんと自分たちのものにしてきた、

そういう実績の上に、今の着物があるわけですから。

 

なんだかとても抽象的なお話になりました。

具体的なことは、次回といたします。


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10 コメント

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Unknown (とんぼ)
2011-09-09 21:48:24
ミモザ様

私からみれば40歳でも「娘」ですよ。
まぁ代替で言うなら30半ば位…ということなのでしょうけれど、
着物の年齢って洋服と違うんですよ。
たとえ紺地でも派手なものもあります。そこが着物のおもしろいとこなんですね。
あんまり真っ赤では、ちと勇気がいりますが、たとえば着物で派手なものも、
羽織だと難なく着られるということもあります。
着物のフシギ…そんなことも含めて、書いてみたいと思っています。
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Unknown (とんぼ)
2011-09-09 21:45:14
古布遊び様

着物の基本、なんていうリクツっぽいことじゃなくて、
着物ってなんだってところから未経験だから、
あたらしいものを洋服感覚で選ぶのでしょうね。
売るほうも悪いのですよ。売るためなら伝統も無視ですから。
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Unknown (とんぼ)
2011-09-09 21:43:36
ガンガンガン速様

今記事をかいているところなんですが、洋服の感覚で選ぶと、
ちとはずれるんです。
着物の派手と言うのは、赤いからピンクだから、ではないんですよ。
私でも、着られるピンクありますし。
そのアタリが難しいところであり、たのしいところでもあるんですね。
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Unknown (とんぼ)
2011-09-09 21:41:52
陽花様

最近のかたは小紋といってもジミですね。
今しか着られない…は、年をとらないとわからないのかも。
私は嫌でも母に着せられましたけどね。
いろんな着物を着てみてほしいものだと思います。
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Unknown (とんぼ)
2011-09-09 21:38:38
惠様

親は娘には「赤」と、当然のようにいいますね。
自分が着られなかったから、というのもあったみたいですよ。
母の年代は戦争でしたからねぇ。

私も濃い色が多いのです。びんぼー性で、汚れめだたないし…って。
八掛や小物でやさしい雰囲気にはできますが、羽織を優しい色にするという手もありますよ。
色の細かいお話に到達するまでに、ちとかかりそうですが、
それでご参考になることがあればいいんですが…シンパイ。
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Unknown (ミモザ)
2011-09-09 13:02:08
「若い方」って30代くらいまででしょうか。
何をどう組み合わせても、母や祖母から
「あんたって地味好みよね」「まだ若いんだから、もっと派手にしたら?」と
言われる私は40代半ばです…。
そりゃあ祖母や母と比べたら、いつまででも「若い」です!
タンスに入ったままの花柄や朱色地の小紋を
今後どうやって着るか(着てみたい気はします)頭を悩ませています。
帯や半衿、羽織などで対応できるとよいのですが。
1歩間違えると「狂い咲いたおばさん」になりそうで怖いです。
返信する
Unknown (古布遊び)
2011-09-09 08:24:58
そうですよねえ~~
色目というのは気になっていました。

特に成人式に目にする晴れ着。
あの感覚はなんだろうととても違和感を覚えていたのですが。。。。
若い方にはその時にしか着れない物を着てほしいと思うのですが。。。
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Unknown (ガンガンガン速)
2011-09-09 06:26:04
こんにちわ
私は洋服も着物も黒系がいいなんて暗いですが、こういう明るい柄のもかわいいですね~。30代はどうなのかしら、色は控えたほうがいいのかしら、若い人の基準がよくわかりません。
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Unknown (陽花)
2011-09-09 00:01:00
トップの写真のコーデ、いいですねぇ。
地味好みもいいけれど、お若い方には
こういうのを着てほしいですね。

返信する
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2011-09-08 22:18:17
>黒羽二重に白で南天の枝ぶりを染め抜いたもの
良いですねぇ 珊瑚はいらないけれど

結婚前は 親にお任せ というより 
完全に親の好みで揃えた物ばかりで
「若い子は赤系」と決まっているのかと苛立つほど
呉服屋さんも親も「ローズ系か朱系のいずれにしても赤!」

自分で誂える様になってからは
洋服の好みと同じに 黒・濃茶・濃青ばかり。
年を重ねた今になって 優しい色も良いのでは?
と思う様になりました。
さて この先最小限のプラスでどの様に変化できるか
次回の日記が楽しみです

あれ 違う
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