アーム式を「上体の屈曲から肩の内転に繋げる投法」と新たに定義した。
この定義は加速様式という投球動作にとってより本質的な部分に根ざしている。テイクバックの仕方とか、左肩の開きとか、修正可能な特徴を捉えたものではない。
従来のものとは重なる部分が大きいが、範囲は異なる。テイクバックで手から先に引き上げても連続型は連続型、肘から引き上げてもアーム式はアーム式である。
しかし、これまで「アーム式」とされた投手以外にもかなり多くの投手をアーム式(太字で表す)に含めることになるだろう。
具体的に投手名を挙げることにする。
村山実(ビデオは名球会より)、尾崎行雄、小松辰雄、斉藤明夫、河野博文、小桧山雅仁、西山一宇
久保田智之、内海哲也、岩瀬仁紀 新垣渚
マーク・クルーン
松坂大輔、岡島秀樹
佐藤由規(仙台育英)
サンディー・コーファックス、ノーラン・ライアン、フェルナンド・バレンズエラ、ラモン・マルティネス、
ペドロ・マルティネス、ペドロ・アスタシオ(その他多くのドミニカ共和国出身投手)
マーク・プライアー、ティム・ハドソン、ロイ・ハラデイ
これまで村山実がアーム式と言われたことはないだろう。ライアンについても違和感があると思う。松坂と岡島を同じ投法だとするわけだが、見た目は歴然と違う。
新しい定義はかなりアーム式の幅を広げるげることになるのだが、広げることによって、アーム式の概念が投球論議にとって有意味なものになると考えている。
バイオメカニストはアメリカ型の推奨以外のことはやらないだろう。手塚一志らを筆頭にアメリカ型投法の考察は進んでいる。今更参入するつもりはない。アーム式に特化して考えを進めることにする。アーム式の解明が投球論における中心的テーマのひとつだと確信するからである。
「アーム式」は昔から、あまり好ましくないと言われてきた。しかしプロでも立派に通用する。上に掲げたように、少数派であることを考えれば「歩留まり」が良過ぎるぐらいである。
つまり、「本当に良くない投げ方なのか?」が未だにはっきりしないのである。アーム式のエントリーへのアクセスが多く、興味が持たれているのもそのためだろう。
これまで投球については経験がなく、打撃の素振りのように簡便なシミュレーションの手立てがないので、論文の紹介などに留めてきた。そろそろ姿勢を改めて、果敢に踏み込むことにしようと思う。