ＬＩＶＥ数週間前のＣＤＥＨ家のある１日の出来事・・・
ある金曜日、ＣＤＥＨは仕事を終え、酒の誘いも程々に足早に帰路に着いた。
家族の帰りを待ち伏せ、適当な所でさりげなく今度のＬＩＶＥに家族全員を誘う
腹積もりでいた。
誘いの台詞確認も中途半端に、エレベーターの扉がいつもより早く開いてしまう。
「シャワー何かで疲れが取れる訳もない」と空腹に苛立ち、アルコールが余計に
欲しくなる。
帰りの早い夫に妻が急遽用意した肴を小脇に、自分の陣地を早々に固める。
がしかし、肝心の晩酌用焼酎を取り忘れてしまう。落ち着かない様子だ。
重い腰を上げ、酒棚に手を差し伸べた。
瞬間、「ただいま！」いつもより勢い良く帰ってきた愛娘の声に、誘いの告白を焦
ると同時に違和感を感じ、晩酌用焼酎ではなく特別お祝い用バーボンを手にしてし
まう。
「おかえり、は、早いな。」急にロックが飲みたくなったCDEH。
「うん、今日はたまたま・・。お父ちゃんも珍しいね。」
「・・・」
「今度よー。一緒にバンドやってる若いのが結婚すんだよ。」
「へー、おめでと。で？あ、ちょっと待って着替えるね。」
意外に速攻を決めてしまい、まだ開いていないボトルに酔いマネもできない。
「でー、ライブやんだよ。披露ライブ。」
「へー、父ちゃんまた歌うの？ほんと好きだねー？」愛想の良い笑顔の娘。
「それでよ、もう父ちゃんも６０だ。ＬＩＶＥなんかやるの最後かもしんねー」
「でー、おまえらみんなにも見に来てほしいんだ。」
「ちゃんと練習してんの？声出るの？」微笑む娘。音楽の話になると古い友の
ような関係になる。
「父ちゃんの雄姿覚えておくんだぞ」・・スムーズに進む話の途中一瞬、口につけ
たグラスが止まる。一呼吸置き、娘が照れながらも恐る恐る切り出す。
「そのライブ・・彼氏連れてっても良いかな？」
急な切り出しに娘の帰宅時に感じた違和感はこれだったかと気付かされる。
「・・・お前と一緒にやってるバンドのヤツなのか？」
「うん、ギターやってんの」
「そりゃー・・・音楽の勉強にもなるしー・・・来ればいいじゃん」
「俺達はこんな音楽やってますって自信持ってるしなー」意味不明な言葉はきっと
酒と疲れのせいだろう。
「だからー、連れてくればいいじゃん、その友達！」彼氏と認めない。
「わかった、じゃー決まりね。父ちゃんも頑張ってよ！」笑顔で自分の部屋へと
逃げ帰る。
一部始終を知っていた母が呆れ半分の安堵の表情でキッチンへと振り返る。
思わぬ突然の娘の告白に動揺するも勧誘は成功に終わった。
また、音楽を通し、こういった形で親子の大事な時間を過ごせた至福感に
特別お祝い用バーボンの香りを一層深く楽しむＣＤＥＨであった。
～完～
尚、上記文はフィクションであり、実在する人物とは関係ありません。
付ですから・・・
です
にも負けずに・・
クレージーケンバンド
