すいーと雑記帳

とっこの独り言

「南三陸日記」(三浦英之)が文庫になりました

2019-03-12 16:14:49 | 日録・雑感など

3月12日 TUE  21℃

 (2012年3月 朝日新聞出版)

「南三陸日記」は、朝日新聞記者の三浦英之さんが、東日本大震災の直後に転勤を命じられた宮城県南三陸町に2011年春から2012年春までの1年間住み込んで、被災地の人たちと生活を共にする中で書いた記事をまとめた本です。

以前図書館で借りて読みました。「遺体はどれも一か所に寄せ集められたように折り重なっていた」「リボンを結んだ小さな頭が泥の中に顔をうずめている。細い木の枝を握りしめたままの30代の男性がいる。消防団員が教えてくれた。『津波は引くとき、川のようになって同じ場所を流れていく。そこに障害物があると、遺体がいくつも引っかかってしまう』」「遺体は魚の腹のように白く、濡れた布団のように膨れ上がっている。涙があふれて止まらない。隣で消防団員も号泣していた」「震災翌日から現地に入り、18日間取材を続けた。最初の数日はまともに記事が書けなかった。目の前の惨状に何がニュースかわからなくなり、気がつくと空ばかり見上げていた」(序章より)

新聞記事わずか35行(400字余り)、絞りに絞った簡潔な文章で、被災した人たちの思いや生活、記者自身の考えたことがつづられます。そして次のページは見開きいっぱいの迫力ある写真。1ページ1ページ引き込まれるように読み進むのだけれど、せつなくて涙が出て読めなくなって、それなのに写真の被災者の方々がなんともいい顔をしておられてまた涙がでてしまう。この繰り返しでした。一つ一つのごく短いエピソードの積み重ねで、こんなにも人の心を動かし、人間の暮らしって何だろう、一番大切なものは何だろう、家族って何だろう、幸福って何だろう?と考えさせられる、このことが驚異的でした。出色のルポだと思います。

この「南三陸日記」が文庫として出版されたと聞いたので、さっそく買い求めました。(集英社文庫 550円)

文庫版の表紙を書店で見た時、とても驚きました! 「あ、この子は!」

くりくりした大きな目の可愛い赤ちゃんが、つかまり立ちして離乳食をたべさせてもらっている写真が目に浮かびました。そう、やっぱり梨智(りさと)ちゃんでした。小学校入学式の前に三浦さんが撮った写真だということですが、「あ~、8年ってこういう時間なんだ!」とあらためて思いました。元気いっぱいの少女に育っていてほんとによかった!もうすぐ2年生だね。彼女が生まれる4か月前に津波で亡くなったお父さんも、きっとずっと見ておられるはず。

昨日は東日本大震災から8年目の3月11日でした。死者行方不明者、震災関連死あわせて2万人余りの方が犠牲になったと報じられています。その亡くなった方、今なお行方不明の方、おひとりおひとりにご家族があって生活があった、それを急に断ち切られた人たちの8年間はどんなに過ぎていったのだろう、そういう思いをあらたにしながら「南三陸日記」文庫を読み返しました。まだまだ「復興」には程遠い現実があります。沖縄の問題と同じで、全国の人々が考え続けなければならないことですね。自分に何ができるか?

文庫版には2018年秋に南三陸町を再訪した著者の、当時書こうとしても書けなかったある物語が書かれています。ぜひ多くの人に読んでいただきたい本です 。

 


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