快読日記

日々の読書記録

「悪の教典 下」貴志祐介

2010年11月23日 | 日本の小説
《11/21読了 文藝春秋 2010年刊 【日本の小説】 きし・ゆうすけ(1959~)》

確かにおもしろかった。
ページを繰る手を止めさせない作品だった。
でもなんか物足りない。

「学校」というまだまだ無防備な場所にサイコパス(蓮実)が紛れ込むことによって起こる惨劇―ってストーリーはいいとして、
まず作者が蓮実をかっこよく描こうとしてることに終始なじめなかった。
2羽の烏や「三文オペラ」を始めとする様々な小道具も、思わせぶりなだけだった。
いわゆる若者言葉もいまいちこなれてなくて違和感がある。
チェスタトンの言葉にいきなり乗っかる展開も唐突な気がするし、
結末も「は? 続編狙いか?」ってかんじだった。
同じモンスターでも蓮実じゃなくて「釣井教諭」が主人公の番外編だったら絶対読むんだけどな~。
(今思えば上巻があんなによかったのは明らかに釣井効果。)

…と、さんざん悪口言いましたが、
若い作家の作品をほとんど読まない(っていうかしんどくて読めない)わたしにとって、貴志祐介は貴重な人なので、ちょっと辛めの感想文になってしまいました。
言い訳か。
誰に対する?


とにかく。
もし、これが初めて読む貴志作品だったとしても、この物足りなさは残ったはず。
つまり、この作家の過去の傑作たちとの比較でハードルが上がっちゃったせいでがっかりしているわけでは決してないのであーる。(←嵐山光三郎)