快読日記

日々の読書記録

「テレビと宗教 オウム以後を問い直す」石井研士

2009年01月16日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《1/15読了 中公新書ラクレ(中央公論新社) 2008年刊 【テレビ 宗教】 いしい・けんじ(1954~)》

オウム真理教が起こした一連の事件から14年。
以来、なりを潜めていたオカルト番組が、近頃またちょこちょこ出て来てる気がしませんか。
それらは科学的なデコレーションが施されていたり、バラエティや感動ものの皮を被っていたり、スピリチュアルと看板を書き換えてあったり。
製作側はあの事件で一体何を学んだのでしょうか。
今、中学生の多くが、「人は死んだら生き返る」と本気で考えているそうです。

筆者は、放送倫理基本綱領(地下鉄サリン事件の翌年に制定)が形骸化している実状や、
テレビが占い師・霊能者等と称する人物を担ぎあげる一方で、仏教・キリスト教などの伝統宗教団体の社会貢献は一切放送しないなどの疑問点をいくつも挙げ、テレビが日本人に及ぼした悪影響を指摘します。

こういう声がもっと上がればいいと思います。

だけどこの本は少しもの足りない。
まず、テレビ番組に関するデータはそろっていますが、視聴者(とくに若年層が大事)に与えた影響についての分析がもっと欲しい。
次に、バラエティ化したオカルト番組が日本人から奪った"宗教文化" "精神文化"とはそもそも何か、それらがどれだけ重要なものか、もっと深く論じて欲しかったです。