快読日記

日々の読書記録

「思い出を切りぬくとき」萩尾望都

2008年11月28日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《11/23読了 あんず堂 1998年刊 【日本のエッセイ 漫画家】 はぎお・もと》


1976~1983年に各誌に発表されたエッセイをまとめたもの。

いわゆる24年組と呼ばれる漫画家の中でも、萩尾望都は別格というか、なんとなく手が届かない印象の作家でした。
「残酷な神が支配する」に震え、短編集「山へ行く」は毎晩飽きずに繰り返し読んでしまう。
だけど作品の全貌を正確につかもうとすると、自分があまりに無知で鈍いことを思い知らされるのです。むー。

ところがこのエッセイの萩尾望都は若い!
20代後半から30代にかけての水気の多い時代、
たっぷり悩んできらきらと感動して、そして自他への洞察は深い。
後半は、観劇記や、バシリニコフ、ピカソといった芸術家についての話題も多く、
「好奇心は、種を芽ぶかせる雨となる」(147p)を地で行く貪欲さもチャーミング。
彼女がずっと葛藤を抱えてきたお姉さんという存在に少しずつ折り合いをつけるエピソードでは、真に強いものは柔軟性を持つものなのだと痛感しました。

萩尾望都だって若いときがあったんだ!…ってあたりまえではありますが、そう思うだけでなんだか活力が湧く1冊です。