快読日記

日々の読書記録

「政商 昭和闇の支配者 二巻」大下英治

2008年09月01日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《8/31読了 だいわ文庫(大和書房 文庫書き下ろし) 2006年刊 【ノンフィクション 小佐野賢治 ロッキード事件 田中角栄】おおした・えいじ(1944~)》

山梨出身の某宗教学者が、
郷土の偉人に「黒駒の勝蔵」という侠客を挙げる山梨県民の珍しいメンタリティを指摘していまして、
この小佐野賢治もそんな風土が育んだある種の英雄かと思っていました。
でも、だいぶ違うんですね。
盟友・田中角栄との大きな違いを、"人を信用する角栄と、金だけを信じる小佐野"と本書が断言している通り、
小佐野の人間不信と拝金主義は徹底しています。
若い頃の彼がガンガンのし上がる様子は、「どてらい男」の黒バージョンみたいで楽しめましたが、
赤貧の幼少期、「勉強しろ」とうるさい父・伊作に「伊作のばか」と書いた紙を見せて、喜ぶ文盲の父親を嘲笑っていたエピソードは、小佐野賢治という人物の芯の部分を物語ってると思いました。
小佐野がもし、人を信じ、金銭以外で人とつながれる人だったら、もっと違う人生だったはずです。

それはそうとこの本、とにかく雑に書かれています。
表現は紋切り型、しかも繰り返しが目立ち、なんか適当なんですよ~。
どうせ小佐野賢治の評伝を読むなら、他の人が書いたものにしたらよかった~と何度も思いました。