日本の食料基地の一旦を占める十勝の農家では、後継者がいても嫁や婿に来る者が少なく跡継ぎがいないために離農し農家戸数が減少している。それが、最近の円安による飼料の高騰などから一層加速している。
また、農業の生産性を上げるためには化学肥料や農薬がたくさん使うようになっており、日本では有機栽培が農地全体の1%弱しかなく、地力が減っているのである。すなわち、農地の保水力が無くなり農薬を使い過ぎると植物は病気になりやすいのである。
こんな状況にあって、地元の帯広畜産大学で“十勝の土壌”を長く研究している教授がる。谷 昌幸教授である。彼は大阪市出身であるが、日本や世界のために持続的な食料を支えるために、土壌の力を引き出すための研究をしている。環境土壌学である。これまでの土壌学は、主に自然科学的な手法に則って食糧生産技術の向上を目指す方向に進んできた。
一方で高度化した社会は、農や土から距離を置くようになり、農業や土壌の持つ本質を見失いつつある。自然と人間がともに一体であるという視点でとらえ、人と環境との関わりを多角的な視点から探っている。持続可能な自然と社会の調和のため、人間は土から離れては生きていけない。
以下は、谷昌幸教授が現在取り組んでいる研究テーマである。
- 北海道の加工用バレイショ栽培における施肥技術と土壌改良に関する研究
- 窒素とマグネシウムの施肥がバレイショの収量と品質に及ぼす相互的な影響
- 土壌肥沃度と保水性の評価
- 混合堆肥複合肥料の施用によるリン酸減肥の可能性
- 土壌撹乱が土壌特性の空間変動と作物生産に及ぼす影響
- 家畜ふん尿を原料とする堆肥に関する研究など
土壌には未知なる機能がたくさん残っており、農作物の生産を行う上でこれまでに着目してこなかった成分、つまり窒素やリン酸といった肥料成分ではない“何か”が大切ではないかと、考えているらしい。
従兄も、隣町のスケート選手 高木美帆さんを生んだ幕別町で、2人のインドネシア人を雇用して酪農業を営んでいる。ふん尿の臭いが問題になっているので、ふん尿を有効利用する良い方法を開発してほしいと願っている。
また、“食たりて礼節を知る”ではないが、食が満たされてこそ人間は生きていけることができるので、ここで知人が詠んだ俳句を一句。
“いずかたも 地は荒らぶれど 休耕田”
日本の国土疲弊、食料自給率の低下を詠んだ俳句である。まさに、減反政策で休耕田が増えている日本の農業に関する俳句である。
(写真:本来の十勝の土壌)
「十勝の活性化を考える会」元会長
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