十勝の活性化を考える会

     
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アイヌ、和人、そして日本人

2021-07-14 05:00:00 | 投稿

 

アイヌ」とは、もともと「カムイ=神」に対する「人間」を意味する言葉であったが、17世紀から18世紀に異なる文化を持つ人々(大和民族・和人)との交易が盛んとなるに伴い、独自の文化を持つ自分たちの呼称として「アイヌ」という言葉を意識的に使用したと言われている。

 なお、大和民族とかアイヌ民族と言われるが、両者は生物学的な意味での「人種の違い」ではなく、文化人類学的な意味での「文化の違い」に過ぎず、人種的には両者ともモンゴロイドに属する日本人であることに変わりはない。

 日本の歴史を振り返ると、最後の氷河期が終わると新石器時代(縄文時代)が始まり、土器・定住を特徴とする狩猟採集生活の縄文文化の時代が約1万年続いた。この縄文文化を持った「縄文人」が、日本列島の各地に住むようになった。

その後、大陸から水田稲作文化を持った人々が北九州等に渡来し、4世紀までには「弥生文化」と呼ばれる新しい文化を、西日本各地に拡げていった。その過程で渡来系弥生人は、先住系の縄文人との混血を繰り返し日本人の原型が形成された。だが、弥生文化は東日本まで十分に浸透せず、弥生時代末でも東日本や西日本の一部では、縄文文化が色濃く残ったといわれる。

やがて、大和に初期大和政権が誕生すると、大和政権は、弥生文化を拒否する人々を “隼人”とか”蝦夷(エミシ)”と呼んで差別すると共に、それら地域に対して財政面の強化の必要等の理由から兵を派遣して、弥生文化の浸透を図った。その過程で隼人や一部のエミシは新しい文化を受入れ、大和政権の傘下に入り同化していった。ただ、狩猟採集文化を大切にした一部のエミシは北へ北へと逃れ、明治時代には蝦夷地に住むだけとなり、そうした人々が「アイヌ」とよばれたのである。

日本列島はユーラシア大陸の東端に位置するため、様々な人々が長い時間をかけてたどり着いて、この地で混血して多様な“日本人”が形成された。日本人は遺伝子的に大まかに言えば、先住系の縄文人と渡来系の弥生人の混血で形成されたが、地域により両者の混血度合には日本列島でも差があり、列島の南と北に縄文系の遺伝子がより色濃く残っている。

そのために私が住んでいた青森には、江戸時代までは下北アイヌや津軽アイヌがおり、秋田にはアキタアイヌ、ヌシロアイヌなどがおり、和人とアイヌが共生して住んでいたのである。「和人」という言葉は、江戸時代後期の幕府が、アイヌに対する大和民族の自称として用いていたという。

 全国各地にアイヌ語地名があるが、特に東北地方にアイヌ語地名が多いのは、アイヌが多く住んでいた証拠である。母方の祖父母は北東北の出身なので、当然、私にもアイヌの血が流れていることになる。

というよりも、司馬遼太郎氏は著書“街道をゆく(オホーツク街道)”を読むと、日本列島に住んでいたみんなが縄文人=蝦夷(エミシ)であり、そのDNAを持っているアイヌは、縄文人の文化を守り続けた人々の後裔であると書いていた。

すなわち、“日本人”の起源は縄文人にあり、その後裔にエミシ(アイヌ)がいるのであるが、このような事実が日本人にあまり知られていないことが、アイヌに対する差別の原因になっていると思っている。先日、“若きアイヌの魂”(鳩沢佐美夫遺稿集)を読んだ。それにもアイヌの差別が書かれていたので、その序文の一部を書こう。

『(前略)今日、すべてのアイヌの人たちは日本人として和人と全く変わらない生活をしており、風俗、習慣の違いは何処をさがしてもないのである。観光化による矛盾はある。しかし、なかには民族の伝統文化を正しく継承していこうと努力を続けている人たちもいる。この大自然からロマンチシズムがなくならない限り、アイヌ民族の生きた足跡は消えることがないのであろう。

鳩沢佐美夫の深い輝きに澄んだあのまなざしを思い出す時、私たちには今も彼の、人間と自然と祖先から伝えられた神々への愛、生きとし生けるものの生命を重んじた精神が見える。われわれが、この遺稿出版を企画したのも、ひとえに死を賭して差別と闘ったこの精神を一人でも多くの人たちに理解してもらいたい、と思ったからである。(後略)』

新聞によれば東京五輪で、世界に向けてアイヌ文化を発信するそうだが、2000年シドニー五輪の女子400メートルで優勝したのは、オーストラリアの先住民族“アボリジニ人”の女性であった。白人と人種差別されてきた先住民族とをつなぐ、国民統合の象徴としての優勝であった。現在、アポリジニ人はオーストラリア人口の約2,500万人に対して、約1%弱の35万人と見られている。一時は100万人ぐらい住んでいたとみられているが、人種差別により殺され減少した。東京五輪が予定どおり開催され、アイヌ民族が世界に認知されることになれば、これだけでも開催する意味があると思っている。 

「十勝の活性化を考える会」会員T

 


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