十勝の活性化を考える会

     
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アイヌ神謡集:梟の神が自ら歌った謡 「コンクワ」

2021-12-19 05:00:00 | 投稿

 

梟の神が自ら歌った謡
「コンクワ」

「コンクワ
昔私の物言う時は桜皮を巻いた弓の
弓把(きゅうは)の央を鳴り渡らす如くに
言ったのであったが,今は衰え年老いてしまった事よ.
けれども誰か雄弁で使者としての自信を持ってる者があったら,
天国へ五ッ半の談判を言いつけてやりたいものだ.」と
たがつきのシントコの蓋の上をたたきながら
私は言った,ところが入口で誰かが
「私をおいて誰が使者として雄弁で自信のあるものがあるでしょう・」というので
見ると鴉(からす)の若者であった.

私は家に入れて,それから,たがつきのシントコの蓋の上をたたきながら
鴉の若者を使者にたてる為その談判を云いきかせて三日たって
三つ目の談判を話しながら見ると
鴉の若者は炉縁の後で居眠りをしている,
それを見ると,癪にさわったので鴉の若者を
羽ぐるみ引っぱたいて殺してしまった.


それから又たがつきのシントコの蓋の上を
たたきながら
「誰か使者として自信のある者が
あれば天国へ五ツ半の談判を言いつけてやりたい.」と
言うと,誰かがまた入口へ
「誰が私をおいて,雄弁で天国へ使者に立つほどの者がありましょう.」
と言うので見ると山のかけすであった.
家へ入れてそれからまた,たがつきのシントコの蓋の上をたたきながら
五ツ半の談判を話して
四日たって,四つの用向を言っているうちに
山のかけすは炉縁の後で居眠りをしている.
私は腹が立って山のかけすを羽ぐるみひっぱたいて殺してしまった.


それからまた,たがつきのシントコの蓋の上を
たたきながら,
「誰か雄弁で使者として
自信のある者があれば,天国へ五ツ半の談判を持たせてやりたい.」
と言うと,誰かが慎深い態度ではいって来たので見ると
川ガラスの若者,美しい様子で
左の座に坐った.それで私は
たがつきのシントコの蓋の上をたたきながら五ツ半の用件を夜でも
昼でも言い続けた.見れば
川ガラスの若者,何も疲れた様子もなく
聞いていて昼と夜を数えて六日目に
私が言い終ると直ぐに天蓋から
出て天国へ行ってしまった.

その談判の大むねは,人間の世界に
饌饉があって人問たちは今にも
餓死しようとしている.どういう訳かと
見ると天国に
鹿を司る神様と魚を司る神様とが
相談をして鹿も出さず魚も出さぬことにしたからであったので,神様たちから
どんなに言われても知らぬ顔をしているので人間たちは猟に
山へ行っても鹿も無い,魚漁に
川へ行っても魚も無い.
私はそれを見て腹が立ったので鹿の神,魚の神へ使者をたてた
のである.

それから幾日もたって
空の方に微かな音がきこえていたが
誰かがはいって来た.見ると
川ガラスの若者,今は前よりも美しさを増し勇ましい気品をそなえて
返し談判を述べはじめた.
天国の鹿の神や魚の神が
今日まで鹿を出さず魚を出さなかった
理由は,人間たちが鹿を捕る時に
木で鹿の頭をたたき,皮を剥ぐと
鹿の頭をそのまま山の木原に
捨ておき,魚をとると
腐れ木で魚の頭をたたいて殺すので,
鹿どもは,裸で泣きながら
鹿の神の許へ帰り,魚どもは
腐れ木をくわえて魚の神の許へ帰る.
鹿の神,魚の神は怒って相談をし,
鹿を出さず魚を出さなかったのであった.
がこののち人間たちが鹿でも魚でも
ていねいに取扱うという事なら鹿も出す
魚も出すであろう,と鹿の神と魚の神が言った
という事を詳しく申し立てた.
私はそれを聞いてから川ガラスの若者に
讃辞を呈して,見ると本当に人間たちは鹿や魚を
粗末に取扱ったのであった.

それから,以後は,決してそんな事をしない様に
人間たちに,眠りの時,夢の中に教えてやったら,
人間たちも悪かったという事に気が付き,それからは
幣(ぬさ)の様に魚をとる道具を美しく作り
それで魚をとる.
鹿をとったときは,鹿の頭もきれいに飾って祭る,
それで魚たちは,よろこんで美しい御幣(ごへい)をくわえて
魚の神のもとに行き,鹿たちは
よろこんで新しく月代(さかやき)をして
鹿の神のもとに立ち帰る.
それを鹿の神や魚の神はよろこんで
沢山,魚を出し,沢山,鹿を出した.
人間たちは,今はもうなんの困る事も
ひもじい事もなく暮している,
私はそれを見て安心をした.


私は,もう年老い,衰え弱ったので,
天国へ行こうと思っていたのだけれども,
私が守護している人間の国に飢饉があって人間たちが餓死しようとしているのに
構わずに行く事が出来ないので,
これまで居たのだけれども,今はもう
なんの気がかりも無いから,最も強い者若い勇者を私のあとにおき
人間の世を守護させて,今天国へ行く所なのだ.

と,国の守護神なる翁神〔梟〕が物語って天国へ行きました.と.

ari Kotankor Kamui Kamui ekashi
isoitak orowa kanto orun oman ari.

 

§

カムイ=神=大自然の摂理としてその中で共に生きる。
人の糧となるものは全てカムイからの預かり物で、その命はカムイの元へ丁重に送り返さなければならない。そうすることで、自然との共存が図られてきた。
はるか昔からアイヌはそのことを知っていて、代々子孫に口伝えで継承してきた。
和人に支配され、生活を破壊されるまでは・・・・。

いま私たちは、災害の多発や、魚が獲れなくなってきていることを、気象変動とか地球温暖化とか偉い学者様にお伺いを立てて、いいかげんな説明で安心を得ようとしている。

さて、誰が鴉で、誰がカケスで、誰が川ガラスなのか。
もう一度立ち止まって考えるときかもしれない。

「十勝の活性化を考える会」会員 K

 

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