帯広出身者らが共同経営する飲食店「ぱんちょす わやだべや」が、東京で人気を集めている。その理由は、糖分が高い十勝産のものを中心に顧客に出しているからである。役員の一人に聞くと、今年中にもっと店舗を増やしていくそうで、その理由は「三方良し」で、従業員が一致団結して働いているからだという。
近江商人の経営理念である「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つを社員に徹底することが、企業が大きくなるための必要条件である。つまり売り手の都合だけで商いをするのではなく買い手が心から満足し、商いを通じて地域社会の発展にも貢献しているのである。
近江商人の経営理念を書いたが、これが中小企業にとっては大変難しい。なぜなら、これには人材投資を含めて、お金がかかるからである。この経済計算ができるか否かが、経営陣の器だと思っている。
中小企業経営に携わってきたものとして思うのであるが、企業が伸びるためには差別化戦略を行なうことである。そのひとつに “オンリーワン戦略”がある。
オンリーワン戦略というのは、「他社にない価値を提供し自社を選んでもらう」ための戦略である。自社の希少性を高め、自社にしかない強みを打ち出して、ニッチなマーケットで強い威力を発揮するというメリットで、自社だけの付加価値をつける戦略のことである。
中小企業の場合、経営資源が大企業に比べて少ないケースが多い。そのため比較的少ない投下資金で、高い付加価値をつけることのできるオンリーワン戦略が望ましく、中小企業にとって最も求められるブランド戦略である。これに口コミなどの力が加わると、さらに市場を拡大する。
帯広出身者らが東京という大都市で活躍し、十勝の名前がうわさや顧客の紹介などでどんどん市場が拡大していくのは、十勝人としてもうれしい限りである。
「十勝の活性化を考える会」元会長