十勝の活性化を考える会

     
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北海道十勝の深掘り 道東酪農試練の冬

2021-12-28 23:19:00 | 投稿

北海道十勝の深掘り 道東酪農試練の冬全国の読者の皆様に、「北海道十勝ってどんなところ?」の疑問に深掘りしてお伝えしてまいります。


『北海道新聞は以下のように報じました』

道東酪農試練の冬

需要減 生乳廃棄の恐れ/大規模化の借金が重荷

2021/12/27 北海道新聞 朝刊

 新型コロナウイルスの影響による乳製品の需要低迷に加え、年末年始に過去最大規模の生乳が廃棄される懸念が強まり、国内全体の4割超を生産する道東の酪農家の経営が厳しさを増している。酪農家の多くは国が環太平洋連携協定(TPP)対策として生産拡大を後押しする中で行った大型投資の資金返済への不安を抱えており、専門家は「規模拡大の借り入れ返済を猶予する仕組みを国が設けるなどの支援が必要」と訴える。

(佐竹直子、田中華蓮、鈴木宇星)


「行き詰まる」
 「大幅な生産拡大を前提に投資してきたのに、『搾るな』『借入金は返済を』では経営が行き詰まる」。釧路管内白糠町の酪農家4戸で共同経営する「M&S(エムアンドエス)」の渋谷博社長(62)はこう話す。4月に完成した約4千平方メートルの牛舎では、350頭の乳牛が自由に移動。床に散らばったエサを集めて給餌場所に戻すロボットも慌ただしく動き回る。
 同社は酪農家の担い手不足や高齢化を受け、搾乳口ボット6機などを導入し機械化に取り組んだ。総事業費は13億円。国がTPP対策で行う「畜産クラスター事業」で4割が補助されたが、残る6割の借り入れ分の返済は2022年度中に始まる。24年度までに430頭まで乳牛を増やし、借り入れを返済していく計画だったが、需要減に伴い、22年度の道内生乳生産の目標が従来の前年度比3%増から1%増に抑制される方針のため、同年度に予定していた60頭の購入は見送った。
 業界団体Jミルク(東京)は年末年始に、冬休み中の学校給食休止などによる需要減で、約5千トンの生乳が廃棄される恐れがあるとの推計を公表。大量廃棄はホクレンが06年に約900トンを処分したのが最後で、実行されれば最大規模だ。
 農林水産省などによると、20年の全国の生乳生産量743万トンのうち、道東(十勝、釧路、根室、オホーツク管内)は322万トンと4割超。大規模投資を行った酪農家が増えたため。
「数%の生産抑制でも経営への影響は大きい」(釧路管内鶴居村の釧路丹頂農協)という。
 飼料などの高騰も経営への痛手だ。鶴居村の酪農家7戸で設立した混合飼料製造施設「TMRセンター」では、中国での需要増を背景に原料の米国産トウモロコシなどが値上がりし月約100万円も負担が増加。軽油やガソリンなどの燃料も高値が続き、担当者は「生産量を増やせない以上、借金を重ねるしかない」と嘆く。
廃用牛で処分
 今まで廃用牛として出荷されていたのは、主に乳が出なくなったり、治療しても出づらくなったりした乳牛だったが、最近は治療をせずに出荷する動きが拡大。一部では十分に乳が出るにもかかわらず出荷する動きもある。ホクレン根室地区家畜市場(根室管内中標津町)では、12月には昨年同期を1割余り上回る690頭が廃用牛の競りにかけられた。酪農業の50代男性は「まだ乳が出るのに、肉用として出荷するのはつらい」と苦しい思いを明かす。
 今後も廃用牛の増加が予想され、1頭のせり値が例年より数万円も低下している。同町の計根別農協は今年11月から1頭当たり3万~4万円を農家に補填。士幌町農協(十勝管内士幌町)も今年秋から減産と乳質向上に取り組む酪農家に奨励金を支給している。
 大量廃棄の懸念を受け、各自治体や民間企業では牛乳消費拡大への支援が広がっている。北大大学院農学研究院の小林国之准教授は 「年末年始の廃棄を回避できたとしても、今後も生乳が余る恐れは消えない」と指摘し、「酪農業界が率先し、消費者からの協力を継続して得られるよう努力していくことも必要だ」と強調している。

 

 

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“司馬遼太郎の風景“の本

2021-12-28 05:00:00 | 投稿

先日、泰正純著“司馬遼太郎の風景”の本を読んだ。著者は、NHKプロジェクトのチーフディレクター。この本は、資本主義に酔いしれる日本を痛切に批判した司馬遼太郎氏のことを書いていた。その一節を書こう。

街道をゆく”の取材をはじめた1970年以来、司馬さんは常にテーマの中心に「土地」というものを据えてきた。司馬さんにとっての土地とは、人々に生を与え、暮らしを支えてくれるという、いわば万民に等しく、かけがえのない存在でなければならなかった。その土地を日本政府は、さも新商品を開発したかのごとく土地ブームをあおり、売買しはじめたのである。

ことここに及んで、司馬さんの日本を支える気持ちは風船のようにふくらみ、まさに万感の決意を持って席を立つといった激しさで、各方面に苦言を呈していくことになった。

「資本主義はあくまでも物を作ってそれを売ることによって利潤を得るものであり、企業の土地投機や土地操作によって利益を得るなどは、何主義でもない。が、その刺激が日本人の経済意識を大きな部分において変質させ、民族をあげて不動産屋になったかのような観を呈し、本来、生産、もしくは基本的には言えば社会的存立の基礎であり、さらに基本的にいえば人間の生存の基礎である土地が投機の対象にされるという奇現象がおこった。

大地についての不安は、結局は人間をして自分が属する社会に安んじて身を託してゆけないという基本的な不安につながり、私どもの精神の重要な部分を荒廃させた。まことに迷惑な話で、どうにも安んじてこの社会に住んでゆけないという居たたまれぬ気持ちが、私に土地のことを考えさせることになった。」

私の知る司馬さんは、常に政治とは距離を置き、まして、ときの政権に具申するなどいうことは避けていた。唐の李白や白居易が、王朝風刺の詩を歴史になぞらえたように司馬さんもまた過去の歴史に範を取り、今生きる社会の道しるべとしてきた。それは現代への優しい心づかいであり、そこに真剣に苦慮している人たちへの配慮をこめた温かいまなざしであった。ところが、こと土地に関してだけは違っていた。「歴史を顧みず、反省できない社会に未来はない」と、司馬さんはつくづく感じていたのだろう。(後略)

日本はいま、新型コロナや地球温暖化で右往左往している。少し高い代償になっているが、この経験を活かせばよいのである。過去の歴史を振り返ることによって見えてくるものがある。そのために、日本や世界に関する歴史の本を読みあさっている。中国、朝鮮、台湾、アフガジスタン、イラン、ヨーロッパなど、知らなかった世界も歴史も見えてきた。

コロナ対策の10万円給付金などで大騒ぎをしているが、目先にとらわれず100年後の日本や世界を考えることも大切だろう。日本で言えば人口減少が始まっており、国債累増の解消や一極集中、地方では過疎化で土地が収益を産まない時代に入ってきたのである。私は、100年後の日本という国を憂うるばかりである。 

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