ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

恐がり

2009-11-18 | 砂時計
寝ぼけ眼で、トイレに起きて、ぎょっとすることがある。
寝室と向かい合わせになっているミシン部屋にすっくと立つ黒い影。
そう、この夏我が家にやってきたトルソーである。
わかっちゃいるけど、寝ぼけた頭では咄嗟にそれがトルソーであると理解するにはちょい暇がかかってしまう。
「ひっ!」
となる私は、無類の恐がりなのである。
今は、作成中の黒っぽいジャケットがかけてあるから、なおのこと暗闇でみると、まるっきり人影である。

人が入ってくるはずのないマンション暮らしなのに、一人で家に居て、がちゃっと上下階の鍵音がするだけでドキッとしてしまう。
それくらい恐がり。
きっと狭い官舎で大きくなったからなんだろう、と思っていたら。

田舎の一軒家で大きくなった節子さんもそうだという。
子どものころ、家の外にあるくみ取り式のトイレや、薪で沸かすお風呂に行くのが嫌で嫌で仕方が無かったらしい。
結婚して何が嬉しかったって、家の中にあるトイレやお風呂が使えることだったという。
今は街中の一戸建てに、犬と住む節子さんだが、その犬が居なくなってしまったら、そして隣に住むお姑さんも居なくなってしまったら、一人では居れないかも知れない、という。
3ヶ月ほど前、孫ちゃんを犬の毛がついているであろう節子さんが一緒になって布団の上で遊ばせたことが、お嫁さん1号の逆鱗に触れ、家への出入りおよび節子さんの家への立ち入りを断られてしまった節子さんである。
息子さんからは、犬が居なくなるまで、お嫁さんが知らないところ以外では孫には会えない、と思って欲しいとまで言われてしまっている。
だが、ひとりで暮らす節子さんにとって、犬は家族であり用心棒なのだ。
今の犬が死んでしまって、孫に会えるとなっても果たして一人で暮らす勇気がわくかどうかはわからないらしい。
かといって、今更ワンルームマンションに移る気にもならず、難しい選択のようである。

そういえばサスペンスの巨匠ヒッチコック監督も、恐がりだったらしい。
自分の恐怖心がベースとなって、ドキドキハラハラさせる名作を何作も残した。

私の恐がりは何も生み出しはしない。

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