ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

海藤花

2005-08-31 | 砂時計
いつもの魚屋さんに立ち寄る。
夫の酒の肴を調達するためだ。
秋刀魚、鯵、たこ、などが並んでいる。
今週に入り、青魚が続いたので「剣先いか」を手にしてレジに並んだ。
お金を払おうと財布を取り出すと、料理人久田雅隆さん似の跡取り息子さんが
「すみません、タコの子、ずっと探しているんですが、なかなかなくって。」と申し訳なさそうに詫びてくれる。
そうそう、頼んでいたんだっけ。。

高校のころ、祖父の家に寄宿していた私に、祖母が毎日お弁当を作ってくれていた。
その昔、仕出し料理屋をしていた祖母なので料理はすこぶる上手い。
毎日、友だちがうらやむような綺麗なお弁当をこしらえてくれていた。
ある日、今まで見たこともないような粒粒した、ちょうど淡水パールの小粒が並んだようなものがお弁当に入っていた。口に含むと、ぷちぷちっとはじけて旨みがひろがった。
今まで食べたことのない食感と味だった。
帰宅してすぐに祖母に尋ねると
「ああ、あれはな、蛸の子やで。」と教えてくれた。
私がとても美味しかったと感想を言うと、
「そうやろ。でも、めったには手に入らんのやで。」と言ったことを今もよく覚えている。

高校を卒業し、祖父の家を離れると、そういった新鮮な魚介類を頻繁に口にすることはなくなり、蛸の子のこともすっかり忘れていた。
先日、旅番組で久々にその「蛸の子」が登場し、あの時の味が無性に食べたくなった。
そこで、行きつけの魚屋さんに頼んだというわけだ。
頼んだのが7月くらいだから、もう2ヶ月になるがなかなかないらしい。
食べられない、となると余計に食べたくなるから厄介だ。
飯蛸の飯の部分と似ていたような気もするが、もう少しぷちっと感が強かった気もする。
なにより、名前が綺麗。
「海藤花(かいとうげ)」
誰が名づけたかは知らないが、言いえて妙なりのうまいネーミングである。
こうして打っていると、ますます思いが募ってきた。
もう、お弁当のおかずになど詰めはしない。
淡麗辛口の冷酒でも用意して、口の中に藤の花を散らせたい。

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