ソーイングの波

「その昔、洋裁が女性のたしなみだった時代があった」
というような一文が載っていた。
たしかに。
私の母が女学生だった頃は、そうだった。
私が大学生だった頃にも、まだそんな名残は残っていて・・
お嬢様学校に通う友だちが、同じ大学の級友たちと、お屋敷街に住むマダムが教える洋裁教室に習いに行っていた。
彼女たちのなかでは、大学に通うことも、洋裁を習うことも、お茶やお花を習うのと同じ「良妻賢母」になるためのたしなみとされていた。

私の洋裁ブームの第一次の波は、その頃にやってきた。
それは、良妻賢母となるためのものでも、たしなみとするためのものでもなく、着たい服が近くで買えなかったから。
当時、流行っていたサーファールック。
流行の波に乗りたくても、私の住む街にはそんなファッションを置く店はなかった。
仕方がないから、自分で縫えそうなスカートや、ベストは縫っちゃえ！
ってことで適当にじょきじょき切って縫っていた。

その次の波は、出産前後にやってきた。
１９９０年頃のことである。
そのときにしか必要のないマタニティードレスが、やたら高くて、何人も子どもを産むとは思えなかった私は、そんな洋服に何万もつぎ込む気にはなれなかった。
要は、お腹を締め付けないジャンスカを作ればいいのよね、
と、ジャンスカを何枚か、これまた「適当に」縫っていた。
子どものおくるみや、ズボンや帽子なんかも・・
今から思えば、本当に適当な洋裁だった。
芯を貼ることすら、よくわからないまま、形に切ってつなぎあわせただけのソーイングだった。
ソーイング自体が、下火になっていたので欲しい布は、滅多に売っていなくて、限られた中で選んで縫うしか仕方がなかった。

そして第三次の波。
インターネットという、情報の大海に飛び込んでからというもの、ずっとその波は大きくなったり小さくなったりしながら、私の中でうねり続けている。
昔とは比べられないほどの、潤沢な情報と商品のなかで、その波にもまれながら漂い続けている。
若い人たちの巧みな技や、斬新な発想、洗練された感性に日々感動して、刺激を受け、ソーイングという海を泳いだり、漂ったりしながらもう７年が過ぎた。
たら、れば、を言ってみても詮無いことだけれど、どうせなら２０年遅く生まれて来たかったなぁ、とつくづく思う。
子どもに縫ってやりたかったデザインや、布がたやすく手に入るこんな時代に子育ての時間を過ごしたかった、と今の若いママたちをうらやましく思う日々である。

はてさて、今来ているこの第三次の波はいつまで続くことやら・・