1.昨年(2022年)12月に 東京財団政策研究所:「ニコチン入り電子タバコという代替品を提案し推奨」の主張は間違っている を書きましたが、
財団側の主張は「喫煙者の健康リスクを軽減できるよう、ニコチン添加液体の使用を認めて、ニコチン入り電子タバコを日本で解禁しては」とのことでした。
当方の反論・批判は「喫煙者が今現在で千万人以上いるとしても、激減して行っているのだから、わざわざ手を差し伸べて、ニコチン入り電子タバコという代替品を提案し推奨するのは間違っている」との論旨でした。それにもし喫煙者がニコチン入り電子タバコに切り替えたとしても、ニコチン依存は続き、紙巻きタバコや加熱式タバコの嗜虐習慣に容易に戻るであろうことは目に見えています。
2.IQOSのフィリップモリスなどが「タバコハームリダクション」を宣伝文句 として声高に叫んでいるのは、紙巻きタバコに比べて加熱式タバコの税率が低く抑えられており(最大約3割 )、有害成分がより低いとされる(実態は必ずしもそうではない)IQOSなどを「ハームリダクション」を錦の御旗のように利用してシェアーを伸ばそうと意図しているのに他なりません。
上記東京財団の関係するグループの主張では、ニコチン入り電子タバコの解禁の意図も、「ニコチン入り電子たばこの市場規模は322億~335億円で、たばこ事業法を改正し、仮にニコチン入り電子たばこに対しても「たばこ税等」を課すと、約169億~176億円の税収増を獲得できる可能性がある。」 と、喫煙者と国民の健康を犠牲にして(上記で「より小さな悪」と表現している )儲けようとの魂胆が明らかです。
3.IQOSのフィリップモリスなどが「タバコハームリダクション」を宣伝文句 として声高に叫んでいたのは、昨年来のタバコ増税の動きで加熱式タバコの税優遇の要求があったが、結果的に年末の2024税制改正大綱(97ページ)では「加熱式タバコと紙巻タバコとの間で税負担の不公平が生じており、防衛財源(国税)として、課税の適正化により、3円/1本相当のタバコ増税を、国産葉タバコ農家への影響に十分配慮しつつ、2024年以降の適切な時期に段階的に行う 」と決まりました。従って加熱式タバコに課税されることになったようではあるものの、「タバコハームリダクション」側からのせめぎあいは今後も続くことかもしれない。
4.加熱式タバコでも、ニコチン入り電子タバコでも、タバコはタバコな訳で、主成分のニコチンは依存症を引き起こし、健康を害するのだから、結局はタバコゼロ社会を目指すべきで、「タバコハームリダクション」というタバコ業界の宣伝文句の土俵に乗せられることは止めるべきです。
ニコチンパッチやチャンピックスなどの優れた禁煙治療薬や、認知行動療法もあります 。喫煙できる場所を限りなくゼロに近づけ、喫煙者を限りなくゼロに近づけ、受動喫煙による危害を限りなくゼロとしていく社会づくりと施策こそが、第3次健康日本21の目標とすべきでもあります。
5.国際的にもIQOSメーカーなどは「タバコハームリダクション」を宣伝文句にうたって、各国のタバコ規制の権限部局を攻略しようと謀っているようで、日本でも東京財団などのシンクタンクや識者たちや国会議員たちを巻き込んで攻勢をかけつつあるようです。
それに乗せられて、水面下で、ニコチン入りの電子タバコを例外的に医薬品として流通させることが可能となる制度改変を厚労省や財務省などに迫る動きも懸念され、あわせて加熱式タバコの優遇税率の据え置き攻勢を続け、IQOSメーカーなどは益々販路を伸ばし高笑いすることにならなければよいのですが、、
参考
タバコに「ハームリダクション」という解決法は有効か(yahoo 石田雅彦 2023/12/3)
加熱式たばこはハームリダクション? 多様な意見、日本でも議論(産経2023/12/18)
「たばこハームリダクション」は可能か?:国際的動向と日本での論点(日本公衆衛生雑誌2023)