各省の概算要求が出そろった。総額114兆円ということで、さっそく日経が「水膨れ予算要求に規律を強くきかせよ」と見当違いのことを主張している。
これから来年の国会まで予算の季節となり、日経のような主張を目にすることが増える。予算について議論するのはいい事であり徹底にやるべきである。が、そのために、最低限抑えておかなくてはならない二つの視点がある。その視点は同時に現代日本を取り巻く環境を概観することにもなるだろう。
一般政府という視点
≪中央政府(いわゆる政府)+地方政府(地方自治体)+社会保障基金≫を連結したものを「一般政府」と呼ぶ。ゼネラルガバメントの邦訳である。総政府とか統合政府と訳しても良かったかもしれない。
この一般政府の役割は、徴税権を背景にして(つまり対価なく)資金を集め、自らが消費し、投資し、再分配(現物給付と現金給付に分かれる)することである。この集め方と使い方・配り方を議論せずに、一般政府の一部門である中央政府の予算の多寡を議論しても始まらない。さらに日本経済全体の中で一般政府の財政がどのような役割を果たしているのか、または果たすべきかという議論こそ本質的である。
一国経済という視点
一国経済(GDP)は5部門に分けて分析される。家計、企業、一般政府、非営利対家計、輸出入だ。このうち非営利対家計部門は、非営利事業がGDPに寄与することを認めた点で大いに意義があるが、日本では額が非常に小さいため分析の対象からは除外する。輸出入は一国経済の需要と供給の差に過ぎない(*)から、当面対象から除外する。主要三部門(家計、企業、一般政府)を単年度と時系列で分析し、それぞれの特徴と一般政府が果たすべき役割を考えることが重要である。
*世の中の議論はいまだに「重商主義」である。貿易立国とも呼ばれた。それとは一線を画する重要な視点である。
次回はこのシリーズ「先進国」の経済学の概要を掲載する。