よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

需要不足が続く日本経済

2023年07月10日 | 週刊 日本経済を読む
 国民経済計算(SNA)という統計がある。GDPがどうしたこうしたというときに取り上げられる統計だが、それ以外の時はあまり見向きもされない。マクロ経済の最も重要で基礎的な統計だが、政策に反映されたという話も聞かない。が、貯蓄投資バランスということを考えるとSNAなしに語れない。

 ということは、余計なことだが、新自由主義的な理論にはお呼びがかからないということでもある。新古典派の理論では常に貯蓄=投資であり、そうなっていない「異常事態」は人為的な規制のせいでありその犯人捜しをするのが経済学者だということになるからである。

 そういう理論はさておき、SNAから貯蓄投資バランスを見てみよう。

 

 SNAには総固定資本形成と総固定資本減耗という概念がある。総固定資本形成は民間の設備投資、住宅建設、公共投資を含む一国の総投資である。減耗は固定資本の減価償却と考えてよい。固定資本形成が減耗を大きく上回っているときは「新規」投資が活発に行われているということだ。形成=減耗となれば、固定資本は減耗した分が補われているに過ぎず、経済成長は見込めないし、更新された設備の生産性は上がっているだろうから雇用量は減るに違いない。形成>減耗が経済成長の必要条件である。



 固定資本形成マイナス減耗を純投資と名付けよう。純投資に対応するのは貯蓄である。貯蓄と純投資を比較したのが上図だ。ここでの貯蓄は家計にとどまらず企業も一般政府も含んでいる。
 
 1997年から貯蓄と純投資の乖離が始まり、2008年~2014年まで貯蓄すら困難になっている。これはリーマン危機のせいもあるが、1997年以降、特に2001年以降、貯蓄に見合う純投資がなかったせいで所得が伸びず貯蓄が困難になったということだ。
 
 貯蓄マイナス純投資を表したのが下図である。



 2014年以降、リーマン危機からの世界的回復、賃金総額の伸び、年金による再分配の進行で総貯蓄は20兆円を超えたが、投資は進んでいない。このまま事態が進めば総所得は伸び悩み、経済の基盤は脆弱なのものとなるだろう。
 
 貯蓄マイナス純投資は、本ブログで度々取り上げている余剰資金だ。この資金が投資ないし消費されていれば、つまり需要に回れば、大概の問題は解決できる。

 では、なぜ需要に回らず資本の回転からこぼれ落ちていくのだろうか?
  それには、この余剰と呼ぶしかない貯蓄の実相を探ることが必要となる。
 次回、「誰が貯蓄しているのか?」乞うご期待。

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