意思による楽観のための読書日記

日本経済の真実 辛坊治郎、正記 ****

非常に分かりやすい経済解説、小泉・竹中改革は日本経済にプラスであり、それ以降の政権は安倍、福田、麻生の自民政権、そして鳩山政権も日本経済の停滞を食い止めていない、という説明である。

まずはGDPの解説、労働力、設備投資、技術力いずれかを伸ばすことでGDPは伸びる。だから、少子化で労働力が減少するなら、潜在的な労働力である子育て中の女性が復職できる施策は重要。衰退産業の保護をするより成長分野に傾斜配分した設備投資が必要、海外の技術よりも国内の技術力を活用した生産を心がける、これがGDPの伸びにつながるということ。

日本人の貯蓄は1400兆円あると言われるが、それを有効に活用できなければ、今のような財政赤字が積み重なる状況では財政破綻、国債と円の暴落はいずれは現実のものとなる。国民に人気を得たい政治家が一時的なバラマキ政策で国民の貯蓄を大盤振る舞いするだけでは借金を増やすだけ、日本企業の競争力を高めて雇用が増えるような分野に使うべきだと。

法人税が高い国には資本家は投資意欲を持てない。なぜなら、法人税支払い後の利益からしか配当は受け取れないからである。法人税を下げるのは企業が活性化して利益を次の投資に振り向けられるから、だけではなくて海外投資家からの資本が期待できるから、そして日本株式市場への海外資本の呼び戻しも期待できるからである。

小泉・竹中改革は格差拡大を助長した悪い改革であった、という論調が多いがそれは間違いである。バブル崩壊後の日本経済立て直しには、郵政事業で得られる国民の富を官僚が使いたい放題にできる郵政事業の民営化は不可避だった、安倍政権以降、その改革を骨抜きにしてしまったのは自民党だけではなく民主党にも重い責任がある。小泉政権時代に株価は底を打ち反転して2万円近辺まで戻していた。GDP成長率は実質、名目とも2003-2006年はプラスであった、完全失業率は5.5%のピークから4%まで下がり、有効求人倍率は0.5から1.1近くまで改善していた。そしてなにより、財政赤字では支出抑制政策により財政均衡が図られ概ね成功していた。ジニ係数が示す格差も改題傾向に歯止めがかかったのが小泉時代であった。格差拡大の本当に原因はグローバル化進展と技術進歩、既得権益にしがみつく、つまり現状に富か権力を持つ人達が小泉・竹中を批判している。

安倍政権では、偽装請負などの労働基準法違反を厳格に摘発することを打ち出し、ホワイトカラー・エグゼンプションは野党に反対され廃案、政策の軸足は労働者保護に傾いた。麻生内閣では経済刺激策を取り赤字国債を増発、景気浮揚策として住宅ローン減税、公共事業に再度力点を置き、浮揚効果が一巡したあとには経済赤字だけが残った。民主党政権はコンクリートから人へのスローガンで16兆8000億円の財源により子ども手当、高校無償化、高速道路無料化、医療と介護の再生、農家戸別所得補償、後期高齢者医療制度の見直しなどを打ち出したが、財源は確保できず、このツケは子ども手当をもらう子どもの世代に回ることになる。子ども手当よりも、子供を産んでも安心して働ける環境整備が重要ではないか、というのが辛坊さんの主張。

最後に、経済学者やニュースキャスターが唱えている悪の呪文を5つ挙げている。
1. 「経済の豊かさよりも心の豊かさが重要」という間違い
衣食足りて礼節を知るである。政治の責任は真面目に働きたいと考える人に職を与え、それによって自らの衣食を確保する喜びを実現することである。ブータンが理想の国という人は本当の意味でブータンを見ていない。所得格差は大きく、子供たちは大麻を吸って楽しんでいる、それを幸せというのか。生活保護を受けて一日中ゲームをする若者を増やしてはいけない。
2. 「大企業優遇はやめろ」という間違い
日本のGDPの大半を稼ぎ出すのは大企業、大企業の設備投資を積極的に進める政策こそが今の日本に必要である。
3. 「金持ち優遇は不公正だ」という間違い
富裕層の所得税率は50%、富裕層への子ども手当支給を制限するというのは行政手続の無駄、富裕層が支払う税額に比べれば子ども手当などは微々たるものである。
4. 「外資に日本が乗っ取られる」という間違い
海外からの投資を日本市場に呼び込むことこそ必要であり、雇用が生まれ、消費が増える、そしてGDPが増えるのは投資先の国である。
5. 「金をばらまけば景気が良くなる」という間違い
短期的にはありえても、個人の資産が1400兆円ある国で、金のバラマキは不要。それよりも将来の不安を無くする政策が重要。お金を使わないのは将来に不安があるからであり、お金が無いからではない。年金の仕組みを整え、財政を安定化させ、公教育を立て直し、子供を安心して育てられる環境にすること、これが重要である。
日本経済の不都合な真実―生き残り7つの提言
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