意思による楽観のための読書日記

百代の過客 ドナルド・キーン(上・下) ****

アメリカ人の筆者に日本の古典日記を教えてもらった。蜻蛉日記では次のように評価する。「この日記が持ついちじるしい特徴は強烈な女性的性格だといえる。自分を客観視しようなどという気持ちは毛筋の先ほどももたないという、ある女性の不幸な記録である。この世に自分ほど深く悲しんだ女性は誰一人いないと確信し、読者にもそれを味あわせようと、彼女は心に決めていたのである」道綱の母として知られるが、夫は藤原兼家、政府高官である。彼女は息子と夫、この二人以外には関心を示していない。彼女は平安女性の生活の悲しみを読者に伝えようとしているというのだ。キーンはこの蜻蛉日記と奥の細道を日記の傑作としているが、無名の日記にも大いに関心を示している。聞いたこともない多くの日記を紹介する中で、日本人が書く日記と西洋人の日記の違いを次のように解説する。「日本人の日記に主に記されるのは自分の心の中とその動きであり、西洋人のようにどこで何を食べて、誰と何を話したかではないのである」

キーンは太平洋戦争中は従軍し、日本兵が戦場に残した日記を収集するという活動をしていたという。米国軍は禁止していた日記を日本兵の多くが書き、それらは結構有用な情報源となったからである。そして日本兵の日記の、それも死ぬ間際になればなるほど、どんなに文学的才能がないと思われる兵士の日記ににも感動を誘う記述がみられたという。

日本人が残した平安時代から幕末までの80編の解説、朝日新聞での連載を上下の本にしたもの。価値ある書き物だと思う。
百代の過客―日記にみる日本人 (上) (朝日選書 (259))
百代の過客―日記にみる日本人 (下) (朝日選書 (260))
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