15篇の主人公に共通するのは太平洋戦争開戦前後に軍医士官として戦地に派遣される男性であること。中尉から大尉での派遣であるためかならず従兵がつき、敵兵に負われ食料も乏しくなって大変な思いをする中でもどこかに余裕を感じる。兵隊や上司、現地の病人や産婦を診察したり出産の手伝いをしたりするので、みんなに頼りにされ信頼もされる立場である。それでも戦地の、特に南方の島々における逃避行ともいえる行軍でのひもじさ、その中での戦いは惨めを通り越して「もうやめてほしい」と言いたくなるような悲惨さである。大岡昇平の「レイテ戦記」、「俘虜記」、野間宏の「真空地帯」などで知る日本軍の兵隊たちとはすこし違った意味で日本軍の兵隊たちの実体が分かる小説群と言えると思う。
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