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意思による楽観のための読書日記

住んでみたヨーロッパ 九勝一敗で日本の勝ち 川口マローン惠美 ***

こういうのを「タイトルの勝利」とでも言うべきか。失われたxx年とか言われて自信をなくしている日本人読者の心をつかむキャッチコピーなんだと思う。発刊は2014年で、ブラジルでのサッカーワールドカップが開催されていた頃。日本も結構やるかもしれないと、期待が大きかっただけにちょっとがっかりしている心の隙間を埋めるような一冊だったのかもしれない。ドイツ在住の筆者が感じたヨーロッパの不便さと、当地から見た日本の住みやすさ、良さを解説している。

中身は目次を見るだけでもほとんど分かる。
1.泥棒天国のヨーロッパ
2.リズム感が悪いドイツ人
3.不便を愛するノルウェイ人
4.残酷な闘牛と日本のイルカ漁
5.ケルンの完成しない地下鉄工事と池袋の道路工事
6.日本の百倍ひどいヨーロッパの食品偽装
7.ドイツの宗教事情も日本的に変化
8.歴史の忘却の仕方 ヨーロッパとアジア
9.奴隷制度がヨーロッパに残した遺産
10.歌舞伎と瀕死のオペラ
11.同性愛者が英雄になるヨーロッパ
12.移民天国と難民地獄
13.EUはローマ帝国になれるか
本書内容は以上。

ヨーロッパ旅行をすると感心するのは、古いレンガ造りの建てものをうまく利用して現在風のレストランや事務所として活用していること。これが住民からすれば不便で使いにくいことこの上ないと筆者は言う。しかしウイーンやシュトットガルトなどの昔の町並みは新しい店やブティックに入れ替わってしまった。頑張って古い町並みを今でも保持するのは、ミラノやフィレンツェ。パリやロンドンはここ20年ほどで随分変わってしまった。

逆に、京都に来た外国人旅行者が、古い京都の町並みと現代的な建物や街が共存していて良いという。京都に住んでいたものとしては、東山の山並みはマンションで隠されて、嵐山の散策道は看板で溢れかえった、京都タワーだけでもうんざりしていたのに、今は京都駅がそびえ立つ。テーマパークだと割り切れば、観光客向けには便利で安全でしかも楽しい場所かもしれないが、8階以上の高い建物はなくて一番高いのは東寺の五重塔、という昔の古き良き京都の街はもはやなくなったと思う。東京はその点思い切りが良い。首都機能や利便性を優先して、古きものは点で残し、街全体は大都市としての発展を目指す、という割り切りがある。

勝ちか敗けか、という二元論では割り切れないはずなのが、読者としては見たくない現実には目をつぶり安心したいだけ、と編集者には思われているようで悔しい気がする。タイトルとは別に、筆者としては、日本に暮らす人たちに向けて、もっとグローバルな視点で世界を見てね、と訴えていると感じます。

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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