
三田にあるギャラリーFINE ART YOKOIにて前原冬樹の個展。
美術手帖の小さな紹介ページに載っていた作品画像を見て以来
一度実物を見たいと思っていたがその機会がやっと来た。
木を彫って(一木)油絵具で彩色する。
唯それだけで何故あんな凄いものができるんだろうか?
錆びた鉄にしか見えない、質量まで感じる瓶コーラ自販機に備え付けられた栓抜きや
海老にしか見えない海老の質感(生きている海老ではなく死んでいる海老。もっと言うと焼いた海老をしばらく放置した時のような質感。お正月のお節料理で余ってしまいずっと器に残っているアレによく似ていると思った)。
硬いものだけではなく革表紙の本の質感までもが木と油絵具で再現されていた。
いろんな物質の質感が驚くほどのクォリティで再現されているため、ギャラリーの剥き出しの壁も作品と勘違いしてまじまじと見つめるという間抜けな事をしてしまうほどだった。
(ギャラリーの人に聞いてそれは作品ではないと言われる)
上の画象のトランプももちろん木だ(今回展示されてはいないが)。
↓ファンになるきっかけの美術手帖で見た作品の実物があった!!

凄い。。
近づけば近づくほど木とは思えなくなっていくあの感じはなんなのだろう(普通は逆だ)。
爪の付け根の肉づきや指の関節のしわ具合、指で押せばぷにゅっと凹むのではないだろうかと思える掌のふくらみ。
そして一番驚いたのは手の指紋まで表現されていた事だ。
これは画象だけでは絶対わからなかった。
唸ってしまった(比喩じゃなく)。
自然の木目を利用したものなのか意図的に掘り出したのか(塗ったのか)はわからないが、指紋表現の入ったそれは見るほどに手そのものにしか見えなくなっていき、自分を納得させるため手首の続きを見ることで木であることを再確認するというよくわからない作業が必要だった。
【ギャラリーの方の話】
ギャラリーの方と話をさせてもらう機会があった。そこでは
・今でこそ超絶技巧作家として評価されているが最初は全く理解されず、アートフェアに出品する
も花火の燃えカスを模した作品がリアルすぎてゴミが落ちてると報告された事もあったという。
(それはそれで作品の凄さを証明するエピソードとして面白いとも思ったが)
・明治の工芸作家のように最初は国内ではなく海外の評価が高く、国内放送のないNHK(NHK
WORLD)が取材するほどだった。
・作品を入れるケース(木箱)も作家自信が作っているそうだ。内部で動かない特別な仕組みを
業者に発注しても嫌がられたため仕方なく自分で作りはじめたらしいがケース自体の製作にも
相当時間がかかるらしい。
・個展を開くため所有者から借りて輸送する際、所有者が輸送業者に作品を触らせたがらず前原
自身が各所有者の家に赴かなければいけなくて個展は大変なのだと言っていた。
(作品を輸送業者に触らせたがらないのが所有者なのか前原自身なのか、どちらにもとれた。)
など貴重な話を聴くことができた。
また、明治超絶技巧作家からこの春に三井記念美術館でやる展覧会の話になり、ありがたすぎる貴重な収穫も得る事ができた。訪れた日はその展覧会がらみでテレビの取材のため前原自信も来る予定だそうだったが、ご本人に対面するのは恐れ多いので早々に退散させてもらった。
作品自体もそうだがギャラリーの方の面白い話や作家に対する熱意も感じることができた
とてもいい個展だった。
前原冬樹個展 「一刻」
2014年3月11日-3月29日 14:00-19:00(土-12:00-19:00)
日・月 ・祝休廊
FINE ART YOKOI
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