今回の内容
・少子化対策と人手不足対策。
・雇用の現状(働き手は減少)
・生産性向上と人手不足対策は、非正規雇用者を制限する。
はじめに
本稿は2016年8月4日に投稿したものです。当時、殺害された安倍首相が「一億総活躍社会」、「働き改革」を訴えていました。
そして今、岸田首相の「異次元の少子化対策」と「人手不足」が話題です。
振り返れば少子化という言葉は1992年に出された国民生活白書「少子社会の到来、その影響と対応」で使用された。30年前です。
今の人口の半数は50歳以上が占める日本社会となっています。
日本は一時的から恒常的な人手不足時代に入りました。非正規雇用を制限すると労働時間は増えて、人手不足対策になる。企業物価は上がり消費者物価も上がる。正規雇用が増えるので雇用者の所得も増える。経済的な少子化対策にもなる方法なので再提案します。
*結婚や出産は自由です。
雇用の現状
非正規雇用者数の推移(構成比)
求人増でも賃金上がらず 医療・介護、非正規多く
製造業からサービス業への雇用シフトは先進国で共通する。米国では同じ期間にヘルスケア・教育関連産業の雇用が20%増え、この分野で働く人の賃金は32%増えた。日本でも医療分野は市場拡大が進む。なぜ日本では賃金相場と連動しないのだろうか。
一つの理由が増加した雇用の多くを非正規社員で賄っている点だ。医療・福祉部門のパート比率は21%で製造業の2倍。経済協力開発機構(OECD)の05年の調査では日本のパートの平均給与は正規社員の48%。スイス(96%)やドイツ(74%)より低い。
女性の就業者はパートで働く比率が5割程度に達する。配偶者控除を受けるために、労働時間を減らして年間収入を103万円以内に抑える主婦も多い。同じ仕事をすれば正規、非正規の賃金をそろえる「同一労働・同一賃金」が一般的な米欧とは異なる。企業は賃金が低いパートを使い、総人件費を抑えてきた。
増える非正規、日本が突出 賃金上昇の重荷に
先進国中、賃金が増えないのは日本だけだ。経済規模も拡大しない。
生産年齢人口(15歳以上65歳未満のひと)数は減少し続けている(先進国では、日本の減少率が最高だ)。労働力人口(15歳以上の働く能力と意志があるひと)数は増え続けている(働かなくてはならない理由が増えた?)。就業者(収入のある働くひと。自営業者、家族従業者そして雇われる雇用者に分かれる)数と雇用者数は、増え続けている。
しかし、正規雇用者数は減少し続けている! 有効求人倍率は増え続けている。完全失業者率は減り続けている。生産年齢人口は減少するが、雇用者需要の減少速度とは一致しない。だから人手不足は解消しない。*15年以降正規雇用者数が微増している。これは、女性の正規雇用者数増加が主因。
非正規社員の賃金だけではない。正規社員の賃金でも同じ傾向だ。
雇用者数は増え、雇用者報酬総額は横ばい
ところが、雇用者報酬総額(内閣府、国税庁調査だと、日本全体で約200兆円)が、ほぼ横ばいだ(雇用者総数は増えているのに!)。つまり、一人当たりの収入は減り続けている。
その理由は、低賃金の非正規雇用者が増えたことだ。定年後の再雇用は増えるが、非正規雇用の有期雇用(ほとんどが1年の有期契約で、65歳まで更新し続ける)だ。主婦は非正規のパート、アルバイトをするひとが多い。
物価を上げるにはまず、「非正規労働者数を規制する」(従業員に占める割合の上限を決める)が正しい方法である。そうすれば自動で一人当たりの賃金は上がる。そして国民全体への支給総額も増える。利益を内部に貯める一方だった企業には、人件費という経費が増加するので、企業物価を上げる要因となる。
人手不足解消と潜在成長率を上げるために正規雇用者を増やす
出所 日本経済新聞
しかしながら、潜在成長率は「資本」(設備)、「労働力」(労働者数と労働時間)、そして「生産性」(時間当たりの付加価値高)の成長率の合算だ。
どの要素も変えられるが、生産年齢人口が減り続け、人手不足が拡がる日本の課題は「労働力」である。
非正規社員の増加を止め、正規社員を増やすことが潜在成長率引き上げになる。短時間労働者の労働時間よりも正規労働者の方が労働時間数が多いからだ。
同時に、労働時間数の増加は人手不足対策にもなる。
潜在成長率の引き上げが、日本の最大の経済課題である。何故ならそれが成長率につながるからだ。過去長期にわたり、潜在成長率と成長率はほぼ一致してきた。成長率を引き上げなければならないのは、金銭だけでなく精神でも豊かな生活を送るためだ。個人の所得だけでなく税収も増える。
*労働力の量だけでなく質、さらに生産性の課題はある。
▼潜在成長率 企業の生産活動に必要な資本ストックや労働力を過不足なく活用した場合に達成しうる経済成長率。企業の設備などの資本、労働力、企業の技術進歩や効率化による生産性という3つの要素で計算する。
現在の経済構造を前提にした国全体の供給力として捉えられ、景気循環の影響を除いた成長の「巡航速度」を示す。景気の悪化や過熱で現実の成長率と一致するとは限らない。
むすびー政府には国民が、望む人生を自由に選択できる環境を整備して欲しい。
お願いをしても賃金は上がらない。労働者には、争議権・団結権・団体交渉権が付与されている。ところが、日本の労働組合は、海外では当たり前のストライキによる待遇改善に消極的というよりも敵視している。企業内組合と職業別組合の違いはあるが、根本にある人権意識が低い。*日本共産党憎しが強すぎるので、組合が政治状況を変えられない。
国民各層に、リベラル意識を増やす努力が必要だ。
だからリベラリズムが根付かないこの風土では、国会(法律)により非正規雇用を規制する。そうすれば、企業物価そして消費者物価は上がる。また、結婚しない・子供を産まない経済的理由は減る。さらに、人手不足対策にもなる。
なお、非正規雇用を希望するひともいるので、最低賃金は上げる。
最後に、以下の文章を紹介して、本稿を終わります。
ゆたかな社会は、各人が、その多様な夢とアスピレーションに相応しい職業につき、それぞれの私的、社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、安らかで、文化的水準の高い一生を送ることができるような社会を意味する。
それはまた、すべての人々の人間的尊厳と魂の自立が守られ、市民の基本的権利が最大限に確保できるという、本来的意味でのリベラリズムの理想が実現できる社会である。
*宇沢弘文「社会的共通資本」
米スト参加、昨年5割増 教師や看護師、人手不足など改善要求
米国で2022年に仕事を一時拒否するストライキに参加した労働者は約12万600人で、前年から5割増えた。大半はサービス業で、教師や看護師など人手不足の職種で待遇や職場環境の改善を求める声が強まった。大企業でも労働組合を結成する動きが相次ぐ。労働者の不満が解消しなければ、23年もストが頻発する可能性がある。
米労働省が22日発表した。1000人以上が参加し、祝日を除く月曜日から金曜日までに労働者が少なくとも1度は仕事を拒否したストを対象に集計した。
ストに参加した約12万600人のうち98%はサービス業の従事者。人手不足が深刻な教育関係者が6万9500人で全体の約6割を占めた。医療関係者は同3割だった。
22年のストの件数は23件で、前年から4割増加した。ストは23年になっても起こり、1月にはニューヨーク市の主要病院で働く看護師ら約7000人が3日間、実施した。患者数に対する看護師の割合などを取り決め、病院側と妥結した。
米国では新型コロナウイルスの感染拡大を機に離職者や早期退職者が急増した。経済活動が正常に戻るなかで人手不足が深刻になり、労働環境や待遇の改善を求めるストが活発になった。労働者側は要求を通しやすくなっている面がある。物価高で実質賃金が目減りしている事実も賃上げ要求につながっている。
大手企業では従業員が新たに労働組合を結成する動きが広がる。2月には電気自動車(EV)大手テスラも、ニューヨーク州バファローの工場で働く従業員が労働組合の結成を目指していると米メディアが伝えた。
独全土、鉄道・空港マヒ 大規模スト
ドイツ全土の公共交通機関で27日、過去30年間で最大規模のストライキが広がった。複数の都市で高速鉄道「ICE」の運行や空港業務が止まるなど影響が少なくとも数百万人に及んだ。歴史的な物価高で実質所得が大きく減るなど家計が圧迫され、大幅な賃上げを求める声が高まる。国民の不満がインフラ機能の維持にも影を落とす。
(注)
青字は日本経済新聞記事からの引用。