障がいのある子どもと大人の支援 ~分かり合えると問題解決の道が見えてくる~

このブログは、障害児・者の心を大切にした対人援助技術「心のケア」を学び実践しているメンバーが集まり投稿しています。

伝わるとうれしい!~その後~

2022-09-19 20:43:16 | 日記

こんばんは。

まきこっこです。

 

前回書いた伝わるとうれしい!のその後です。ちょっと長くなってしまいますが。。。。

実は、あの記事を書いた翌日大変なことが起こってしまったんです。

朝、Mさんが施設に到着してから、散歩に出たいという要求があって。私は送迎車に添乗していたのですが、その後は他の方の個別対応が入っているので付き合えなくて。でも午前中Mさんの担当になっていた方が「いいよ。私と散歩しよう。」とMさんと二人で出かけて行ったのです。その方はMさんが最初に執着し始めた大好きな職員で、Mさんとの関係も良好なのですが、私はそのやりとりの仕方に少し不安が残っていました。屋外に走り出したMさんを施設に連れて帰ってくることを、まだ一人ではできない方だったから。それなのにあっさり二人で出かける姿を見て、「私の知らない間に、やり取りに自信がついたのかな。」そう思って不安ながらも見送りました。

そして二人で出かけた先で、Mさんは大好きな職員の気を引きたくて、危ない坂道を猛スピードで駆け下り、転倒して体中と顔面にひどい擦り傷を負いました。結構な出血も伴い、見るからに痛々しい感じでした。

お家に連絡し、園長や課長からの報告と謝罪がなされたのですが、お家の方の怒りは冷めやらず、施設ごと訴える勢いでした。それでも、うちの施設以外に受け入れ先はないため、私たちは激しい叱責を浴びながらの利用継続となりました。

そしてお家の方からの要望で、しばらくは外出せず(ドライブも禁止)、施設内で過ごすことになりました。

私の中にどうしようもない怒りと落胆がありました。せっかくいい方向に行っていたのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。Mさんとのやりとりのコツをつかんだ職員と一緒に、他の職員にも伝えていく方法を探していこうとしていた矢先に。自信のない方はしないで下さいと言えばよかった?この職員さんなら大丈夫、というあいまいな感じにせず、限定すればよかった?見送ったあの時「一人でも本当に大丈夫?」と念押しすればよかった?

散歩に出られなくなれば、Mさんはまた施設内で暴れたり泣いたりするだろうし、他の利用者さんの安全確保のために、ダダをこねることも許されず抑え込まれてしまうのではないかと想像し、悲しくなりました。理解を示し始めた職員さんたちも、再びMさんのことを困った人扱いするようになってしまうかもしれないと思いました。

でも。

結果は予想外でした。

ケガが痛々しいうちは「ケガが治るまでは散歩には行けないよ。お家の人と約束したからね。」と話すことで、大暴れや大泣きはしないでいられましたが、傷がほぼ完治してくるのと同時にMさんの外出への要求は激しくなり、大泣きや大暴れが始まりました。しかし、その時の職員さんたちの対応がこれまでと全然違っていたのです。「外に行きたいよね。散歩大好きだものね。私達だってあなたと散歩したいんだよ。でもお家の方がまだ心配だから外には出さないでっていうから、私たちは約束を守るんだよ。早く散歩できるように一緒に頑張ろうね。それまで頑張って我慢しようね。」そういう意味合いの言葉をかけながら、暴れるMさんの体を制止するのです。職員を激しく押しのけて外へ行こうとするMさんを押さえ、数人で抱えて、時にはブルーシートに乗せて屋内に運び入れる、という図は以前と変わらないのですが、「あなたの気持ちはわかっているよ。」の要素が加わると、それは暴れる猛獣との戦いのではなく、おびえて荒れ狂っている手負いの獣を治療のために保護するかのような情景になります。有無を言わさず屋内に連れ込もうというのではなく、その場に座り込んで動かない葛藤の時間を、止まって待ってくれる様子も見られます。それがMさんにも伝わるようで、屋内に入った後、ドアをけったり大声で泣いたりすることが多いのですが、それも時間がどんどん短くなっていき、最近では入ってしまえばあきらめてすぐ自室まですんなり移動することもあります。

屋内での活動でも、Mさんとやり取りできるようになった職員が、部屋の窓から外に向けて水鉄砲を打って遊ぶ、ということを楽しそうにしていました。部屋の中に向けて水鉄砲を打たない、というルールを守れるということが必要で、お互いの信頼がないとできないことです。「あなたが約束を守れるとは思わない」と職員が思っていると、Mさんはすぐにそれを見抜いて約束を破って、期待に応えてしまう方だから。部屋中水浸しにして、何なら水鉄砲もたたきつけて壊すでしょう。

外に出ることができなくても、以前とは明らかに違うMさんと職員の姿を見ることができました。職員の方には自覚がないのか「もっとすごいことになると思ったけど、その割に穏やかに過ごせてるよね。Mさんが大人になったんだろうかね。がんばってて偉いよね。」と言っているのを聴きました。

満面の笑顔で外を歩き、聞き分けることもできるMさんを見ることで、職員さんたちのMさんに対する認識が自然に変わっていったんだろうと思うのですが、自然すぎて気が付かないようです。素晴らしい人達だなあと思います。

次回研修の時には、その辺しっかりお話ししてお伝えしたいな、と思いました。

 

長くなりました。

私の怒りや落胆、心配など、思いっきり杞憂だった話でした(^^)/


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