チーム医療維新 日本のNP、PA制度を考える

日本におけるNP(ナースプラクティショナー)、PA(医師助手)などの非医師診療師の導入について考察するサイトです。

PAになりたい若い方へ

2010年11月04日 20時09分58秒 | 米国PAについて
日本の高校生の方から、PAになりたいので、というメールを頂きました。彼女からもらった質問と、それに対する答えを、ほかの人の参考にもなるように載せておきます。
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PAについては、以下のブログを参考にしてください
PAに関するブログ記事

1、PAになるための勉強をするには高校卒業後どういう学校に進んだらいいですか

大学の学士は、何でも構いません。でも、生物とか科学とか理系だと、後で受験前に社会人として取らなきゃいけない科目が少なくてすみます。看護学士を取ってから、PA講座に進む人もたまにいます。


2、なにかのサイトでPAになるためには専門学校で24~32ヶ月のカリキュラムを履修し、国家試験を得たあとに州免許を取得すると読みましたが、このような過程でPAになることができるのですか。それとも大学に進学する必要がありますか。


PAは、大学の学士を持った人が、多くの場合社会経験を経てから、コミュニティーカレッジなどで必須科目を取ってから、進む、24-32ヶ月の修士号です。専門学校ではありません。ただし、社会経験は入学条件に必要ではないところが多いようです。ボランティアや、救急救命士などとして医療に関わったことが1000時間以上、などの条件のある学校は多いようです。


3、PAになるための必須科目はありますか。


学校にんもよりますが、統計学、解剖学、生物などです。各学校のホームページを見てください。


4、現時点では、高卒後まずアメリカの学校で学ぶために必要な英語力を身につけるために外国大学日本校で2年ほど英語を学び(この時点で短大卒業資格取得可能)
そのあとアメリカでPAの勉強をするということも考えています。
その場合は高卒後となにか違いがありますか。


学士を取らなければ、残念ながらPAにはなれません。
また、アメリカでPAをということになると、日本の医学教育よりも教育年数が少し長い計算になります。ですから、なぜ日本で医師になるのじゃなくて、アメリカで(ビザが取れなくて働けないかもしれないというリスクを犯して)PAになりたいのか、じっくりと考えてみてください。

日本で医師になり、アメリカで学びたいならアメリカへの臨床留学を考えるという道もあります。

いずれにしろ、進む道はたくさんあります。セカンドキャリアとして、後からなれるのが、PAの良いところです。

goodluck!
緒方さやか
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PAとは

2009年11月17日 17時15分20秒 | 米国PAについて
PAとは Physicians Assistantの略で、PA修士号を経た者が、医師の助手として、医師と協力して患者のケアにあたる。

NPと違って開業はできない。NPと同様、薬の処方などは自由にできる。

NPは地域医療に関わる者が多いが、PAは病院内で働くことが多い。

医師になるのに興味があるが、安定したライフワークバランスを重視したいという大学生と、医療にキャリア転換をしたい社会人がPAの講座を目指す。中には、 医師型モデルに惹かれる看護師も含まれる。

平均約25-27ヶ月の修士号は凝縮メディカルスクール形式で、NP修士号のように専門が別れていない。急性期医療に携わる割合が比較的多いものの、精神科、僻地でのプライマリケア、産婦人科など、多岐に渡る分野でNP、看護助産師などと平行して、全国で約9万人のPAが働いている。

PAについてもっと知りたい方は、こちらでPAに関しての記事を読んでください。

また、ダウンロードのページでPAの歴史年表をダウンロードできます。

玲子ノール:フィジシャンアシスタント(PA)の歴史、役割とその活用.日外会誌、110(3): 167-171, 2009 には、PAの役割が分かりやすく解説されています。



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PAの主な勤務先

2009年05月11日 10時02分13秒 | 米国PAについて
集中治療におけるNP、PAに関しての記事を執筆中です。
その下書きから、参考までに、一部抜粋:

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PAの場合、一般医療を学んだ後、精神科、皮膚科、小児科、外科、心臓/胸部外科、トラウマ外科、救急医療などの専門を選ぶことも可能である。2008年のデータによると、診療所や外来医院などで働くPAは全体の約6割を占め、PAの38%は病院勤務である 。その内ER勤務が10%、入院(ICUを含む)が10%、病院外来が8%、オペ室が6%が主要な勤務場所となっている。しかし、複数の勤務形態を持つPAは多く、PA全体の23%と21%が過去1ヶ月以内にそれぞれICU/オペ室でも働いたと答えている。
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米国PA学会にはいろんな情報が盛りたくさんでほんとにエライ。Solid statistics are crucial for many advancements – including making policy decisions! Thank you AAPA!

緒方

救急診療部で働くPAの毎日

2009年02月19日 07時20分31秒 | 米国PAについて
ジョージア州でPAとして活躍するノール玲子さんから、メールをいただきました。
救急診療部 で働くPA の毎日について書いていただきました!

仕事場の写真も送っていただきました。
青のScrub(スクラブ、という。病院で着る服)はノールさんです。 黄色のScrubを着ているのは NPのラネー ウィリアムスさん。 


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(以下、ノールさん)

はじめに

私は結婚してアメリカに来ました。アメリカもさやかさんと同じくらいで 19年です。 PAになって3年目、卒業後から ER (救急診療部)に勤務しています。

PAになった経緯

医師ではなく PAを選んだ理由は、 個人的ですが、 子供が2人いる事と主人の前の仕事は 転勤が2年半ごとで、 医大に行く事は、 転勤の為に 難しい事、そして、やっぱり、日本にPA・NPがなく、それを 日本に紹介したい、できれば、日本でのPAのプログラムを作るお手伝いしたい。 こういった理由からでした。

最初に EMT(Emergency Medical Technician、救急隊員) として 3年間 レスキューをやっていました。その後、主人の転勤で沖縄に行き、そこにある軍病院のERでEMTとしてボランティアを3年やった後、 Univeristy of West Georgia(西ジョージア大学)から 生物学の学士で卒業しました。 その大学の時に PA学校の受験前の必須科目は取っていたので、 GRE(全国統一大学院入学試験)を受け、 その後、 Alderson-Broaddus College(アルダーソンブローダス大学)を受け、3年間のMasters Of Physician Assistant (PA修士号)を終えました。 
アルダーソンブローダス大学 のPA プログラムは 1年目は 基本的な Gross anatomy (解剖学), medical physiologyなど。2年目は 専門科、(外科、小児科、救急医療など)とクリニカル(臨床トレーニング)の半分半分。3年目は Clinical rotation(臨床のローテーション)でした。 
その後、国家試験。州のライセンスの申請。 
卒業後から、Hospital previlege(病院で働いていいという許可)がおり、仕事に入るまで、約3ヶ月かかりました。

救急診療部 で働くPA の毎日

ER(救急診療部)の仕事は、12時間勤務で 朝勤、夜勤、Fast Track(軽症者コース)すべてこなします。

まず 軽症者コース、Fast Track(うちの病院は Express Careと呼んでいます)の事 お話しますね。 Fast Trackは PAかNPの一人で 12時間勤務です。 ERの端っこにあるのですが、8ベッドで、診る患者は 切開排膿とその再チェック、簡単な 裂傷, 風邪、気管支炎、簡単な骨折、歯の痛みなど簡単なものは全部 来ます。(たまに トリアージナースの間違いで えええ?!と思うような患者も 来ますが・・・・(笑))。

多いときは 40人以上診ます。 もし、医師のケアが必要となったら、EMの医師(救急医)に ケースプレゼンテーションに行って、患者を受け渡しするか、医者とCollaboration(協力)しながら、その患者をケアします。

 また Main ER(メインの救急救命室)の方は 27ベッドで、 腹痛、肺炎、トラウマ、 敗血症 などなど、いろんな患者さんを 診ます。うちの病院は PA/NPフレンドリー で PA/NPがかなり自律しています。 入院が必要になった患者は EMの医師に ”この患者さん、<診断>で 入院させるから”と言うと ”あ、そう”って それくらいなもんですが、医師には 頼んで、少しだけでも、その患者さんの部屋へ、 顔を出してもらうようにします。 そして 自分達が、患者のプライマリケア医か病院医と話し、Admission order(入院時の指示)も自分で書いて、EM医師に 見てもらって、Co-sign(隣にサインをすること)してもらいます。
 
 また 自分達の能力以上とみなした患者は、 医師と話して、受け渡しするか協力 しますし、 4ヶ月以下の赤ちゃん、胸痛、心筋梗塞、脳梗塞、心停止 は 医師が診ます。 Main ERの方は、随時、医師2人にPAもしくはNP1人の計3人 ですが、明け方3時から 医師とNP/PAの2人きりになるので、 心停止やトラウマの患者さんが 同時に 二人以上来る場合は、Hospitalist(病院医)の先生かTrauma surgeon(外科医)が来るまで、自分達がケアします。
 私が仕事をしている先生達は、PA/NPのことをよくわかってらっしゃる方が多く、PA・NPとして仕事するには いい場所です。
 
勤務状況

ER勤務は 週に何日と言うのは、まちまちで、12時間勤務で、1ヶ月で、13-15日仕事です。 最高で 4日連続勤務ですね。4日目は かなりへばってます。体力かなり使います。

無給残業ということは ないですね。 うちの会社は 仕事した分 お給料でます。(ERと契約しているNP/PA に優しい会社です)。

(緒方注:ノールさんは、病院で働くのでなく、病院が使っているNP/PA派遣会社からお給料をもらっているようです。このような雇用形態は、看護師でも、NPでも多いです。医師では比較的少ないと思いますが。)

PAとして やりがいを感じること

医者と違い、 できるだけ、簡単な患者を診るので、患者さん、家族との時間が 医者よりも、少しだけ、長く過ごせます。 その分、患者さんは 喜ぶし、PA/NPに 診てもらっても、満足なさってるみたいですね。 その時に、”話聞いてくれて、ありがとう。 あなたが 私の先生で、診てくれてよかった。” この一言聞くと、1日中 笑顔になれます。

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(以下、緒方)
最後のやりがいについては、全く同感です!

PAの仕事などについて、ノールさんへの質問などがある方は、 teamiryou@mail.goo.ne.jp までメールしてください。

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米国PAについて(カテゴリー)

PA歴史年表ーどうやってPAの教育と在り方が形成されたのか?

2009年02月18日 21時38分00秒 | 米国PAについて
PAの歴史を知るには便利なPA年表を、慶應大学院健康マネジメント科の学生のR.E.さんの卒業論文から提供していただきました(ありがとうございます!)。一部NPの情報も入っています。

ぜひ、下のダウンロードのページから、「PA年表」をクリックしてみてください。
ほかではなかなか手に入らない情報が、わかりやすくまとめてあります。見るためには、PDFが必要です。

ダウンロードのページ

ベトナム戦争に、医師不足という背景の中で、PAを育てていった医療従事者(医師)がいて、発展していったのですね。
医師会や、米国科学アカデミーがPAの教育に関わっていくところが、大変興味深いです、

また、日本にも医専があった、とも書いてありますね。Rさんの論文を読むのがとっても楽しみです。

本当に貴重な情報をありがとうございます!

ダウンロードのページ


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PAの教育

2009年02月12日 23時55分16秒 | 米国PAについて
ユタ州で胃腸科のPAとして活躍するYuki Rosenkoetter(ロゼンコエッター 由紀)さんから、下のようなPAに関しての投稿を頂きました。

救急救命士の資格を取り、医療現場で働きながら必要科目を取るというのは、PAく目指す多くの人がやることで、大変いいことだと思います。

また、日常の仕事の様子についてリポートしてもらいたいと思います。

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PA PROGRAMはほとんどのところでは修士課程ということで、4年大学を卒業し、またPREREQUISITEという必要な授業を受けてから、APPLYできるようになっています。

私の場合は、BEHAVIORAL SCIENCE AND HEALTHの BS DEGREEをとってから、1-2年後、prerequisiteの授業 を 取りながら、EMERGENCY MEDICAL TECHNICIAN の資格を取り、そしてMEDICAL ASSISTANT として、クリニックでしばらく働いてから、APPLYしました。英語が母国語でなければ、TOEFLを、先に受けなければAPPLYできません。

PA PROGRAMもいろいろあって、学校にもよりますが、私が行ったUNIVERSITY OF UTAH PA PROGRAM(UPAP)では、PRIMARY CARE MEDICINEのトレーニングを強調していました。卒業後は国家試験を受け、そして州別のライセンスを取りPRACTICEを始めます。

国家試験も一度受けたら終わりというわけではなく、ライセンスを維持するためには、2年内に100時間のContinuing Medical Educationを受け、それに6年ごとに国家試験をまた受けなければなりません。

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以下、緒方

PAは、2年間の修士号を経て、国家試験を通らなければいけない。

卒業後、レジデンシー(インターン)をするのは3-4%とごくわずかで、多くは直接就職してON THE JOB TRAININGとなる。が、手術などの分野では、経験がないと雇ってもらうのは難しい。

修士号の前の学士はなんでもいい。ただし、学士の最中が、学士所得後に、必要最低限の科目は取ってなければいけない(生物A&B, 化学A&B, 有機化学 など、学校によって違う)。

多くの人は、社会人として働きながら、PAになりたいと決めたら、夜間のcommunity collegeなどでこれらの科目を取ってから受験する。(上のYUKIさんの記述も参考)



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PAの役割

2009年01月18日 14時04分57秒 | 米国PAについて
日経メディカル12月号にとってもわかりやすい、楽しい、周術期PAに関しての記事が出た。
会員登録(無料)しないと読めないが、これだけでも登録する価値あり!おすすめだ(上をクリック!)

上の記事を書いた外科医の方のブログにも、
PAに関してのコメントがある。こちらは登録不要。

また、米国PA協会のサイトで、PAの説明が詳しく載っている(英語)。

PAの提供する医療の質については、
こちらの文献リスト
をご覧いただきたい。

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PAと他職種の関係

2008年10月28日 19時42分07秒 | 米国PAについて
PAと医師との関係について

(メールからの抜粋なので、「添付参照」と書いてあるのはこのためです。その「添付」の書類に興味のある方は、メールをください。)



PAは全員が医師の助手ですから、全員が医師の監視下で働きます。

しかし「監視下」の意味も大きく取られていて、外来では、NP, 医師、PAと全く並行して患者さんを診ています。医師がいなくても診られるのです。

ベテランのPAの人は(NPもですが)医師と同じように複雑な患者を診ますし、新卒のPAがかぜや簡単なアレルギーなどを診るのも新卒のNPと同じです。処方もNPと同じように、医師が見ていなくてもできます。
ただし、医師はPAのカルテにCOSIGNをしなければいけないので、一日の終わりにカルテをどかっとPAが医師の机において、医師がすばやくサインしていくのもよく診る光景です。

PAはご存知のように病院内で多く働いていて、NPと同じように医師とチームを組んでやっています。NPと違って、PAは手術のアシストもできます。

PAと医師との意見が食い違った時、医師の意見が通ります。PAは開業はできません。

要するに、手術のアシスト以外、医師との関係という点から見るとちょうど医師の「監視下」で診療できるNPは似ているといえるでしょう。

実際にどういうことができるか?ということに関しては、例えばコネチカット州では曖昧で規定がなく、「医師の監視下で、医師ができると判断したものなら」だそうです。そのおかげで、PAが色々なことを任されて、能力を証明し、曖昧さのおかげでPAの仕事の幅が広がったとか。しかし、カリフォルニア州などでは細かくできることとできないことが決まっており、PAのできること、また、患者の病状によっての振り分けなどに関しては西田先生がとてもわかりやすい記事を書いています(添付参照)。ぜひそちらを見てください。


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