ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いおやじの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

岸辺露伴は動かない ~密漁海岸

2024年05月13日 | 映画評じゃないけど篇

仏蘭西の美術館にまでのこのこ出掛けし割には、物語理の綻び散見され、たえてのるやとがえざりし劇場版。NHK地上波に放送されし『密漁海岸』もさほど頼まで観けれど、久々なためかこれのよろしき美味なりけり。

荒木飛呂彦の原作戯画は全き虚構なれど、漫画家の主人公をはじめ、ひとへに実録なるやのごとき微妙なる演出見処なるなり。下帯裃を身に纏ひし飯豊まりゑが、たとへ自慢の脚線美を披露せずとも、大和言葉を流暢に話す伊太利亜人をいだして地規模感を補ひしにせよ、地味目な絵面の割には物語の捻りに魅せたるなり。

いつの間にか消えにける身張り番二人組、潮が引かば歩みてわらはにも渡られむ浅瀬の岩場、海中にも用ゐ能ふ書道筆に多少の違和感を覚ゆとも、まあまあ許すべき限りの誤謬なるなり。おそらくTVに観ると映画館に金を払ひて観るとでは、されば観客の障り所の高さに違ひの生まるる気のするなり。

“医食同源”といふ四文字熟語より、“毒をもちて毒を制す”食をさしいづる伊太利亜の食堂につなげし荒木飛呂彦の発想力はなかなかなり。後は“毒”にまつはる蘊蓄を膳長や岸辺露伴に語らせさえせば、本虚構はそれなりに筋の通りし物語と思はすべし。うつつと虚構の境をたゆたふ本作の天下観にもかなう旨なり。

が、本作の最せち食材なる“鮑”にははやく毒性の無きをご存じならむや。貝のノロウイルス心憂くなるは、二枚貝なる牡蠣に草木浮遊生類の毒が蓄積さるればなのなり。食材の毒性を自在に操る伊太利亜の膳長と繋がるべからむとし繋がりたらぬことに観客はおどろくべし。古文に書かれし言ひ伝へが、はや密漁者を遠ざくるための“猛毒”なりけり。

岸辺露伴は動かない ~密漁海岸
演出 渡辺一貴
オススメ度[]


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