アーカイブ『市民派アート活動の軌跡』

「アートNPO推進ネットワーク通信」
小冊子「アート市民たち」

展覧会挨拶 大倉宏氏(美術評論家・砂丘館館長)

2016年04月06日 | YTアートコレクション
『“静謐感”・山下コレクションの声』

 山下透さんとお会いしたのはいつだったか。はっきり思い出せないが、「アートNPO推進ネットワーク」という組織を立ち上げようとされていた時期に、いろいろご連絡いただいたのを思い出す。細やかな連絡の取り方に、いかにもビジネスの世界で生きてこられた人の仕草を感じた。「アートNPO推進ネットワーク」は東京の美術コレクターの方々をコアとして生まれた小組織で、共通する作家のコレクションを持ちより展覧会を開いたり、他地域の画廊に作家を推薦紹介するなどの活動を数年展開し、今は小休止しているが、その活動は「市民派コレクター」という新しい響きの言葉の登場と平行して、時代を先取りする重要な動きだったと思う。

砂丘館でのコレクション展をお願いし、久しぶりに東京でお会いした山下さんは髪も短くなり、心持ち日焼けして元気そうだった。コレクションを置くマンションの一室をサロンにして、美術史家を招き少人数参加の西洋美術史講座を定期的に主宰し、近くイタリアにその仲間で旅行するとのこと。目が輝いて、魅力的だった。ビジネスの世界(会社人生)をしっかり生きてきたこと、ビジネスから離れて行ってきたことがひとつに、自然なかたちで繋がって山下さんの今の幸福を作りだしているようだと感じた。

その山下さんの絵画コレクション(の一部)に触れるのは初めて。この小さなリーフレットができた後にそれらをじっくり見せていただくことになるだろう。送っていただいた写真に感じる印象を口にすれば、深い静謐感とも言うべきものが共通して感じられる。個々の作り手の声である絵が繋がり、重なって、それらを見、感じたもうひとりの「見手」の感性がホログラムのように浮かび上がる。テーマでなく、個人の目で、心で集められたコレクションの味わいだと思う。(大倉宏)
 


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