公害=香害?
歳を取るにつれて、体随所の感覚が鈍くなる。
嗅覚もその一つかと思っていた。
先日風呂で使う石鹸を、液体洗剤から固形石鹸に変更した。経済的な理由からだ。
当初ミルク石鹸を使ったが、臭いがほとんどしない。頼りない。
「そうだ!あれだ!」
昭和20年代、ガラジー若かりしおり、アメリカ文化をギンギラギンに漂わせて進駐軍から流れてきた石鹸「Lux」。あの強烈な香水臭が頭に閃いた。
探してみると幸いドラッグストアの一隅に「Lux」は鎮座していた。
早速、6個入りを安価に購入。
あの香水臭を期待、ワクワクして使ってみる。
あれれ!こんなはずではなかったぞ!
ほとんど臭いがしない。つつましやかな日本の石鹸の香すらしないのだ。
ウーン、80代も過ぎて、90代に喃々とするガラジー、わが嗅覚はかくも衰えたか。
ついでに味覚も衰えると、いっぱしの新型コロナ患者候補になるのだが……その気配はない。
あの豪華絢爛とした石鹸の香はどこへ行ったのか?
かくしてガラジーのインターネットサーフィンが始まった。
するとすぐに公害ならぬ「香害」という用語に遭遇した。
世の中では香害についてけたたましく論議されているらしい。
知らなんだ、知らなんだ。
推察するに、多分その余波で、石鹸から様々な香料が一斉に身を引いていったのだろう。
ガラジーの嗅覚が衰えただけの話ではなかった。
原則として、ガラジーは各種人口添加物をあまり気にしない。
健康に有害と言われても、余命いくばくもないこの体、何を口にしようが、体に使おうが、誤差の範囲ではないか?
有害物質と言われる色素でデコデコに色付けされた駄菓子だって、味がよろしければ平気で食べる。寿命が縮まってもこの歳だ、誤差の範囲ではないか?
懐かしいなぁ……
あの豪華絢爛たる旧「Lux」の香!
帰らぬ昔日の夢なのか!
昔日を偲びながら今日もまた臭いのしない石鹸でゴシゴシ体を洗っている。
なんとも無味乾燥な時間ではある。
(以上)