フジツカ村

好きな時に好きなことを語るブログ

「映画おそ松さん」感想

2022-03-27 20:07:00 | 赤塚不二夫
「映画おそ松さん」を鑑賞してきた。
どのような作品かは、この記事を読みに来てくれている方はほぼわかっているだろうし概要については多くは語らないが、僕としては「どうなることやら」という気持ちが強かった。
以下、感想を書いていくが、ネタバレ注意である。





全体の印象としては、良くも悪くもこれも「おそ松さん」らしいのかなぁという気はしつつ、満足いく内容だったかと言えばそれは否定せざるを得ないな、といったところである。
全く楽しめなかったわけではないのだが…。

全体の流れとしては、老夫婦の養子になるべく奮闘する6つ子たちだが、色々やるうちに養子なるという目的からも「おそ松さん」という作品からもどんどん逸脱していき、それをなんとか終わらせようとする…というようなもの。
本編開始からしばらくは実写ながら「おそ松さん」の雰囲気もよく出ていて普通に笑ってしまった部分もいくつかあったわけだが、話が逸脱している部分が非常に長く(尺的にはむしろここがメインだったようにも思う)かつ起こっていること自体も多くいつどんな風に収拾がつくのかも全くわからなかったので、はっきり言って退屈さを感じてしまった。話が本筋に戻った後も意外な展開が続いてそこは見ものだったとはいえ、テンポ感は微妙でダラダラした印象を受けてしまった。

型破りさという意味ではこれもまた立派に「おそ松さんらしい」内容だったのかもしれないが、本質的にはあまり「おそ松さん」の楽しさを感じることができず、僕としてはどうしても物足りなさを感じてしまった。
個々に見るとハルのエピソードや十四松のタイムスリップなど興味深いものはあったし、かなり色々あった末に全てを合理的に(と言っていいのだろうか…)片付けて最終的に振り出しに戻ってくる展開も上手いものは感じた。
個人的評価で言えば、尺を取りすぎたのが良くなかったのだろうか。


そして、赤塚不二夫作品、「おそ松くん」を原作とした作品として見ても、期待通りの内容だったとは言い難かった。
僕は単体のアニメ作品としても「おそ松さん」を楽しんではいるが元来は赤塚不二夫ファンであり、おそ松さんを追い続けている理由も根本的にはそこにある。だから、「おそ松くん」の派生作品としての要素も少なからず欲していたわけだが、その辺り殆ど感じることができず残念だった。6つ子が養子になるという展開はおそ松くんの「こづかい毎日五万円」がベースになっているのではとも噂されていたが実際見るとそんなに繋がりは感じなかったし。
そもそも本作は、「おそ松さん」が元々「おそ松くん」から派生したアニメでありながら、そこからさらに派生した作品であり、パンフレットで関係者等が述べているように「原作」として見られているのはアニメおそ松さんであり、意識の対象も殆どそこのみ。僕にとってはあくまでおそ松くんの一派生作品であるおそ松さんもこんなに大きな作品になってしまったんだなと改めて実感しつつ、寂しさも感じてしまった。
「おそ松さん」のファンサイドでも、原作ファンだとか原作再現がどうとか色々なことが言われているが、こちらとしては今更というか、「あなた方もそちら側に回ることがあるんですね」というか。
こちらは2015年以降、概ねそういう気持ちでずっと「おそ松さん」を見続けているのだ。少しは気持ち、わかってもらえただろうか。

おそ松くんの派生作として見て特別不快感を覚えなかっただけ良かったのかもしれない(ハタ坊についても前情報で少し知っていたからかそこまで気にはならなかった。自分のよく知るハタ坊だとは認識できなかったからというのもあるかもしれない)
そんな中で僅かに確認したものでは、パンフレットによると赤塚先生の写真(実写なので本物)は変わらず松野家にあったらしいし、庭にはニャロメ風埴輪もあったとか。映画で実際には気付かなかったがこれは嬉しい事実だ。
また、監督は赤塚イズムを大事にしていたようで、そこも好感が持てる。

実写という試みや各キャラクターについても触れておこう。
舞台などをカウントしなければおそ松さんの実写による映像化は史上初めてで、本編でもメタ的に自虐的にかなりネタにされていたが、個人的にはこれは嫌いじゃなかった。「深夜!天才バカボン」ほどしつこくなかったし、芯になるストーリーはしっかりあったし。

6つ子は各々のキャラクター再現はほぼ問題なかった。自分はSnowManのメンバーをちゃんと覚えてるわけではないので、服装などの特徴が違うと名前を呼ばれないと何松だかすぐにはわからないパターンも結構あり、ある意味で「誰が誰でもおんなじざんす」が実現されているなぁと感じてしまった。
ただ、キャラクターそのものとして見るより、あくまで「SnowManが6つ子を演じている」という風にしか認識できなかったのは致し方ないところか。

松代と松造も雰囲気が出ていてなかなか良かった。
松代の方は比較的よく知っている方なので見てすぐわかったし松造も名前を見たら有名な人じゃん!となった。光石研さんはいつかのネタでトド松役だったことがあるので、トド松から松造になったと言えるのか。

トト子・イヤミ・チビ太の3人は意外にも(?)かなり重要なポジションだった。狂言回し的な役割で映画全体や物語を調整していたほか、彼らの存在があったからこそ「おそ松さん」としての、ひいては「おそ松くん」の関連作品としての体(てい)が保たれていた。そして3人とも、キャラクターの再現としても演技としても見事だった。トト子は可愛さも保ちつつしっかりはっちゃけるところははっちゃけていたし、イヤミもイメージそのままでさすがベテランといったところで、チビ太も女性が演じるということでどうなるんだろうと思っていたがちゃんとチビ太になっていて流石だなと思った。このお三方がいなかったら僕のこの作品の評価は一層厳しいものになっていたと思う。

ハタ坊は加藤諒さんが演じている点も含めサプライズ登場だったと言えそうだ。前評判でヤバいことを聞いており実際キャラ崩壊と言われても仕方ない感じだったが、僕としては「せっかくだからハタ坊(っぽいキャラ)も出してみよう」みたいな感覚で名前と特徴を借りただけ、くらいに思ってハタ坊本人と認識しなかったからか、あまり気にはならなかった。せっかく出すならもっといい役にしてくれればよかったのに、と思わないでもないが。

ほか、鑑賞中にも一部気付いたが、栗原類さん、厚切りジェイソンさん、忍成修吾さんまで出演しており、脇役まで何気に豪華キャストだ。
主題歌「ブラザービート」もなかなか好みだ。


長くなったが、書きたいことはだいたい書けた。
個人的には、完全につまらないとも、すごい駄作だとも思ったわけではないが、少なくとも高評価に値するものではなかった。これは僕が求めていたものとは違っていただけだろうとは思うし、頑張っていたとは思う。繰り返し見たらまた印象も変わってくるかもしれないが、高い映画代とそこそこの時間をかけてすぐそうしたいとも思わないので、また円盤なり配信なりを待ってみよう。
今年はまだ新作アニメ劇場公開も待っている。こちらはどうなるだろうか。

「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」感想

2022-03-20 13:32:00 | ドラえもん
「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」を鑑賞してきた。
丸1年延期となってしまったので、まさに待ちに待ったという感じだ。
リメイク映画としても(結果的に)6年ぶりで、その分期待が高まっている部分もあった。
以下、思いつくままに感想を書いてみる。
一応、ネタバレ注意。
(ブログからドラえもん映画の感想を書くのは初めて…ブログを有効活用しているなぁと感じる所存である。)








最初に全体を評価すると、とても良かった、かなりうまくまとまっていた、期待を裏切らない内容になっていたと思う。
僕が観に行ったのは2週目なので、他の人の感想を(ネタバレにならない程度に)見る機会もそれなりにあり、また予告などを見ても、今回はかなりアレンジ多めで別物感が強いのかなと思っていた。
実際にも、アレンジやオリジナル要素は多く序盤から終盤まで見たことのないシーンは結構あったのだが、大まかな流れは変わっていなかったし原作通りの部分も少なくなく丁寧に作り込まれていたので、その良さは損なわれていなかった。全体として、オリジナル要素と原作要素のバランスが非常に良く双方のリンクも上手かった。
ほか、各登場人物の心情描写がより掘り下げられ深みが増していたこと、アレンジによりそれぞれのキャラがより立つようになっていたこと、ビジュアル面でも圧巻なシーンが多々あったことなど、良いと思った部分は枚挙にいとまがない。


パピは出立ちやキャラクターデザインなどを見ると原作や旧映画と比べて大人びた印象を受けるが、寧ろ本作ではロコロコの台詞にも象徴される通りその中に見え隠れする「年頃の男の子」としての側面が印象的で、より感情移入しやすくなっていたと思う。「少年大統領」という部分は原作や旧映画では少し忘れがちだったこともあり、少し意外性もあったがそこをクローズアップしたのはさすがだ。それでいてやはり演説のシーンなど決めるところは決めるあたりかっこいいし、純粋にその内容も心に響いた。あそこも原作にあるシーンをアレンジ&膨らませたものだが、映画のテーマを明確に認識させる意味でも見事だった。

ロコロコも原作や旧映画の時点で大好きなキャラだが今回もコメディリリーフとして大いに楽しませてもらった。梶裕貴さんはなかなかのハマり役だ。骨で黙らせるくだりも度々繰り返されるギャグとして良いアクセントになっていた。そしてやはり、単なるギャグキャラにとどまらないのも魅力だ。

ピイナは本作のオリジナルキャラ。その意味で本作を象徴するキャラクターともいえる。物語中でも重要な位置にはいたものの所謂メインゲストキャラではなかったが、逆にそのくらいの匙加減がちょうど良かったと思う。先述の通りパピのキャラクターの掘り下げやより感情移入させるための存在として非常に効果的だったし、ピイナ自身も女性としてヒロインとして、好感の持てるキャラクターだった。


ゲスト出演はピイナの松岡茉優氏とギルモア役の香川照之氏、そしてミルクボーイの2人。ギルモアは本業の声優と比較しても遜色ない声と演技で素晴らしかった。言われなければ気づかなかっただろう。ほかの3人も、声質的にちょっと気になる部分はあったが、演技は自然だったので、殆ど違和感はなかった。実はミルクボーイはどのキャラを演じているか鑑賞前にちゃんと覚えていなかったのだが、実際観るとわりとわかりやすかった。

個人的にかなり気になっていたのがオープニング。「宝島」と同じ布陣だった前作はある意味案の定といった感じだったが、本作でもOPにあたる部分はあったものの「歌」としては存在せず、本編と地続きの映像に専用BGMとクレジットが重ねられていた。今後もこのスタイルで、TV主題歌が映画でもOPとして流れる可能性は低いんじゃないだろうか。
映画でも、テレ朝チャンネルでも、映像ソフトでも(これは自分では未確認、伝聞情報のみ)使用されない現TV主題歌…いかなる扱いなのかが、わかってきた気がする。

そして次回作だ。あの映像だとやはり、「雲の王国」リメイクか!?と思ってしまった。最近ドンジャラ村のホイもあったことだし。しかし本当に雲の王国ならもっとそれを思わせる事物がありそうだし、代わりに飛行船などが目立っていたのも気になる。「雲」や「天空」をモチーフにしたオリジナル作品と考えた方が良さそうだ。



本作は結果的に鑑賞まで1年近く待つことになってしまったが、それほど待つだけの価値は十二分にある作品だった。原作期読者として原作の新たな映像としても、新作ドラえもん映画としても楽しめたので、リメイクとしてひとつの理想の形が示されたように思う。個人的には、アレンジも多くありつつ原作の雰囲気や魅力もほぼそのままなことが気に入った。多くの人に勧められる映画だった。
今後にも期待したい。