もう30と数年前の成人祭のことを、僕は今でもはっきりと思い出せる。
僕は盲学校中学部の1年生で、このお祭りにも参加していた。最初に餅つきがあって、寄宿舎に泊まっている僕らは順番に餅をついていく。夕ご飯の後は、成人した学生さんたちを祝う会となり、お祝いの言葉たちの後で 、その年は6人の先輩たちが次々と決意表明みたいなかんじで、成人した感想を述べていった。中学1年の僕にとってはまだまだ先のことだし、ふーん、みたいなかんじで、ぼんやり聞いてた。
そこで現れたのがKさんだった。彼は、「僕は話すのが苦手なので・・・」と言いながら、ちょっとした間があったのでどうなるのかと思っていると、「なので、歌います」と言った。歌うって?どういうこと?彼はギターを準備し始めて、それを荒っぽくストロークしながらハーモニカを吹き始めたのだ。その音は、僕がまだ体験したことのない興奮を連れてきた。やがて彼が歌い始めると、僕の体はもう宙に浮いているみたいで、彼の歌の世界でただよっているかんじだった。不甲斐なかった今までの日々、これから自分を変えていきたい気持ち、彼が視覚に障害を負ってから今までの経験がぎっしりつまっているようなオリジナルの歌だった。声はとてもワイルドで、上手じゃないけれど、飾らない裸の声は僕の心の奥底までとどいてきた。
この瞬間に、僕が一生をかけてやっていきたいことが明確になったのだ。僕がやりたいのはこれだ!自分の言葉で歌うこと、自分が感じたままを表現していくこと、そしてそれを誰かに伝えること。悲しいできごとや経験さえ、歌にすれば前向きな感覚に変えられる。魔法のようだ。そして、彼の歌が終わった時、大胆にも、「僕にはきっとできる」って感じた。
話はここから現在となります~、そんな大阪北視覚支援学校寄宿舎の成人祭にて歌うこととなった。成人をむかえたNさんからの依頼、僕に歌ってほしいとのこと。彼女はあんまの勉強をしながら歌を歌っている。僕にとっては思い出深い成人祭、お祝いにかけつけた。
そうそう、1週間前には、彼女からもうひとつの依頼が・・・、いきものがかりの「ありがとう」をピアノで伴奏してほしいという。彼女はいつもカラオケで歌っているので、生の演奏で歌ってみたいのだそうだ。二十歳の記念にと、音源を聞きながら練習してみた。すごくいい曲!でもこのバンドサウンドをピアノでやるのはなかなか難しい。これはかなりの大役!
仕事を終えて、ぎりぎりの到着。朝からトラブルもあったので、精神はかなり疲れていた。さっそくにNさんとありがとうを合わせてみた。キーもサイズもCDのとおりに弾けるようにしていたので、一発で合わせることができた。
うれしい再会もいくつかあり、こんなふうにしているうちに僕の気持ちもほぐれていった。
彼女の周りにいる友人、先生、そしてお母さま・・・、お祝いの言葉が続いた。愛されているんだなあ、大切にされているんだなあ、彼女の成長をたくさんの方が喜んでいる、素敵なことだと感じた。
僕の出番がやってきた。15分の時間があるらしいので、お祝いの言葉をかねて、自分と音楽との関わりについて話した。そして、音楽との関わりを大切にしていってほしいなという願いをこめて、「情熱」を歌った。
Nさんとのセッション、「ありがとう」も無事終了!大役を果たした~!ほっと一息。
その後はおいしいお酒を飲みながら、とある先生と語った。いろんな体験や人との出会いこそ財産、僕はそれらをいっぱい盲学校や寄宿舎でいただいてきた。そして、生きていくことのたいへんさ、好きなことも、苦しいことも、受け入れながら進んでいける強さとしなやかさの必要性、あらためてがんばっていかなければと思えた。
Nさんには、どうか自分の歌をみつけてほしい。歌いたい歌を歌っていってほしい。そして、それを支えていくには、たくさんの苦しさを飲み込まなきゃならない。それもまた楽しい、人生が与えてくれる経験たち、そうやって人は深く感じられるようになる。また新しい歌が欲しくなっていく。そんなことの全ては、誰かとのつながりの中でできること。与えられた時間はとても短い。今やれることを 、精一杯に!
さあ、僕もまたがんばっていかなくちゃ!
僕は盲学校中学部の1年生で、このお祭りにも参加していた。最初に餅つきがあって、寄宿舎に泊まっている僕らは順番に餅をついていく。夕ご飯の後は、成人した学生さんたちを祝う会となり、お祝いの言葉たちの後で 、その年は6人の先輩たちが次々と決意表明みたいなかんじで、成人した感想を述べていった。中学1年の僕にとってはまだまだ先のことだし、ふーん、みたいなかんじで、ぼんやり聞いてた。
そこで現れたのがKさんだった。彼は、「僕は話すのが苦手なので・・・」と言いながら、ちょっとした間があったのでどうなるのかと思っていると、「なので、歌います」と言った。歌うって?どういうこと?彼はギターを準備し始めて、それを荒っぽくストロークしながらハーモニカを吹き始めたのだ。その音は、僕がまだ体験したことのない興奮を連れてきた。やがて彼が歌い始めると、僕の体はもう宙に浮いているみたいで、彼の歌の世界でただよっているかんじだった。不甲斐なかった今までの日々、これから自分を変えていきたい気持ち、彼が視覚に障害を負ってから今までの経験がぎっしりつまっているようなオリジナルの歌だった。声はとてもワイルドで、上手じゃないけれど、飾らない裸の声は僕の心の奥底までとどいてきた。
この瞬間に、僕が一生をかけてやっていきたいことが明確になったのだ。僕がやりたいのはこれだ!自分の言葉で歌うこと、自分が感じたままを表現していくこと、そしてそれを誰かに伝えること。悲しいできごとや経験さえ、歌にすれば前向きな感覚に変えられる。魔法のようだ。そして、彼の歌が終わった時、大胆にも、「僕にはきっとできる」って感じた。
話はここから現在となります~、そんな大阪北視覚支援学校寄宿舎の成人祭にて歌うこととなった。成人をむかえたNさんからの依頼、僕に歌ってほしいとのこと。彼女はあんまの勉強をしながら歌を歌っている。僕にとっては思い出深い成人祭、お祝いにかけつけた。
そうそう、1週間前には、彼女からもうひとつの依頼が・・・、いきものがかりの「ありがとう」をピアノで伴奏してほしいという。彼女はいつもカラオケで歌っているので、生の演奏で歌ってみたいのだそうだ。二十歳の記念にと、音源を聞きながら練習してみた。すごくいい曲!でもこのバンドサウンドをピアノでやるのはなかなか難しい。これはかなりの大役!
仕事を終えて、ぎりぎりの到着。朝からトラブルもあったので、精神はかなり疲れていた。さっそくにNさんとありがとうを合わせてみた。キーもサイズもCDのとおりに弾けるようにしていたので、一発で合わせることができた。
うれしい再会もいくつかあり、こんなふうにしているうちに僕の気持ちもほぐれていった。
彼女の周りにいる友人、先生、そしてお母さま・・・、お祝いの言葉が続いた。愛されているんだなあ、大切にされているんだなあ、彼女の成長をたくさんの方が喜んでいる、素敵なことだと感じた。
僕の出番がやってきた。15分の時間があるらしいので、お祝いの言葉をかねて、自分と音楽との関わりについて話した。そして、音楽との関わりを大切にしていってほしいなという願いをこめて、「情熱」を歌った。
Nさんとのセッション、「ありがとう」も無事終了!大役を果たした~!ほっと一息。
その後はおいしいお酒を飲みながら、とある先生と語った。いろんな体験や人との出会いこそ財産、僕はそれらをいっぱい盲学校や寄宿舎でいただいてきた。そして、生きていくことのたいへんさ、好きなことも、苦しいことも、受け入れながら進んでいける強さとしなやかさの必要性、あらためてがんばっていかなければと思えた。
Nさんには、どうか自分の歌をみつけてほしい。歌いたい歌を歌っていってほしい。そして、それを支えていくには、たくさんの苦しさを飲み込まなきゃならない。それもまた楽しい、人生が与えてくれる経験たち、そうやって人は深く感じられるようになる。また新しい歌が欲しくなっていく。そんなことの全ては、誰かとのつながりの中でできること。与えられた時間はとても短い。今やれることを 、精一杯に!
さあ、僕もまたがんばっていかなくちゃ!