昨日、元NHKキャスターの磯村尚徳氏の話を聞いた。氏は永らく海外特派員を歴任、退職後パリ日本文化会館の館長を永く勤め、国外から日本を観てきた。よその国の眼に我々日本がどう映っているのか、また、我々自身、当たり前のように思い気付かない、世界に自慢できる、すばらしいことなどを紹介してくれた。
ワシントン支局長時代、広い敷地に、白亜の3階建て、30年前だったが、冷暖房完備で快適でゴージャス、あたりからも羨ましがられるほどだったとのこと。
反対にパリ駐在ではコンドミニアム(アパート)住い、しかし、近くにエッフェル塔、やルーブル美術館、エリーゼ宮など、世界に誇る文化遺産の中での暮らし、機能よりも、心の豊かさを満足させ得るものは、伝統や文化だと感じたと言う。
パリっ子は何百年も前(景観保存上、建物の改装は禁止されている)の使い勝手の悪い、狭いアパートに住いし、時には田舎の別荘で自然と戯れバランスをとっているのだそうだ。憧れの地に暮らすのは実はたいへんな我慢が必要なのだ。
これに似たような現象で我が国でも、最近京都で1間のマンションが売れているそうだ。散歩がてらに先斗町で舞妓さんに会うなどいいではないか。絵になる美しさが必要。多様な遊び心を持つことが豊かさと感じられるようになった。
食に眼を転じれば、米国人は生きるために食べる、フランスや日本人は食べるために生きるなどと比喩されるが、パリに800軒、ウイーンに200軒の寿司店がある。天ぷら屋、ラーメン屋もいっぱいある。そして、何時も現地の人で賑わっている。それほど日本食は世界中で人気なのだ。
豊かさはプロセスが大切、日本では最近、ペットボトルに入ったお茶が人気のようだが、イギリスやフランスでは、安易に出来合いの物で間に合わせずに、手間暇かけて自分で煎れる、そのプロセスが楽しく、心豊かにさせてくれるのだ。最近特に、便利だが豊かでないものが多くなった、これを称して「マクドナライゼーション」と言われる、説明の必要はないと思うが、敢えて説明すれば、マクドナルド化とでも言おうか。
お金が無くても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人。江戸時代庶民は、お金が無くても、他の造形物などで風情を味わう”借景”や、四季折々の楽しみ方を心得て、心豊かに暮らしていた、現代は、物が豊かになって、何でも物や、金に依存するようになり、お金がない事が、すなわち全てが貧しいと極めつけるようになったのではと反省している。
豊かさとは、「人間を、人間たらしめるもの」に尽きると思う。
日本人は、自虐主義的傾向が強いようだ、マスコミをはしめ、何でもかんでも、日本は悪いと世界に宣伝しているような気がする。少し悠然と構えようではないか。
英国BBC放送が伝えるにはメリーランド大学で実施した(世界35カ国、17000人に)「どこの国があなたにとって望ましいか」とのアンケートに、驚くなかれ、日本は3年連続でトップクラスを維持しているという、世界にはこんな見方もあるのだと、一方的な考えに偏らない、公平な観かた、広範な視点を持つことが大事であると思う。その為には、いろんな処に出かけて実際に体験してくることや、考え方の違う人達の意見を聞き、その上で比較判断することなどが大切ではなかろうか。