西高東低の冬型が強まる中、房総は冬晴れが続くと思いきや、夜になると雲が空にたなびいた。冬になると強い西風と北まわりの風と南からの海風とが絡み合って相模湾付近に「房総前線」が突如、出現する。その雲は房総半島だけでなく関東一円を曇らせてしまうこともある。
クリスマス・イブの24日未明になってようやく九十九里にも快晴夜が訪れた。冬至は過ぎたが日の出は年明け始め頃が一番遅くなるので夜は長い。しかも今、未明の闇夜の空には肉眼では見えないながらも8等から12等級のほうき星がいくつも散在している。いつもよりも時間をかけて、そうした彗星を一つずつ望遠鏡の視野に導入して撮影していく(写真上)。
26日にはテレビの報道やドキュメント番組に星の映像を提供しているカメラマンさんが早くから海岸に来て撮影態勢に入っていた。日の入り後から翌日の夕方まで夜空の星景も入れて太陽の一日の動きを追っているとのことだった。厳冬期の海岸でほぼ24時間に及ぶ撮影には驚くばかりだった。
年末近くになってまた「房総前線」が数日おきに現れるようになった。特に30日未明は自宅の船橋では快晴、気象衛星画像でも夜半まで房総南岸にわずかな雲が見えただけだったが、海岸に着いてみると南から湧き出た雲の帯が途切れることなく空を覆っていた。全く星を見ずに薄明開始を待つこともなく帰路についた。
年始も雲の襲来をかわしながら未明にひっそりと輝く彗星たちを追った。4日未明、しぶんぎ座流星群を観望する傍ら、「かんむり座」の王冠の中で青いコマを蝶のように広げながら輝くZTF彗星(C/2022E3)が印象的だった(写真上左)。