たまおの星便り-星海原の航海日誌。  

日毎夜毎、船橋から房総九十九里へと繰り出し、星空を駆け巡る観測日誌。

・2011/5/21 光害ベルト地帯で宵闇のデジカメ撮影。

2011-05-29 | たまおの星便り

 実家の茨城に行った土曜の夕方、青空が広がった。いつもなら栃木県の山里まで60キロほど遠征するのだが月が22時半には昇ってくるのと夜半前から曇りの予報だったこともあって出発をためらっているうちにすっかり夜になってしまった。
 しかし天気予報は完全にはずれ、透明度はよくないがますます天気は安定してきた。梅雨前の貴重な週末の晴天を見逃すのは、いかにももったいないので20時過ぎに止む無く実家から車で5分の畑の中に出発した。関東平野の光害の真っ只中、車や灯火が少なくなる未明ならまだしも夜半前の宵の空で星を見たことはここ何年も絶えてなかった。
 例によって光害の激しい空では視野の明るいドブソニアンでは暗い天体はほとんど見えないので一眼デジカメの独壇場となる。月が出るまでの1時間半、主に北の空を狙って撮影する。これも毎度のことだが光害地帯では200mmF2.8で30秒前後も露光すると画像はカブリでほとんど真っ白になってしまう。銀塩フィルム時代ならこれで終わりだがデジカメではその後の画像処理でカブリの中から星像のコントラストをグンと高めることができる。
 左右はおおぐま座の同一視野の拡大。中央には11等星の系外星雲NGC2768が写っているが画像処理を施した右側ははっきりと銀河の広がりが見え、やや青みを帯びていることもわかる。バックグラウンドを暗くしたことで微光星も浮かびあがっている。2等星も見えない光害地帯で星空探検をすることは稀ではあるが、今はデジカメのおかげで10等級以下の深宇宙ものぞくことが出来るようになった。

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・2011/5/15 秋葉原で見つけたデジカメグッズ。

2011-05-27 | たまおの星便り

 満月と曇りが重なると次回の新月期に向けての準備に精を出すこと以外、天文屋はあまりやることがなくなる。そういう時に秋葉原のガード下や裏通りの電気雑貨ショップを材料集めにうろうろしたりする。
 有名な秋月電子の近くにある千石電商で前から探していたデジタル表示の温度計を探し当てた。価格は150円と格安だが、調べるとそもそも新潟の丸石という100均ショップの商品が流れて来たものらしい。


 ボタン電池一個付で表示も大きく、市販の安価なデジタル温度計はほとんど氷点下対応をしていないのに、これは一応、0.1℃刻みで-20℃まで計測可能とのこと。ただ、液晶がむき出しでいかにも華奢な作りなので展示用のビニールケースに通気口の細かい穴をいくつも空けてパッケージのまま屋外で使用することにした。
 問題は精度だが、液温計2個とデジタル温度計を冷凍庫に入れて-10℃前後で計測比較したところ平均値±0.5°くらいだった。値段の割にはまあまあかなと感じた。
 デジカメの長時間露光ではノイズ除去のためにレンズキャップをして露出時間と気温に対応したダーク画像を撮る必要がある。極寒の厳冬期にも計測できる温度計はデジカメ天体写真の必需品。今冬は100均グッズでもその役目を果たせるか試してみたい。

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・2011/5/4 北軽井沢、雨のち下山、独活(うど)三昧。

2011-05-09 | たまおの星便り

 昨日は夕方から雨模様、一時どしゃぶりとなった。雨を除けて32cmドブソニアンを車に片付けながら、電気に詳しい観測所オーナーに導入支援装置、スーパーナビゲーターの導通検査をしてもらった。 

 実は前夜未明の星空巡礼で9V電池ボックスの電圧が一時低下してから水平回転のエンコーダーの読取が異常値を表示するようになった。回転軸の接続部分やケーブル端子の緩みはチェックしたが問題なかった(写真左はナビゲーターと外部電池ボックス、海岸での塩害防止と保温のため手製の発泡スチロールケースに入っている)。本体(写真中)のカバーを開けて中の基盤を取り出し、テスターで8線端子の一本一本をマイコン部分(写真右)まで通電しているかチェック。結果はどこも問題なし。残るはマイコンの故障くらいしかないが、オーナーによると単純な構造なのでそれも考えにくいとのこと。仕方なくあれこれいじっていると、エンコーダーの水平軸の回転数設定が本来なら一周360度2160カウントのはずが、なぜか一周3カウント(したがって分解能120度)に変わっていることに気づいた。原因は電圧低下くらいしか考えられないが、ともかくこれで一件落着した。
 結局、雨は一晩降り続け、すぐ近くにある駿台学園天文台50cm反射の一般公開にも行けなかった。翌日は朝から雲が多いが晴れ。午前中に観測所に別れを告げ下山。途中、高崎に自宅農園を持つ天文屋の友人宅を訪問し、まさに採れたての独活
(ウド)をたくさんいただいた。船橋に帰ってから天ぷらや茎を湯通ししたヌタにしてビールの肴で平らげた。

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・2011/5/3 北軽井沢、黄砂のち晴れ。

2011-05-08 | たまおの星便り

 2日の午後、茨城の実家から、そのまま北軽井沢にある友人の別荘観測所に向かった。渡良瀬遊水池の土手から佐野バイパス経由で開通したばかりの北関東自動車道に入り前橋で降りて北軽井沢に通じる406号くだもの街道を西進した。折りしも大量の黄砂が中国大陸から飛来して赤城、榛名の上州連山は黄色く霞んで見える。長野原の玄関口、二度上げ峠からはいつもこの時期、冠雪した雄大な浅間山が一望できるが、今回は夕陽が黄砂色に染まり果てしなく広がる裾野も朦朧と消え入りそうに見えた(写真、左に浅間山と北軽井沢高原の夕景)。別荘観測所に着くと早速オーナーの愛犬、ヒメ(写真)とワカが出迎えてくれた。
 夜になって黄砂が薄くなり始め、空には星が輝き始めた。持参したタラノ芽や蕨に似たコゴミほかの山菜を天婦羅にし、茨城産の地鶏ローストやらを肴にまずは乾杯。夕刻遅くなって、晴れ渡った空をよそに飲み食いしているのももったいないので、「さんだゆう」を組み立て、久しぶりの北軽井沢の星空探訪に出航した。さすが千メートルを越える高原、低空以外は黄砂の影響はほとんどなく気温が5度以下にさがる。一通り春星座を航海したあと、未明に白鳥座の網状星雲を見るつもりで室内に戻って仮眠をとる。
 携帯の目覚ましで2時前に起床、観測所オーナーは熟睡しているようなので、起こさずに外に出る。気温はマイナス一度、空気はいよいよ冴え渡り、既に夏の銀河や白鳥座が高い。OⅢフィルター越しに32cm鏡の視界に白く浮かぶ網状星雲の微細なフィラメントに一人感嘆の声を挙げた。2時半過ぎになって別荘裏隣のオーナーさんが来訪。昨夜遅く柏市を出発したが、高速の渋滞にはまり未明になってしまったとのこと。しばらく一緒に星空散歩を楽しむが零下の寒さに根を上げてオーナーさんはほどなく退散、そのまま単独航海となった。3時半、薄明に浅間隠山の稜線がほのかに浮かび上がる頃に、20個を越える星雲星団巡りを終えた。

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・2011/5/2 濃霧の田園地帯から春の星雲星団。

2011-05-06 | たまおの星便り

連休中日の深夜、雨上がりの道を茨城坂東市の実家に向かっていると星が輝き始め、到着する午前1時頃にはすっかり雲が切れた。田舎とはいっても世界有数の光害地帯、関東平野のど真ん中、普通は4等星を確認できるかどうかの空。しかし雨後の晴天、思わず心が動き、畑の中のあぜ道で薄明までの二時間、急遽、撮影態勢に入った。光害の空では眼視では視野の明るさが増幅して極端に能率が落ちる。
 赤道儀をセットするうちに温度が下がり、この地帯ではごく当然に濃霧が立ち込めてきた。視界は50mあるかないか、おかげでコンビニや街灯の明かりは弱くなったものの低空の星がさらに淡くなってきた。少しは光害の少ない北の空のケフェウス座からカシオペア座など中高度にある星雲星団を撮影した。2時過ぎには霧も晴れ透明度もぐんと良くなってきた。後日、撮影画像を調べたら最微光星で14等星が写っていた。デジカメ画像は光害に強いことが改めて確認出来た夜だった。
(画像左から、散開星団NGC457、彗星のようなコバルトブルーが印象的な惑星状星雲NGC7662、明るく密集した散開星団Mメシエ52、200mmF2.8 35秒)

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・2011/4/30 去りゆく彗星、有明の月、そして余震。 

2011-05-05 | たまおの星便り
 震災の自粛ムードで始まったゴールデンウィーク初日、29日の夕方から快晴となった。余震は気になるが菜種梅雨の晴れ間は見逃せない。赤道儀の電源周りのテストもあり、30日零時過ぎに九十九里やや内陸部から出航した。
 海岸線から多少離れてはいるが、一応用心のために携帯ラジオでNHKの「ラジオ深夜便」を航海中にずっと流すことにした。朝の5時まで生放送なので地震や津波など何かあればすぐに情報が知らされるはず。
 南の風、気温8度、薄いモヤがかかったように星が鈍く輝き、4等星がやっと確認できる空にようやく昇り始めた夏の銀河も色あせて見える。やむなく既に高く昇った星座を探訪。やがて午前2時の時報が聞こえてまもなく「緊急地震速報、強い揺れに警戒してください」という無機質な音声がラジオから流れた。手許の携帯電話からは地震速報の警戒音は出ていないので震源はすぐ近くではないと判断し、とりあえずラジオの情報を待った。数分しても揺れは感じないのでそのまま観測を続行していると、震源は千葉県東方沖、銚子で
震度3、津波の心配なしと放送された。予想に反してかなり近い震源だったことに驚き、強震でなかったことにほっとした。
 3時前、既に近日点を過ぎ暗くなったC2011C1マックノート彗星がモヤの上に顔を出した。洋上からは黄色味を帯びた新月前の月が薄明の中を音も無く昇って来た。
 (写真左矢印はC2011C1マックノート彗星、200mmF2.8、100秒)
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