たまおの星便り-星海原の航海日誌。  

日毎夜毎、船橋から房総九十九里へと繰り出し、星空を駆け巡る観測日誌。

・2017/2/4(土)強風の太平洋上、未明の3彗星。

2017-02-13 | たまおの星便り

 低気圧が大雪とともに北国を過ぎるといつもの海岸は北西風が吹き荒れる。未明には少しは風がやわらぐだろうと踏んで海岸に機材を設置したこの判断が甘かった。例年の冬なみに透明度はいい一方、星は休むことなくしきりに瞬く。防寒具で着膨れた体を盾にして望遠鏡をかばうが風を除けきれない。おまけに細かい砂粒が足元を地吹雪のように滑り飛んでいく。大気がかく乱されているために2℃から下がらないが体感温度はもっと低く感じる。あとで画像をみると人工衛星の光跡が微妙に風に揺らいでいた。シンチレーションと鏡筒自体の微細な揺れがミックスされているようだ。

 
海岸砂丘の吹きさらしにあえて陣取ったのは、薄明開始時でほぼ真東の高度わずか8度という45Pホンダ・ムルコス・バデュサコバ彗星を洋上ぎりぎりに見たいためだった。11日に地球に約1300万キロまで近づき、明け方の空で6等級になると予想されている。薄明までの間、風の息継ぎを計りながら高度の高い順にC/2015V2ジョンソン彗星(上中)、C/2015ER61パンスターズ彗星(上右)、73Pシュワスマン・ワハマン3彗星を狙う。
 午前5時20分、東天低空はすでに白み始めて遥か沖合いの雲が黒く浮かび上がる。 さらに風が強まる中、高度11度になった45Pに筒先を向ける。双眼鏡では確認できなかったがデジカメの液晶画面には青く大きく広がった光芒が映し出されていた(上左)。釣り人たちの車が到着し、朝焼け色があたりを染める頃になってまもなく、冷たい風に震えながら撤収を始めた。

コメント