時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

女房たちの笑える自慢話

2022年06月07日 | 時のつれづれ・水無月

多摩爺の「時のつれづれ(水無月の24)」
女房たちの笑える自慢話

山あいの農村に生まれ育った女房たち三姉弟は、1学年で1クラスしかなかったので、
幼稚園から始まり、中学校を卒業するまでの約10年程度の歳月を、
毎日、毎日同じ顔の人々と過ごしていた。

高校生になると、なん人かのクラスメイトは別の学校に通うことになるが、
決まった時刻になると、同じバス停に集まって、高校がある町中まで向かうので、
上下2学年ぐらいの幼なじみが、後方の席に陣取って・・・ ワイワイガヤガヤだったらしい。

そんな幼なじみの多くは、高校を卒業すると・・・ 故郷を離れて進学や就職をするものの、
なかには実家の田畑を守り継承するために、なん年か経つと故郷に戻り、
親や祖父母を思いやって、故郷に家庭を持った幼なじみもいるようだ。

そんなもんだから・・・ 都会に出て行った幼なじみが帰郷すると、
故郷に残った数名が訪ねてきたり、訪ねたりして、2~3時間をかけてお茶するのは、
情報や変化の少ない静かな集落では、年に数回のお楽しみタイムとなっている。

野山を走り、川で遊んでいた時代から、もう半世紀以上も経っているのに、
お互いを姓じゃなく・・・ ちゃんづけの名前で、未だに呼び合ってるんだから、
それほどに濃い付き合いをしていたのだろう。

そんな女房の故郷・長門市の山中に「里山ローズ」というバラ園があるらしい。
県道を挟んで歩いて10分ぐらいのお隣は、女房と同い年の長女が、養子をとって家を継ぎ、
次女と三女が市内に住んでる三姉妹がいて、久しぶりに会って話し込んでいるものと思ってたら、
30分ぐらいで帰ってきて、バラ園があるので・・・ いまから行くというではないか。

急いで出かける準備をして、三姉妹が乗る車と県道沿いのバス停で待ち合わせして、
それはそれは・・・ 腰を抜かすような、狭い狭い山道に分け入った。

テレビ朝日の人気番組「ポツンと一軒家」を見ている人なら分ると思うが、
途中で車と出会ったら、すれ違うのにかなり難儀な山道である。
ところが、先導する三姉妹の車は軽じゃないのに、スイスイと進むんだから、
土地勘がある地元の方々は・・・ 恐るべしで、メチャメチャ逞しい。

恐怖の山道を10分程度行くと、少し開けた場所に出てきた。
開けたと言っても道路が広くなったわけじゃなく、水田と里山と空が広がっているだけで、
少し先に2軒ばかりの民家と、ちょっとした空き地があり、車が数台止まっていた。
その駐車場の右手が、里山一面にバラが咲き誇る・・・ ローズガーデン「里山ローズ」である。

入園料は無料だから、とってもありがたいが、これだけのバラを手入れするのは大変だろう。
私が感心している間に「里山ローズ」の管理人と話していた義妹が、
管理人さんの弟さんは、義弟と同級生らしいと言いだすと、
時は突然、約半世紀も遡り・・・ ここでしばらく昔話に花が咲くんだから、
故郷に戻った姉弟の時間は、いくらあっても足りない。

4~5分ぐらい経ったころだった。
女房が三姉妹の長女に「ここは、すごい田舎やね。」話したことから、
話が面白い方向に進むんだから・・・ もう、なにが起こるかわからない。

女房の問いかけに、三姉妹の長女は、
「うちらのとこも田舎やけど、県道はあるし、バス停もあるから都会かもしれんよ。」と返してきた。
すると・・・ その返答に、今度は義妹が口を挟んでくる。
「そりゃそうやろ、うちらのとこの方が断然都会じゃん。」と言うと・・・ もう大笑いになった。

「おいおい、ちょっと待ってくれ。」
あなた方の心の叫び(強すぎる思い込み)を、頭ごなしに否定するつもりはないが、
あなた方は・・・ 都会とは、いったいなんなのか?
その定義を、ご存じないのではなかろうか?

辞書で、都会の定義を正確に調べたわけじゃないが、
きっと「多くの人々が住み、交通が発達した商業、工業、文化の中心地」と記してあるはずで、
「田畑と青空が広がる穏やかな農地」とは記されてないと思うが・・・ 如何なものだろうか?

確かに、双方の実家から県道方向に向かって歩くと、5~6分のところには、
アスファルトで舗装された二車線の県道があり、バス停もあるが、
止まるバスは、朝夕は1時間に1本あるものの、
8時過ぎから17時ごろまでは・・・ 2時間に1本ぐらいしか走っていない。

さらに・・・ コンビニのように、なんでも売ってるような店舗は、
3~4キロぐらい先に、日中だけ開いてる農協の直営店が・・・ 辛うじて1軒あるが、
スーパーにいたっては、山を下って町まで出なきゃ、影も形も見当たらない。

「里山ローズ」がある場所は、確かに山の中で不便であり、
一番近くのバス停からでも2キロぐらいはある。
だからといって、自分たちの実家と比べて・・・ 「うちの方が都会だ。」と自慢するのは、
さすがに言い過ぎじゃなかろうか?

とはいえ・・・ 田舎暮らしを苦にすることなく、楽しく過ごすには、
こういった楽観主義の発想は必須であって、屈託のない笑顔での会話を傍らで見ていると、
彼女たちの逞しさと、切り替えの巧みさに感服するとともに・・・ 思わず笑ってしまった。

いまどきの生活といった視点で捉えたら、実家での生活は・・・ きっと、不自由なんだろうが、
木漏れ日のスポットライトを浴びながら、野山を駆け巡ったころ、
小川のせせらぎをBGMにしていたころに育まれた・・・ 楽観主義という名の魔法で、
彼女たちは、大きな口を開けながら笑い転げている。

日が暮れて庭に出てみると、驚くほどに満天の星が輝き、小川には蛍が飛んでいた。
女房の実家に来て・・・ ふと気がついたことは、
自然の流れに身を任せ、背伸びせず生活していると、ストレスをあまり感じないことだった。

この集落の人々が、ことのほか長生きなのは、
そこんところに・・・ ヒントがあるのかもしれない。
たぶん、そうなんだと思った。


入園料は無料だから、相当お金がかかっていると思うが、
もの凄く不便なところだけど、こういった憩いの場所があるのは嬉しい。

パラソルやベンチもあって、ドリンクは持ち込みできるので、そういった利用の仕方もあるだろう。

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2 コメント

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Unknown (kuu06172020)
2022-07-03 07:33:02
おはようございます♪

アッハハ🤣
笑いましたー🤣
うちんとこは最寄駅(柳井)まで4キロやから、県道すぐやしうちのとこのほうが都会やで!小学校も4クラスあったし🤭
どこで競うねん💦
奥様の実家は長門なんですね!(◎_◎;)💦
私の実家は瀬戸内海の方で、道上洋三の熊毛郡で高校も同じとこです。本屋で道上洋三の本買おうかと昨日迷ってたとこです💦
あっ、話逸れましたが、ごめんなさい🙇‍♀️
あります、あります、うちの方が都会だと競い合うの!ほとんど変わらないど田舎なのに!
楽しく読ませていただきました😘
免疫力アップしました⤴️⤴️⤴️

※中高校、軟式テニスしてたんですが、県大会で長門高校はあの当時ダントツに強くていつも優勝🏆してました😘
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Unknown (多摩爺)
2022-07-03 08:10:37
kuu06172020さん、コメントを頂戴しありがとうございました。

私が育った下関では、小学校6年の二学期に学校が分割され、中学校3年の一学期にもまた分割されましたから、
女房たちのように、10年近くも1クラスというのは信じられないことでした。
同一県内でも、さまざまな環境があったようです。
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