時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

自衛官の採用試験に物申す。

2023年06月16日 | 時のつれづれ・水無月

多摩爺の「時のつれづれ(水無月の33)」
自衛官の採用試験に物申す。

岐阜県にある陸上自衛隊の射撃訓練場で・・・ あってはならない事件が起こった。
この春(4月)に入隊して、3ヶ月の研修期間中だった自衛官候補生が、
あろうことか、上司に叱られたことに逆恨みして、
射撃訓練中の銃口を上司と先輩に向け、3名の死傷者を出したしまったのだ。

当該省庁でトップを務めたことがある元大臣は、メディアからコメントを求められると、
(国防に奉職する)自衛官の採用に当たっては、(それなりの)質が求められると、
なにやら奥歯にものが挟まったような、遠回しな言い方で、
今回の事件を起こした自衛官候補生について・・・ 苛立ちを口にした。

私などが社会人となった昭和50年代前後と比べて、いまの社会は怖ろしく様変わりしている。
私の時代は、上司や先輩からの注意や叱責は日常茶飯事だったが、
いまは、上司や先輩からの注意や叱責が、ちょっとでも厳しい口調になると、
パワハラにされてしまうから・・・ 迂闊にものが言えないらしい。

私の時代に拘って申し訳ないが、上司や先輩の注意や叱責によって鍛えられ、
対処策を身につけ、いつしかそれを信頼に変えていったものだが、
叱るより褒めて育てられてきた、いまを生きる若者たちは、
皆が皆そうではないものの・・・ 思考回路が少し違うようである。

本来なら、自らが犯したミスにフォーカスして、原因究明と対処策を練らねばならないところ、
いまどきの若者は、叱責された言葉にフォーカスして、パワハラを受けたと思い込み、
社内や公的な相談窓口に、上司や先輩をチクったり、SNSに投稿したりして、
バランス感覚としては難しいのだが、それが社会一般的に正しいことだと思い込んでるようである。

自衛隊の日常は・・・ 命令と号令で動かねばならない組織である。
起床から消灯まで、自らの意識があるうちは、組織の管理下に置かれており、
徹して規律と団体行動をたたき込まれるわけだから、
口調が厳しくなることは・・・ ある意味で仕方のないことだろう。

それでも、その職に憧れ、志を持って、望んで入隊してきた者たちである。
自分は褒められて育ったから、叱られることに慣れてないなんて、
甘いことが通用しないことぐらい、理解して入隊してもらわなきゃ困るんだが、
褒めて育てられた若者は、叱られたことに堪えられなかったのは理解するとしても、
その逃げ道(対処策)に、離職ではなく、銃火器に頼ることは・・・ 人としてあってはならない。

当事者は高校を卒業して2ヶ月半の18歳だが・・・ 立派な成人である。
自衛官に憧れて、自ら望んで試験を受け入隊したと、メディアでは云っていた。

事件を起こした者は、災害復旧に当たる自衛隊員の献身的な姿を見て、
きっと、その姿に憧れたのだと思うが、
彼が憧れた自衛隊員は、彼が挫折した過程を乗り越えたからこそ、輝いていたのではなかろうか?

憧れるのは自由だが・・・ 彼が見て憧れた自衛隊員には、
厳しい訓練に耐え抜いた時間のなかで、流した汗と涙があったことを見落としてはいけない。
一朝一夕に、人と組織は作れるものではないし、
その訓練に堪えられない者が、その職に就くこともないだろう。

自衛官の採用試験は、国語、数学、社会、作文の筆記試験と口述試験(面接)、身体検査である。
ネットで調べてみたら、昨今の採用面接にあたっては、平等性を保つ観点から、
次の11項目は、採用面接で聞いてはならないことになっているらしい。

 1.本籍・出生地に関すること(本籍が記載された謄本、抄本、住民票は提出不可)

 2. 家族に関すること(職業、職種、勤務先、家族構成、病歴、学歴、地位、収入、資産など)
 3. 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
 4. 生活環境・家庭環境などに関すること
 5. 宗教に関すること
 6. 支持政党に関すること
 7. 人生観、生活信条に関すること
 8. 尊敬する人物に関すること
 9. 思想に関すること
10. 労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
11.購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

私が就職試験を受けたころ(昭和40年代から50年代)には、
会社から委託された方が、隣近所に露骨な聞き取り(素行調査)をしていたぐらいだから、
世の中は・・・ ずいぶんと良い方向に変わったものだと思う。

自由と多様性が求められる社会が、いまは一般的になっていて、
そのことについて、異論があるわけではないものの、
自己犠牲と、規律のなかで、命令と号令で動くことが義務づけられてる、特殊な組織があり、
国防を担うという・・・ 極めて崇高な仕事があることも忘れてはならない。

また、この国では・・・ こういった事件が起こると、事後に必ず精神鑑定が行われ、
起訴することが出来るか否かを、慎重に見極めるものの、
異状ありとなったら・・・ 不起訴(民事はべつにして、刑事ではお咎めなし)となり、
殺人事件という事実がありながら、法によって裁かれることも忘れてはならない。

人権面を考慮すれば・・・ 精神鑑定を行うことは、尤もなことだと思いもするが、
だったら、そのような特殊な仕事に就く者を、採用するにあたっては、
従来からある筆記試験、口述試験(面接)、身体検査に加えて、
アンガーマネジメント(怒りや感情をコントロール出来るか否か)に関する検査を追加し、
その結果を、合否判定の最終関門にしていたら・・・ 如何なものだろうか?。

現代の口述試験(面接)には、様々な制約があって、
聞くことが適わないことがあることに、イチャモンつけてるわけではないが、
肉体面で堪えられるか否かをチェックするのが、身体検査なら、
精神面で堪えられるか否かをチェックするのが・・・ アンガーマネジメント検査である。

いまの社会の入り口には、頭(筆記・口述試験)と、体(身体検査)の試験はあるが、
心(アンガーマネジメント)の検査は・・・ 入社後、必要に応じて行うことになっている。

元大臣は、採用に当たって質(たぶん資質)を求めたが、
私はそれよりも先に、
怒りと感情をコントロールすることが出来るか否か、
まずその適性や、適応力のチェックをすべきだと思っている。

アンガーマネジメント検査の結果を見て、ネガティブに採用を見送れと言ってるわけではない。
受験者の心の状態を、早めに把握することができれば、採用後の育成にも役立つだろうし、
資質は後からでも育てることができると思うが・・・ 如何なものだろうか?

一般の会社の採用試験においては、現状はそれで良いんだと思いもするが、
武器を携帯し、必要に応じて使うような任務に当たる、自衛隊と警察官の採用試験には、
アンガーマネジメント検査の実施については、
一考の余地があると思うが・・・ 如何なものだろうか?

いまある防衛予算のなかで、追加試験の費用をやりくりするのは厳しいかもしれないが、
是非とも、アンガーマネジメント検査の実施を、検討していただきたいと思うし、
追加で予算措置ができればと・・・ 願ってやまない。


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