『私のアラビアン・ナイト』 ４．

　「エイッエイッ！　エイッエイッ！」　気がつくと、私は果敢にも天敵ゴキブリを夢中で追いかけ、必死に新聞紙で畳を叩いていた。多分この宿の主なのであろう、鬼怒川のゴキブリはものすごい逃げ足なのだ。
　障子を器用に渡り歩き、天井を逆さリニアモーターカーのごとく一直線に移動し、住処であると思われる例の押入れと壁の隙間に、プリンセス天功も真似のできないイリュージョン技で身を隠した。

　隙間に入る前のほんの刹那、私達を嘲笑うかのようにもう一度振り向いたのは、気のせいだったろうか...。


　ワナワナワナワナ...気がつくと、私は布団の上で手足を硬直させ、歯を食いしばっていたのでした......。

　もうおわかりですね！　これは、私のある寝苦しーい真夏の夜の悪夢だったので～す。お・し・ま・い！　(Aug. 2001 作)


　ちょっとした蛇足：　目が覚めて、この悪夢をすぐに夫に伝えたら、彼曰く「僕も夢見てた。誰かと結婚しに行くんで、新幹線に乗ってる夢...。誰とだったんだろう？？？」