えつこのマンマダイアリー

♪東京の田舎でのスローライフ...病気とも仲良く...ありのままに、ユーモラスに......♪

奇跡のピアニスト ~イ・ヒア ピアノコンサート~

2009年05月21日 | 音楽
 昨日、韓国人ピアニスト、イ・ヒアさんのピアノコンサートを聴いてきました。彼女は、「奇跡のピアニスト」「二本指のピアニスト」として話題を集めている、弱冠22歳の若き女性ピアニストです。

 パンフレットのプロフィールから引用します:
 「1985年7月、ソウル生まれ。彼女は先天性の障がいにより、両腕の指が2本ずつしかなく、膝下の足がない。指の力を鍛えるため、5歳よりピアノを始める。
 7歳で学生音楽コンクールにおいて最優秀賞を受賞。一日10時間に及ぶ練習は、彼女には過酷な戦いであった」

 その後も彼女は国の内外で数々の賞を受賞、アメリカ・カナダでのツアーを始め多くのコンサートに出演、また各国のマスコミに取り上げられています。

 私は今回初めて彼女を見たのですが、彼女がステージに出てきたときにはびっくりしました。小さい体を揺らしながら歩む姿が、実に明るく可愛らしく、暗さや悲劇的な風情を微塵もまとっていなかったからです。
 愛嬌あるお辞儀をしてから、彼女はよじ登るようにして椅子に上がり、靴を脱ぎ、それを椅子の下に揃え直しました。
 演奏前に椅子の上で挨拶...少し舌足らずな話し方ですが、よどみなく明朗に聴衆に話しかけました。神への感謝、関係者への感謝、そして聴衆への感謝...演奏会は感謝の言葉で始まったのです。

 そして演奏が始まりました。ペダルに足が届かないので、彼女用の特殊なペダル補助装置をとりつけて演奏します。最初はベートーベンの交響曲第9番より「歓喜の歌」。
 指が4本しかないのがわかっていて、目を凝らして見ているのに、「本当に4本しかないのだろうか?」と思うような鮮やかな動きで鍵盤を叩いていきます。音はミスタッチしたり、飛んだり、つぶれたり、強弱のメリハリが強すぎたり...と、確かに健常者の演奏とは違います。譜面も彼女用にアレンジされているようです。でも、全身を使っての彼女の演奏にはパワーがみなぎり、魂と祈りがこもっているかのようです。  
 足で踏ん張ることができないのですから、バランスを取るのもむずかしいことでしょう。体力も相当使うと思います。それでも、彼女の演奏は、クラシック・韓国民謡・日本の童謡・映画やドラマ音楽と、ジャンルも曲調も多岐に渡り、また連弾もあり......聴衆を飽きさせることはありません。
 曲ごとに韓国語で解説をつけるのですが、必ず最後に日本語で「どうもありがとうございま~す」「よろしくお願いしま~す」と愛嬌たっぷりに挨拶します。

 さらに驚いたことに、彼女は自ら歌まで歌うのです。しかも、小さな体なのに声量があり、芯の通ったソプラノです。本当に驚かされどおしの演奏会...。ときには会場を巻き込んで歌い、ステージと客席が一体となったパフォーマンス...。 

 I部とII部の演奏の合間に、お母さんの講演がありました。
          

 ヒアさんが障がいを背負って生まれたときは絶望を感じたと。すがる思いで神に祈ったところ、神がヒアさんを護ってくれていることを感じたとか。すると、ヒアさんの手がチューリップのように、顔が輝く満月のように見えるようになったそうです。そして、障がい者として生きていくために、ピアノを習わせ始めたそうです。
 指が10本揃っていない時点で、「ピアノなんか弾けるはずがない」と思うのが普通の親だと思いますが、お母さんは逆の発想をしたのですね。すごいお母さんです。

 4本しかない指には関節もないので、物をはさむことができません。買い物をしても、お釣りがもらえないのだそうです。それでも彼女は全然平気、「カードがあるじゃない!」と。
 鍵盤を叩くにも、最初は力が入らずに音が出なかったそうです。それを人の何倍もの努力を重ね、今では一部に関節ができつつあるそうで、あのように力強い演奏ができるようになったのですね。すごい娘さんです。

 ヒアさんは知能にも問題があり、数字に弱いのだとか。そのため楽譜を読むのが大変で、それにも人一倍の努力が要るようです。歌うときに多少テンポやリズムに乱れが出るのは、そのためなのかもしれません。

 2時間にわたる演奏会は「冬のソナタ」で終わりました。とにかくとても愛嬌があり、終始力強く明るい演奏で、暗く重々しい余韻を全く残さない、実に爽やかな演奏会でした。


 ヒアさん、すばらしい演奏をありがとうございました! 勇気をいただきました。これからも体を大事にしつつ、素敵で感動的な演奏を続けてくださいね......。
 それから...機会をくださった友人のTさん、ほんとにありがとう! ご一緒してくれたHさんもありがとう!




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4 コメント

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すばらしい (だちょう)
2009-05-22 00:50:04
このピアニストのことは初耳でしたが、takuetsuさんの紹介記事を読んだだけでも感銘を受けました。

できないのは意識の壁の成せる業だと日頃思いつつも、意外と自分自身がその呪縛に囚われているのだと思います。

「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
江戸時代の米沢藩藩主上杉鷹山の言葉です。
だちょうさんへ:読んでくださってありがとう! (takuetsu@管理人)
2009-05-22 12:59:00
だちょうさん、お久しぶりです。
こんな冗長な記事を読んでくださり、さらにコメントを寄せてくださり、ありがとうございます! 若干記事を直しました。彼女の年齢を入れるのを忘れていまして。

「意識の壁」...おっしゃるとおりですね。私なんぞすごくそれに囚われているような気がします。

引用の言葉、よく母から聞かされましたが、上杉鷹山の言葉だったのですね。私のぽよよんとした頭には響いていなかったようです
Unknown (にりんそう)
2009-05-24 22:34:06
こんばんわtakuetuさま。
韓国のピアニスト、イ・ヒアさん、しっていました。
以前テレビで拝見したのです。
足も不自由とは知りませんでした。
手の障害だけと思っていましたので、taku様のブログを見て、又びっくりです。
二本指だけでかなでるピアノ演奏、それだけでも大変なことなのに・・・そうでしたか。
にりんそうさんへ:やはりご存知でしたね (takuetsu@管理人)
2009-05-25 07:10:34
にりんそうさん、おはようございます。コメントありがとうございます!

音楽に(も)お詳しいにりんそうさんのこと、きっとご存知に違いないと思っておりましたが、やはりね。
そう、足にも障がいがあるのですね。でも、本当に天然の明るさが彼女には備わっているようですよ。ご本人はもちろんですが、やはりお母さんがグレイトなんでしょうね。

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