山の雑記帳

山歩きで感じたこと、考えたことを徒然に

事始めとなった八ヶ岳

2024-10-03 11:47:55 | 山行

西天狗岳より東天狗岳を望む

2024年9月28日/唐沢鉱泉〜西天狗岳

 9月の会定例山行は、望月少年自然の家に宿泊し初秋の北八ヶ岳を楽しむ。天気は当初の雨天予報が良い方向に転び、曇空ながら一日もちそうな気配、却って陽射しがないのは暑さの点では好都合だった。
 周回のAコースパーティーに続き、予定の8時に唐沢鉱泉を出発。唐沢に架かる橋を渡り天狗岳西尾根に取り付く。シラビソ樹林の下に苔むした石がゴロゴロとした、いかにも北八ツらしい雰囲気の道をゆっくりと登っていくと、1時間程で尾根に出た。ここは枯尾ノ峰との分岐となっているが、訪れる人は少ないのか「荒れている」との注意標識があった。小休止の後、尾根上の道を登っていく。さらに1時間程で2416メートルの第一展望台に出たが、残念ながらガスが掛かり、楽しみにしていた八ヶ岳連峰稜線や南北アルプスの大展望を望むことはできない。ここからは高山らしい雰囲気の道となって、周囲に石楠花の木も目立ちだした。第2展望台でストックをしまい、西天狗山頂への岩の登りに備える。いったん30メートル程下った後、目の前に聳える岩の積み重なる斜面を登り詰めていく。両手も使いながらの登りだが、ガスで上まで見えないこともあって圧迫感も少なく、メンバー皆順調に上がれたようだ。
 11時48分、予定より少々遅れたが、会山行初参加のSさんをはじめ11名のメンバーが、Aコースメンバーの出迎えを受けながら西天狗岳の山頂に立つことができた。ここでも八ヶ岳連峰稜線の全貌を拝むことはできなかったが、時折、ガスがさっと上がり、東天狗から硫黄岳の姿が望めたのは幸いだった。下山は予想以上に時間を要したが、安全第一にゆっくりと下った。目標とした全員の登頂と、期待した大展望は得られなかったが、久しぶりの北八ヶ岳山行は各々の山行に向けた努力と共に、それに見合った充実したものがあったことと思う。

西尾根第二展望台より望む西天狗岳

西天狗岳山頂にてA・B両コース

東天狗より望む西天狗岳

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【2014年5月記】

事始めとなった八ヶ岳

 会の夏合宿をはじめとして幾度となく山行を重ねた八ヶ岳は、山登りの事始めに相応しい山だ。その理由の一つは、南北約30㎞、東西約15㎞という山塊のコンパクトさにある。30㎞といえば安倍東山稜程度の連なりだが、その中に、主峰赤岳を筆頭とした3千m近いアルペン的な容貌の南八ヶ岳と、森と池沼に囲まれた静寂的な北八ヶ岳という異なった様相を見せている。さらに、頂稜を支える広い裾野は大らかに高原台地を形づくり、おおよそ山岳風景パターンのカタログのようでさえある。四方の高原台地からは登山口が開かれ、短時間で稜線に立つことができ、そこには幾つもの小屋が建つ。これはルートや方法の多様性となって、メンバーと季節、目的に応じて選択することができる。山登りの魅力、殊に高山の魅力を垣間見るには、うってつけの山塊と言え、八ヶ岳が始まりとなった者も多くいることだろう。
 SHC結成のきっかけとなった市民登山講座での仕上げ山行は八ヶ岳・天狗岳だったが、所用でこれに参加できなかった私たち(芦田さん、杉浦さん)を、故細田芳郎さんが赤岳~阿弥陀岳へと誘ってくれた。登山講座終了時には、まだ幼かった息子たちとボチボチ山歩きができれば良いなと考えていた私であったが、雲海を見下ろして頂きに立つ十数年ぶりの「登山」はやはり爽快だった。加えて、山行中折々に聞く細田さんの話から、仲間と登る山の愉しさ、「山の会」の魅力というようなことも感じていた。この八ヶ岳がSHCへの関わりに、私の背中を押したことは間違いない。
 初めての冬山も八ヶ岳だった。縞枯山から高見石、高見石から天狗岳と、少しずつ手さぐりで北八ツを繋いでいった。冬の寒さとはどの程度なのか。何を準備し、どのような事に備えなければならないのか。そうした漠然とした不安の一つ一つを、北八ツの森が優しく解いてくれた。これも、アプローチの容易さと山小屋の多さという「安心」を実感できる八ヶ岳ならではのことだろう。同時に、見たことのない景観の只中に自分が居ることで得られる愉しさ、頂きに立たずとも山から得られる充足感も、この冬の北八ツから味わうことができた。私にとって八ヶ岳は、折々の山の学校のような場所だったと思っている。
 今回の合宿は、既に稜線上である麦草峠(2120m)から主稜線を南下する。この容易さもまた八ヶ岳の魅力だ。麦草ヒュッテ裏の花畑からスタートし、高見石からは眼下に白駒池と北八ツの森、中山峠先からは森林限界を越え高山の雰囲気漂う天狗岳を目指す。二日目は夏沢峠から硫黄岳、横岳、赤岳と南八ヶ岳を縦走する。横岳核心部の岩場の通過では、少しスリリングな体験もあるが、三点指示の原則を守りバランス良く歩けば大丈夫。主峰赤岳の頂に立てば、一杯の達成感を得られるだろう。北から南へ変化する八ヶ岳を存分に体感できるハイライトコースを皆で歩こう。

(会報『やまびこ』207号「月々の山」より)

1996年9月、赤岳山頂にて



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