あたいのこばなし。

日々の様々な思いを発散すべく、書きつづり。

日曜日の昼下がり。血の根源。

2006年10月15日 23時55分40秒 | 今日の小話。
まったり昼下がり。
縁側で日向ぼっこしなが「ダヴィンチコード」を読んでいた。
するとばぁちゃんが言う。
「えりこぉ、オレのいとこのじいちゃんが、はぁ、半年くらい入院してんだが、今っからお見舞いに連れてってくれっかい?そのおじちゃんは、はぁ、95歳なんだ。お世話になったじいちゃんで、オレが大好きな人なんだぁ。」

ちょっとめんどくさいと思ったけど。出かけた。
私はおばあちゃんのお母さん(ひぃばぁちゃん)の事とか家族の事は何も知らない。

だから、おばあちゃんのいとこにも今日はじめて会う。

うちのおばぁちゃんは83歳か84歳か85歳。
いとこのみのるさん。95歳。

病院に着くと、3人の患者さんが相部屋していて
二人の患者さんには初老の女性が付き添っていた。
みのるさんは一人で眠っていた。

おばあちゃんはみのるさんの耳元で話はじめた。

(以下、おばあちゃん→バ/いとこのおじいちゃん→ジ)

バ「こんにちは。みさこが来たよぉ~。
おじちゃん、オレの事分かっけ~??みさこが来たよぉ~
元気にゲートボールでもしてんのかと思ったんだっきとなぁ。

ジ「おぉぉ~みさこ~、よく来てくれたなぁ。」

おじいちゃんは置きあがる事ができないくらい衰弱していた。

誰にでも声を掛けてしまううちのおばあちゃんは
他の患者さんの付き添いの女性にいろいろ話始めた。

バ「オレのおっ母さまはオレが赤ん坊の時に死んじまったから
顔も知らねぇんだぁ。だから、このおじちゃんがイトコなんだきっどもが、オレのことかわいがってくれたんだぁ。
入院してるって聞いたもんだから、今日孫に連れて来てもらったんだぁ。はぁ、半年も入院してんだと。このじいちゃんは子供がいねぇんだぁ。お見舞いにリポビタン持ってきたんだがこれじゃとてもじゃないが飲めめ。こりゃ刺激強いかん。」
女性達は親身になって話を聴いてくれた。
私は迷惑だろうなぁと思いながらもおばあちゃんを止めなかった。

病棟内の人を皆巻き込んでひとしきり話をしまっくたおばあちゃんは、またおじいちゃんに声を掛けた。

バ「先生の言う事聞いてればだいじだかんなぁ。
あんまりしゃべっとこわくなっちゃ~から、寝てろ~。
また来っかんなぁ。」(こわい→疲れる)
ジ「みさこ、よくきてくれたなぁ~。ありがとなぁ。」

おじいちゃんはそう何度も言って泣いていた。
おばぁちゃんも泣いてた。

相部屋の人達も「嬉しくおじいちゃん泣いてるよ。良かったね」って言ってくれた。

私は、おばぁちゃんの家族の事は何も知らない。
おばあちゃんのお母さんがなんで若くして死んだのかも知らない。
おばあちゃんのお父さんのことも知らない。
いったい私の血の根源はどこなんだろう。
普通は皆どの辺までご先祖様の事知ってるのかなぁ。

ただ、私はこういう人達のおかげで今を生きていられる。

ばぁちゃんは帰りの車の中でもずっとじいちゃんの事を話していた。
そして
「えりこ、連れてってくれてありがとなぁ。オレの大好きな人なんだぁ。会えていがった~。」って。