これは遡る事20日ほど前,9日(土)の話です。
久方ぶりに、たっぷりと汗を掻き、広々とした湯に浸かりたい・・・と思い、会員となっている近所のスーパー銭湯のタームサービスを狙って、20時に乗込みました。
和風と洋風が一週毎に入れ替わる、この日(週)のお風呂は和風でした。
まず、いの一番に入ったのが備長炭サウナ。
ここでたっぷりと汗を掻き、その汗を洗い流して備長炭風呂,トルマリン風呂,露天の檜風呂と古代檜風呂などを堪能してから一度あがり、火照って水分の不足した体を休ませるべく、空調の効いた静かな休憩室へ移動しました。
ここに30席ほどあるテレビ付リクライニングシートを確保して横になり、朝,朝刊のラテ欄(番組解説有り)を見て目に止まった、21時からの
NHKスペシャルを観ていました。
風呂から上がったのも、これを観る為です。
この日の特集は、“21世紀の潮流”としてアフリカを4回に渡って取り上げた「アフリカ ゼロ年」の1回目「
ジェノサイドを誰が止めるか」
ジェノサイドとは、人種,民族,宗教などの対立から起こる(非戦闘員への)大量虐殺,破壊行為を指し、第二次大戦終結後の秩序構築の過程で国際社会は、これを国際法上の「犯罪」と見なし、国際連合の下、各国間でジェノサイド条約を締結
(締結国;135,日本未締結)して防止することに努めると誓っているが、現状、これに抵触するであろう事案に対し、必ずしも有効的に活用されているとは言い難いようである。
現に、世界各地では条約発効後“ジェノサイド”と認定されるべき事案が発生している。
例えば、
カンボジアでのポル・ポト派の所業,イラクのクルド人虐殺,旧
ユーゴ(
ボスニア)内戦による民族浄化
国際刑事裁判所(ICC)にて、国際法に則って審理,ルワンダ内戦・・・などのほか、中国の
文化大革命なども、これに抵触するとも言われていますが、、、今また、このジェノサイドの嵐が吹き荒れている地があるのです。
それが、この特集の取材対象地でもある、
エジプトの南隣,北東アフリカのスーダン西部に位置する、
ダルフール地方。
そもそも、ダルフールが属する
スーダン共和国は、イスラム原理主義派が翼賛的に統治する国であり、
アメリカは同国を“テロ支援国家”見なしているのですが、1980年代前半から南北に分かれて(イスラム)政府と反政府勢力(SPLM・スーダン人民解放戦線;主としてキリスト教徒)が武力衝突する、事実上の
内戦状態にあったのです。
これまで、欧州諸国が主体となって暫定的,部分的
和平合意が為されていたのですが、今年の1月、テロ支援国家の烙印を押すアメリカが仲介役となって、遂に包括的な和平合意がなされ、表面的な平和は訪れることになっています。しかし、同国西部,ダルフールは違っています。
まるで、この代理闘争のような事件が日々発生しているようなのですが、その主体となっているのが、民兵組織ジャンジャウィード。現地語で「馬に乗った武装した人」という意味のこの集団は、文字通り騎馬軍団となって非アラブ系集落を昼夜問わず襲撃し、男は殺し、女は犯し、家財を奪ってその集落を焼討ちしているのです。しかもこのジャンジャウィードは、スーダン政府との密接な関係があるとされ、陸からはジャンジャウィード,空からは政府軍が、同時に攻め込んでくることがある・・・というのです。ただし、スーダン政府はこれを否定しています。
これによって、既に100万人ほどの
難民が化し、一部は東隣,
チャド共和国へ落ち延びているが、死者もまた数十万単位でいるものと見られるとか。
(UNHCRからの報告はコチラ)
(難民を追って)チャドに侵犯したジャンジャウィードと国軍とが何度か交戦もしている。
これに対して国際社会は、国連は何をしているのか・・・というと、アナン国連事務総長はダルフールでの出来事を「由々しきこと」と見なしているようだが、一方で安保理間これをジェノサイドとは認めず、スーダン政府の主張する「内政問題」を取り上げて有効な処置を講じようとはしていない。それはなぜか・・・スーダンから産出される地下資源に関係していたのです。
その地下資源とは、石油です。
この石油が、スーダン内戦を終結させたと言っても過言でない程、この国に運命を左右する物資であり、これに目を付けたのがアメリカと、現在急成長中の中国なのです。
以前から、産出確認後欧州や東南アジア各国などが顧客として存在していたようですが、やはり最大の顧客は米中両国。この両国が今、この国の命運を左右する鍵を握っており、ジェノサイド否認もこの両国の力が大きく作用しているようなのです。
スーダンには、いわばテロという名の煮え湯を何度と無く飲まされているアメリカは、クリントン政権下では空爆まで行っているが、小ブッシュ政権下ではこれを修正し、スーダン国内の安定へ向けて尽力している・・・のだが、その内実,南部で産出される石油が狙いであり、特にこの地方との結びつきを、南部に多いキリスト教を通じて強くしようとしており、わざわざ遠くアメリカからキリスト系宗教団体の幹部が宣教と説法の為に訪れていました。が!この団体は小ブッシュ政権への支援団体の一つ。。。この辺りに、かなりのきな臭さを感じ、また、悲憤慷慨する思いです。
国際社会から事実上見捨てられたダルフール地方には現在、アフリカ連合(AU)が300人程の平和維持部隊を同地方へ展開させていますが、フランスほどの広大な地に、300人程度の兵士では到底護りきれず、更には目の前に立ちはだかる様々な障害の前に、後手に回っているのが現状のようです。
非アラブ系集落は、反政府組織(SLM)が自警的展開をしているが、装備は貧弱で、政府の後援があるジャンジャウィードには苦戦するばかり。ゆえに、AUの効果的展開が求められているのだが...この日の放送中、次にジャンジャウィードの襲撃と目される集落を護るべく、監視活動に当たっていたAU軍の尽力虚しく、集落は焼討ちされていました。それはもう、凄惨な現場でした。
静かなアクア施設のリラックスルームでこれを見ていましたが、その目を覆いたくなる映像には、目頭を拭いたくなる思いでした。
このAU軍の司令官は、かつて内戦とジェノサイドがあったルワンダ共和国軍の将校。
かつて自国で吹き荒れた凄惨な事件を、なんとしてもここダルフールでは防ぎたい!と熱く語っていた反面、兵力の少なさからの限界を嘆いていたのが、印象的でした。
またもう一つ、この題名としている語。
ルワンダもまた、国際社会の対応は消極的だったのですが、それは先年ソマリア内戦への介入失敗からの苦い経験から出たもの。しかし、現地に小規模ながらPKOが展開しており、その指揮官でもあったカナダ軍将校は、増援を求めた某国閣僚から「黒人の命は、白人の1/85,000の価値」と語ったとか。。。
先にイギリスで開かれたサミットは、低俗で無知愚鈍な、特に民放マスコミの所為で大事件なのは解るが兎角同時テロ事件に目を奪われがちでその内容を論じなかったが、世界的視点からは、アフリカ問題が最重要議題に上がっていたのもまた事実。
これに日本政府も、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との連携,食糧支援,無償資金協力などに取り組んでいる模様です。
いま、国際社会の抱える問題の縮図と化しつつあるアフリカの現状が今後どうなるのか、、、更なる注目が必要!と痛感し、速やかなる政治的,治安の安定が望まれるばかりです。
そして、改めて平和ボケした日本に居られることへの有難味も、痛感しました。